『仮面ライダーW』-Another Memory-
【その問題も既に解決しているよ翔太郎。本来は一人に二つのメモリを使うと暴走どころか消滅も免れないが、彼の体には後付では無く、どうやら二つのスロットを"元々"から持っている様だね。今解った事実だけど、興味深いねぇ…ゾクゾクするよ】
フリップが少し興奮しているのが解る。
(成る程、だからさっきのフリップは、使えるのかと言ったら使える。使え無いのかと言ったら使え無い。等と、曖昧な事を言ったんだな。その後か、俺の特性を調べたのは)
【まあ良いじゃねぇかフリップ。それより、そろそろやばそうだぞ?】
フィリップが何やら考察モードに入りかけたのを、翔太郎が押し戻す。
(本当だ。悲鳴の声が聴こえなくなっている。それに、銃声が聴こえてたから少しのんびり構えていたが、それも聴こえなくなった)
【ふ〜ん、まあ翔太郎の言う通り、時間が無いのは確かな様だね。考察は、奴らを排除してからにしよう】
「そうして貰えると、助かる」
速人はそう言うと、表の通りへと飛び出した。
【彼は何だか翔太郎と似ているねぇ】
【まあ、俺が選んだ奴だからな!】
【無闇に飛び出る処がソックリだよ】
駆けながら表通りに出る速人の後ろで、そんなやり取りをする二人。
因みに、"後ろ"と言ったのは只の比喩表現なのであしからず
「お二人さん、漫才はそれくらいにして、ドライバーの使い方を教えてくれなかいか?」
周りを見ると、いつの間にか警官が数人と、一般人が数人倒れていた。
そしてその場には、輪を作る様にマスカレイド・ドーパントが十人の一般男女を担ぎ、更にその中心に、
「あれは、マグマ・ドーパントか?」
【ご名答】
【もうあんなのまで入り込んでやがんのか!】
Wの第一話に登場するマグマの記憶を持つガイアメモリ、マグマ・ドーパントがいた。
その最大の攻撃方法は"炎"。
普通の人間が武器を手にしても、太刀打ちなど出来ないだろう。
マグマ・ドーパントは、どうやら速人が睨んでいるのに気が付いたらしい。
「何だお前は、反抗的な目だな。死にたいのか?」
マグマ・ドーパントが、ゆっくりと速人に近づいていく。
【ドライバーの使い方を教えるよ】
【お前の、思う通りにやれ!】
【翔太郎が解って言ってるのか実に興味深いが、君の知っている方法であっているよ。そして、君は全てのWをも使いこなせる。メモリも念じればその手にあるだろう】
「解った。何故そうなってるのかは、後から考える事にする!」
フリップ、翔太郎、フリップ、速人の順で話が終わると、目と鼻の先にマグマ・ドーパントが迫っていた。
「グルルル、何をするつもりか知らんが、無駄な努力だ!」
マグマ・ドーパントは、鬣の炎をユラユラと揺らすと、速人を殺すべく物凄い早さで躍り掛かった。
速人は、それを落ち着いて前転でかわすと、もう一度前転をして少し距離を取る。
そのまま立ち上がり、腕をクロスに交差し振り上げた。
右手にはJokerメモリ、左手にはCycloneメモリを握っている。
「無駄な努力かどうかは、やってみなきゃ解らないぜ?」
サイクロンメモリのスイッチを押す。
『サイクロン!』
続いてジョーカーメモリスイッチを押す。
『ジョーカー!!』
「何ぃ!?」
マグマ・ドーパントが驚きの声を上げると同時、
「変身!」
と、速人が変身の掛け声と共に、クロスした腕をダブルドライバーに下ろす。
二つのメモリがスロットに差し込まれると、素早くクロスした手を更に押し込みダブルドライバーを展開する。
『サイクロン』『ジョーカー!!』
(効果音…出るんだ…感動…おっと自重自重)
速人は興奮する心を落ち着ける様に、自らを抑える。
「バカな!」
マグマ・ドーパントが驚きの声を上げる中、効果音を鳴らしながら速人は変身を完了した。
セントラルパーテーションを境に、左半身には身体能力・武器を決定するボディサイド、JOKERの黒。
右半身は、属性・特殊能力を決定するソウルサイド、CYCLONEの緑と、見事に身体の中心で別れた人物が立っていた。
丸い真紅の複眼、風になびくマフラー、そして頭部には、Wの象徴であるW型の触覚が光っていた。
【お決まりの台詞を、言ってやんな】
【僕もそれには賛成だね】
(ああ、折角だ。言わせて貰うぜ)
「さあ、お前の罪を、数えろ!」
仮面ライダーW、二人で一人の仮面ライダー。
その仮面ライダーは、もう一つの世界で、『空想と現実』二つの世界を一つとした速人へと宿り、見事にその姿を顕現させたのであった。
作品名:『仮面ライダーW』-Another Memory- 作家名:赤の他人