心配性のふたり
隣に立ったモニカがウォルターを慰める。
「ん? アンディを寝させたかったのか、モニカとウォルターは」
机に書類を置いて椅子に座ったカルロが、不思議そうにふたりを見て言う。
モニカがぎこちなく微笑んでうなずく。
「ええ、はい……そうです。疲れてるみたいだったので」
ソファーに膝を抱えて座ったアンディが不満顔でぼそりと『そんなことないよ』と言う。
ふたりが自分のためにと聞いても平然としている。
(おい、俺とモニカの努力はいったい……)
ウォルターは恨めし気にアンディを見やる。
正しくは、ほとんどモニカの努力だが。
「それで、疲れはもう取れたのかい?」
カルロが穏やかな笑顔でアンディに訊ねる。
「疲れてないってば。大丈夫。カルロ、仕事は?」
ムスッとして返すアンディ。
「ああ、アンディはいいよ。待たせておいて悪いが、今回はウォルターに行ってもらうことになったから」
「えっ」
驚いて飛び起きるウォルター。
ニッコリと笑うカルロの顔が目に入り、また『ダリぃ~っ』とソファーに倒れこむ。
(アンディが休み、って……)
じゃああれほど必死になることもなかったのに。
今からゆっくり寝たければ寝られるのだろうし。
何やら不服そうに口をとがらせているアンディをじろりと見る。
そしてウォルターは目をソファーに落とす。小さく笑って。
(……まぁ、いいか)
寝させてやりたかったのは本当だし。少しはそれができたんだし。
モニカの協力あってだが。
カルロが書類をめくりながら、『それにしても……』と言う。
「モニカもウォルターもアンディに甘いな……」
ふたりともビクッとしてその場に固まる。
そして叱られたようにしょんぼりとする。
返す言葉もございません。
「少し過保護すぎやしないか?」
はーい……。
うなだれて沈黙で過ごす。
おっしゃる通りだと自分でも思うのだから。
でもアンディが口を開いてこう言った時には、ウォルターは全力で叫び出したくなった。
「迷惑だよ」
アンディのバカヤローッ!!
(おしまい)