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【忍FESサンプル】万年桜の木の下で【くく勘】

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 それから、一年と少し。勘右衛門たちは二年生になった。
 真面目ない組の仲間たちは、進級したばかりだというのにさっそく勉強に明け暮れている。勘右衛門も一年生の頃より授業が難しくなるのが不安ではあったが、それよりもずっと気にかかっていることがあった。
 もう随分経つというのに、あれ以来――入学式の日以来、兵助とまともに口を利いていないのだ。とっくに友達になった気でいた勘右衛門が話しかけても、兵助は出会った時と変わらず無口で、ほとんど会話が成り立たない。それどころか、い組の誰とも打ち解けている様子がないのだ。同室の奴に訊ねても「ほとんど長屋にいないし、喋らないからよく分からない」としか言わないし、勘右衛門が組の皆と食堂へ行くのに誘っても、兵助はいつも黙って首を振る。
(仲良くなれると思ってたんだけどなあ……)
 同じ夢を追う仲間を期待して、学園の門をくぐったあの日を思い出す。兵助はそのたくさんの仲間たちの、最初の一人になってくれたと思ったのに。
 そんなことを考え始めたところで、お昼の鐘が鳴った。隣の席で教科の授業を受けていた同級生が、勘右衛門の肩をたたく。
「勘ちゃん、早く食堂行こう! またろ組とは組に先越されちゃうぜ、A定食はハンバーグだし」
 それを聞いて、勘右衛門の目の色が変わった。
「本当!? おれ、ハンバーグが一番好きなんだよなー!」
「えー、勘ちゃん、この間はカレーが一番って言ってたじゃん」
 別の同級生も会話に混ざってきた。勘右衛門の周りに皆が集まり、食堂へ急ごうということになって教室を出る時、視界の端にちらりと兵助が映った。
「あっ」
 彼は筆箱や忍たまの友を丁寧に片付けて立ち上がったところだった。その大きな目がこちらをじっと見ている気がして、勘右衛門は思わず足を止めた。
「勘ちゃん? どうしたのさ」
「あー、ごめん皆、先に行ってて。おれ、食券忘れてきちゃった」
 頭を掻きながらそう言うと、彼らは「ハンバーグ売り切れても知らないぞー」などと茶化しながら、食堂のほうへ行ってしまった。
 残された勘右衛門は、ちょうど教室から出てきた兵助が食堂とは逆のほうに足を向けたのを見て、慌てて引き止めた。
「待って、へーすけ! お昼食べるだろ?」
 兵助が黙って頷いた。その口は出会った時と同じ、真一文字にきゅっと結ばれている。
 勘右衛門は兵助に笑いかけた。彼が笑ってくれるよう、目一杯楽しそうに。
「じゃあ、皆と一緒に食堂行こうよ!」
 けれど兵助は、それに頷きはしなかった。ただ声をほんの少し震わせて、行かない、と一言答えた。