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『仮面ライダーW』-Another Memory-

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Episode:1『プロローグ』







「いらっしゃいませ~」

ある街の、何処にでも有りそうな定食屋の自動ドアがウィーンと言う音を立てて開くと、中からバイトの女の子であろう娘の元気な声が聞こえてきた。
バイト、と考えるならば、元気な声と弾ける笑顔を見せる娘が居るこの食堂は、中々に従業員教育が行き届いているようだ。

店の中に入った青年がそんな好印象を抱きながら、一人掛けのカウンター席に付くと、

「牛丼並一つ」

と、注文を聞かれる前に、女の子に聞こえる様に多少声を張って注文する。

かしこまりましたぁ~。牛丼一丁並で!と言う女の子の更に元気な声を聞いて、頑張てるな~、俺も頑張んなきゃな~と、青年は心の内で思う。

青年の名前は『瀬名(せな)速人(はやと)』。
近くの大学に通う何処にでも居る様な普通の青年だ。

少し違う所があるとすれば、指ぬきグローブを手に嵌め、ジーパンの脹脛を覆う程の黒いブーツを履き、白いカッターシャツに黒い細ネクタイ、その上には薄い黒革ベストを着ている位だ。
バイトの娘の笑顔が崩れなかった事に賞賛を送りたい。

彼は小学生の頃から、ある者に一途に憧れを抱いていた。

『ヒーロー』

その為、今では大学で『ヒーロー研究会』なるサークルを開き、集まるオタク達との至福の時間を堪能している。

ヒーロー物は、映像や書物、コスプレやフィギア、音楽と言った多岐に渡る楽しみ方があるが、彼、速人の楽しみ方はまた一風変わった物であった。

速人のヒーロー物の楽しみ方は、ズバリ『アクション』。

勿論上記に上げた物全てが速人のお気に入りだが、特にアクションには常人では計り知れない程の熱を上げている。





小学生の頃の夢は『仮面ライダーに、俺はなる!』等と何処かの麦わら大好き少年の様な台詞を吐き。

中学生になると、『将来絶対にベルトを開発してみせる』と言う途方も無い夢を描いて、教科書にオリジナルベルトの落書きを描きまくった。

高校生になると、流石に少し落ち着き、『ベルトは無理そうだから、生身で怪人を倒せる様に身体を鍛えなくては』と言う現実的かつ危ない方向へと進路を変えた。

その頃から、速人の趣味の一つに格闘技が追加される事になる。
片っ端から格闘技の本やらを集めだし、それを読んでは日々技の鍛錬をする様になる。
勿論最初に習得しようとしたのはライダーキックであった。
だが物理的に無理だと悟ると、今度はライダーパンチを習得しようとした速人は、中々に夢見る現実主義者だろう。

だが速人の凄い所はこれだけでは無い。
普通はチャンバラごっこ、ヒーローごっこの域を早々出るものでは無いものだ。
だが速人は、恐らく映像を受信する為の箱の中にしか存在しないであろう『悪の結社』との戦いを想定して、恐ろしくハードな肉体改造に着手し始めたのだ。

彼曰く『誰も改造してくれないだろうから、自分で改造するしか無い』なのだそうだが、周りの目は生暖かかったであろう事は彼には言ってはいけない。
速人は真剣なのだから。

大学に入った速人は、それでも現実を直視する様になる。
いつまでもヒーローごっごをしている訳にもいかない。
何時かは妻を娶り、子を育てなくてはならない時に備え、社会に出ていく準備をしなくてはならないと思い始めたのだ。

架空の物は架空の物。
楽しみ方には限度があるし、何時までも夢見る子供では居られないと、機械工学系の授業を取る日が多くなる。
機械工学系の技術と知識を身に付け、尚且つ何かしらかの資格を取れば、職に困る事は無いだろう。
しかも科学、機械工学の分野は日進月歩だ。
もしかしたら何時か『ライダーベルト』の"様な物"が出来る日が来るかもしれない。
と、"本気"で思って猛勉強をして早3年。
今では大学四回生にして、その分野で博士号まで取ったのである。
流石は夢見る現実主義者だ。その思い込みによる天才っぷりは半端じゃ無い。



「お待たせしました。牛丼並盛です」

「ありがとう」

バイト娘が速人が注文した物を運んできてくれた。
速人は最近少し茶に染めた今時の髪にセットした髪裾を触り、輝く笑顔のバイト娘に礼を言う。
彼が少し照れた時にする仕草だ。

何せ彼は彼女いない歴=年齢だ。
ヒーロー命だったのだから仕方ないだろう。
営業スマイルとは言え、中々に可愛らしい娘から笑顔を向けられたら、つい照れてしまうのは仕方のない事だった。

そんな彼にクスリと笑いを向けたバイト娘から目を離し、目の前の牛丼並盛に箸を漬けようとしたその瞬間、

「キャアァァァァァ!!」

表から女性の絹を裂く様な悲鳴が上がった。

昼をかなり過ぎていた為、店内に数人しか居ない客も、速人で最後の注文だった為に手の空いた従業員も、一斉に悲鳴のあった方へと視線を向ける。

見ると表の歩道に、悲鳴を上げながら座り込むリクルートスーツを来た女性と、その女性の腕をつかむ真っ黒なスーツ姿に、首元に白いスカーフみたいな物を巻いた、肋骨形状の骨の仮面を付けた男が一人居た。

(何だあれ?マスカレイド・ドーパント?)

何かの撮影か?と、隣に座る現場作業員の様な制服を来たおじさんが呟く。

だが、速人はそんなおじさんのつぶやきを耳に入れながら、それに心の中で反論する。

(ありゃ撮影なんかじゃねぇ!本物だ!)

恐らくそう思ったのは速人一人だろう。
この現実世界であんな格好をする者は、コスプレをこよなく愛する者か、テレビか映画の撮影の為に着込んだスタントマンしかありえない。
だが速人は見た。

マスカレイド・ドーパントと思わしき男が、何も無い空間から滲み出る様に現れるのを。
既にマスカレイド・ドーパントの人数は10人程に増えている。

最初女性の手を掴んだマスカレイド・ドーパントは、女性を気絶されて担ぎ上げ、後から滲み出た同輩を見て立ち止まっている。
次々に『うわ!』とか『いやぁ!』とか『何だコノヤロウ!』だの、『撮影だろ?カメラは何処だ?』とかの声が聞こえてくる。
店内の人も、何だ何だ?と流石に異変に気が付いた様だ。
だがまだ誰も動かない。

速人は手をつけ様としていた牛丼並盛から箸を離し、カウンターにパシッと置くと、牛丼並盛の料金を投げ出して表へかけ出した。
あ!お客さん!と言うバイト娘の声を振り切り、「何だ君達は!一体何処の撮影会社の者だ!」と言う壮年の会社員へ手を伸ばすマスカレイド・ドーパントの一人に飛び蹴りを放つ。

マスカレイド・ドーパントはズササッ!っと後退りはする物の、体制を立て直して今度は速人に襲いかかる。

「冗談だろ!?このっ!」

速人は自己流ではあるが、並の格闘家より身体の鍛錬をしている。
それは大学に入ってから猛勉強に時間を費やしていても、決して欠した事の無い日課になっていた。
その速人の渾身の飛び蹴りを受けて、少し後退りした程度である。それも不意打ちを。

「おっさん逃げろ!こいつら、やっぱ普通じゃねぇ!」

そう言って背後に居る壮年会社員に言うが、

「君はこの者達の関係者かね?ここで撮影をする許可を取っているのか?それに、どうやら素人の人達を巻き込んで居るみたい―」

―ドカ!