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【忍FESサンプル】万年桜の木の下で【くく勘】

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 ふたりが出会ったのは、立派な桜の木の下だった。

 忍術学園に入学したら、忍者になるという夢を一緒に追いかける仲間がたくさんできる。そう聞いていた勘右衛門は、組の皆と早く仲良くなりたくて、勢い込んで学園の門をくぐった。が、辺りを見回しても誰一人いない。
「あれー、早く来すぎちゃった?」
 忍者だから新入生以外は身を潜めているのだろうか。事務員が案内をしてくれるという話だったが、どうやって呼べばいいのかも分からない。仕方なくその辺りを見回していた勘右衛門は、あるものを見つけて声をあげた。
「うわー、きれいだなあ!」
 勘右衛門の目に映ったのは、新入生を出迎えるように咲き誇る美しい桜だった。何本も並ぶ木々の中でも、一際立派な一本に目を引かれる。年季を感じさせる太い幹、絶え間なく舞い散っても尽きることのない花びら。その一枚一枚を追って、勘右衛門はゆっくりと視線を落とした。
「あれ? あの子……」
 大きな桜の木の下に、男の子が立っているのに気が付いた。桜吹雪の中、口を真一文字に結び背筋をぴんと伸ばして木を見上げるその姿は、まるでこの立派な桜の木から呼び出された式神のようだ、と勘右衛門はぼんやり思う。
 背丈は自分とそれほど変わらないらしい。それに制服を着ていないということは、きっと勘右衛門と同じ新入生だろう。
 勘右衛門が近付いても、男の子は微動だにしない。好奇心に任せて二、三尺ほどまで近付くとようやく、くるり、と男の子の顔がこちらを向いた。
「あっ」
 はっとして勘右衛門は足を止めた。同時に勘右衛門の心臓がどきりと打つ。
 何しろ真正面から見ると、その子は本当に桜から生まれたんじゃないかと疑うほど整った顔立ちをしているのだ。長い睫毛に大きな目、それでいて姿勢と表情は凛々しく口は真一文字に結ばれたたまま、一言も発する様子がない。
「――あのさ、」
 黙ったままでは落ち着かないので、思い切って声をかける。
「君も忍術学園の新入生?」
 男の子がこくりと頷いた。反応があった。それだけでなぜかとても嬉しくて、勘右衛門はへらりと笑った。
「やっぱり! おれも新入生、尾浜勘右衛門っていうんだ。君の名前は?」
 その子はぱちぱちと瞬きをしたあと、初めて口を開いた。
「久々知、兵助」
「へーすけ、かあ」
 立派な桜の木の下で出会った仲間の名前。勘右衛門は噛み締めるように繰り返した。
「へーすけ、これから仲良くしようね」
 手を差し出すと、兵助は頬を仄かに桜色に染めてそろりと手を出した。
 小さな手と手で、ふたりはぎゅっと握手を交わした。