「好き」と「好き」
りんと分かれて自分の屋敷に戻る途中で、殺生丸は前をさえぎる妖怪たちを、かたっぱしから倒していった。毒の爪でひきさき、鞭で遠くへ投げ飛ばし、あげくは爆砕牙で徹底的にやりこめた。ものすごい剣幕であった。
「ふん。今日の私の前にたちはだかるなど、運のない奴らだ。私は今すこぶる機嫌が悪いからな」
殺生丸は不気味な笑みを浮かべて、向かってくる妖怪たちをなぎ倒していった。まさに瞬殺の勢いだ。
(五平だと!?たかが人間の小僧が!りんを嫁にもらおうなど、百年早いわ!!いや、万年早いわ!!りんをお前なぞに渡すはずなかろう!!いや、りんを人間なぞに渡すわけなかろう!!楓め、りんを人間などの嫁にしようとしおって!けしからんっ!!りんもりんだ!!あんな人間の小僧にやさしくするから、つけあがって、嫁にほしいなどといってくる!!それにりんめ、今日は私が止めなければ嫁にいきそうな口ぶりだったではないか!!まったく、私の気も知らんで!!いつもいつも私がどれほど自分を抑えているのか、お前は全然わかってない!!お前はまだ子供だと、私がどれほど我慢しているか、お前はまったくわかっておらん!!お前に無理強いしたくないと、私がどれほど忍耐の日々を送っていることか!!それなのに、嫁入りなど!!第一、嫁にいきたいなら、私のところでいいではないか!?私と一緒にいたいというのなら、なぜ、私のところへ嫁入りしようと考えないのか!?お前は私を選ばないのか!?お前は私以外の男のもとへと嫁ぐつもりなのか!?私以外の男に心を許すというのか!?私以外の男にその肌を許すというのか!?許さん!!許さん!!そのようなこと、絶対に許さんぞっ!!)
殺生丸の心の中は暴風雨であった。行き場のない怒りを、妖怪成敗にすべてぶつけていた。