『仮面ライダーW』-Another Memory-
Episode:3『必殺技』
「さあ、お前の罪を、数えろ」
不敵に佇む仮面ライダーW。
何処からか吹いた風が、首元のマフラーを靡かせる。
「チッ、何でお前が…おいお前ら!」
何でWがここに居るのか納得出来ないマグマ・ドーパントが、舌打ち一つしてマスカレイド・ドーパント達に手を上げる。
それを見たマスカレイド・ドーパント達が、背負っていた人達を降ろして一斉にWへと飛び掛かってきた。
(こいつら何時も思うが、何で一番攻撃力のあるドーパントが最初に飛びかかって来ないんだろうな)
右側から来るマスカレイド・ドーパントの拳に、左パンチでカウンターを取り、同時に左側から掴み掛かるマスカレイド・ドーパントの腹に蹴りを叩き込む。
(大体今回の行動を見ると、奴等のメインは誘拐だろう?マグマといいマスカレイドといい、本来の目的そっちのけでの行動。ここはマグマが相手をしてる内に、マスカレイドが人さらいを実行するのが正しいと思うが…。いっつも思うぜ、それで良く兵隊が勤まるなって)
「ハッ!」
背後から迫っていたマスカレイド・ドーパントに、豪快にローリングソバットを決める。
【ふむ…、君は面白い事を考えるんだね。確かに奴らは必ずと言って良い程、最初に兵隊をぶつけて来る。兵隊に他の命令があっても、それを上書き命令してまで無駄な戦闘をしてくるね。ふむ、ドーパント…命令…敵…習性…、うん、実に興味深い】
【おいおいフリップ、考えるのも良いけどよ、今はそれ処じゃね−つの。あいつら、倒しても倒してもどんどん湧き出してくるぜ?集中しねぇと】
【翔太郎、君もおかしな事を言うねぇ。今闘いに集中するのは彼で、僕達じゃ無い。僕達は闘って無いのだしね】
【あ?…ああ、そっか。いやつい何時も癖でよぅ】
【フフン…】
【あっ!フリップ、今俺の事バカにしたろ!?】
【僕が翔太郎をバカにするのは何時もの事だろ?】
【ああそっか…ってうをいっ!】
(お楽しみの処悪いんだけど、何か打開案は無いかな?殺られる気はしないが、これじゃきりがない。いつの間にかマグマも居ないし、そっちも気になる)
速人が倒したマスカレイドは、既に十数体。
Wの力を持ってすれば、略一発で倒せるのだが、一体消えては一体増えと、マスカレイド・ドーパントは常に十体キープ状態である。
拐われそうになった人と、多分、殺されたと思える警官と一般人以外は皆避難しているので心配は無いが、せめて倒れている人を誰か助けてくれれば、闘いに置いてかなり精神的に楽になる。
だが、こう次々湧き出る現象を何とかしなくては、結局誰か居たとしても、助けられる状態じゃなかった。
【………】
フリップは何か考えている様だ。
「ハァッ!」
速人が、数体のマスカレイド・ドーパントに対し、身体を横キリモミ状態にして突撃させる。
今のWが纏うはサイクロン。
風がキリモミによって竜巻を起こすと、数体のマスカレイド・ドーパントがその竜巻に巻き込まれて弾き飛ばされ虚空に無惨した。
すると、恐らく最初に出現したであろう空間から、同時に数体のマスカレイド・ドーパントが出現する。
(もしかして…)
闘いの最中だが、速人はその現象に対してある仮説を思い付く。
【君の考えている通りだと、僕も思う】
速人の思考に、フリップが割り込む。
先程からもそうだが、どうやらフリップ達には速人の思考が筒抜けの様だ。
【速人!あそこにマキシマムドライブをぶち込め!】
翔太郎が叫んだ。
「解った!」
何故?とか、根拠は?等は言わない。
それは速人も辿り着いた結論だからだ。
新たに現れたマスカレイド・ドーパント二体に左右のパンチをかますと、素早くジョーカーメモリを取り出し、腰のマキシマムスロットに差し込んだ。
『ジョーカー!マキシマムドライブ!』
効果音と共に、"あの"男の声が響く。
「トウッ!」
速人も声を上げて空中へと飛び上がった。
【行くぞ!】
翔太郎の声。
【決めるよ】
フリップも続く。
【「【ジョーカーエクストリーム】」】
翔太郎、速人、フリップ、三人の掛け声が重なり、マスカレイド・ドーパントが出現する空間へと、Wが真ん中から二つに"割れて"脚から突撃した。
(何だか三人で一人の仮面ライダーみたいだな)
速人が激突の瞬間考えたのは、そんな事だった。
作品名:『仮面ライダーW』-Another Memory- 作家名:赤の他人