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東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編

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「痛い痛い。うん痛い。安心しな、お前の攻撃は当たってるよ。」
 また暗闇が晴れる。相手の腹部に一本ナイフが見事に刺さっていた。その周りに血が伝う。
残り二本ははずしたようで見当たらなかった。刺さった割にはだいぶ無力だった。私はこの結果をみてもはや恐怖を感じれなくなってしまっていた。失望、そして諦め。
 すいません、お嬢様。護れそうにないです。
「戦意喪失したのか?」
「…ええ」
「あら、初めてしゃべった。大人っぽい声ね」
「そうですか、ありがとうございます」
「敵にありがとうございますってのも面白い」
「はぁ」
「完全に戦闘不能ね、死にたい?生きたい?」
「生きたいです」
「なら全力で戦ってみなさい。昔ワタシが幻想郷に来てからに唯一怪我を負わせた娘はもっと勇ましかったぞ」
「それはその人が強いからでしょう」
「いや、あの子はそんな強くないはず。まだ子供で、頭に蝙蝠のリボンみたいな飾りつけてたわねぇ。ハロウィンって感じがしたわ」
「そうですか」
「お前はつまらないな」
 ハハハと私を笑う。どうせ死ぬなら今奴が気を抜いているうちに攻撃してダメージを与えてから死のう。できれば死にたくないが。

 私は短剣を両手で支え、笑う上半身露出銀髪死んだ魚目女めがけて飛び込んだ。
当たれ!喰らえ!刺さり切れ!
「致命傷にくらいはなってください!」
「やっと戦う気になったか!そうでなきゃ殺しにくい!」

 暗闇に戻ったばかりの部屋にまたしても閃光が放たれる。今更ながらだけどこの光はどうやって発生してるのか疑問に思う。

剣を片手ではじかれ、そのままもう片方の腕で首をつかまれる。げほっぐるじい。
「最初からその威勢を見せたほうがいい」
 そう言うと上半身露出銀髪(中略)女は私の首をつかんだまま私を振り飛ばした。タンスに頭から突っ込む。痛いなんてものじゃないが痛いと言えない。
タンスに飛ばされた私を追撃するように上半身露出(中略)女は手を突出しながら飛び掛かってきた。腹に思いっきり手を刺された。爪が刺さったのレベルじゃないですよこれ。手首くらいまで突き刺さってr。
腹に突き刺さった手を抜いてまた首を掴まれてしまっt。この上半身(中略)女から笑いがなくなってr、普通に強i。
 先ほど動揺振り飛ばされてしまいました。今度は机にストライク。もう痛みがわからない。痛いですか?自分は。
あれ、追撃して来ない。そうなると痛みが湧き出てくる。でも安心感を得られグギャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ナイフが肩とさっき刺された腹の傷に私がさっき投げたナイフが飛んで刺さってた。しかも何これ…痺れる……。まるで雷を纏っているような…。
「ア"&%#mcm$@ッ!!!!!!」
「あらあら、さすがに動けなさそうね」
「gc間;cv'(0#"Д&!!!」
「何が言いたいかさっぱり。幻想郷の言葉で話しなさい」
 ん背うpんcvぁjvdんklんfんv。あんvjks;v根kfjvjkf7
(訳:上(中略)女は私の足を思いっきり踏みつけて語ってきた。骨折確定だろう。というかもう死亡確定。お嬢様、そして紅魔館のみなさん、私は紅魔館の一因になれて―)

「もう痛がる必要はない、さよならね」
 cんfhwっせヴィをfjw
(訳:― 幸せでした。)



 風香の部屋に血と光が舞った。
  それと同時に紅魔館のどこかで爆発が起きた。

    
   ▼玖(9)へ続く

Touhou Houruisen -玖(9)

ー紅魔館(爆発後)ー
 爆発した紅魔館を一人かけまわっていた。一部が爆発した紅魔館に取り残されたまま身動きの取れない人を探し、彼女は走る。
紅魔館の全員を救いたいのだろう、彼女がいつもは怠け者でめんどくさがりだがこういう時には正義感が強い。
 メイド長として。

「誰かいる!?」
 そう叫びながら彼女は部屋をひとつひとつまわってゆく。
今のところ見た部屋はどこも誰もいないようだ。トイレにエントランスに料理班班長の部屋に副メイド長の部屋に門番の部屋など、ただ誰一人として人影はなかった。
しかしそれではいけないのだ。外に集まっていたメイドは明らかに紅魔館で雇っている人数より少なかった。おそらく爆発の影響のなかった部屋で爆発に気付かずいつも通りに仕事をこなしている者もいるだろう。それでもメイド長はもしかしたらの場合を考えて少しでも逃げ遅れた者を探す。

「さすがにここにはいないよね」
 メイド長は今自分の部屋の前に着いたところだ。自分の部屋には基本的に自分以外の者がいることはない。それにドアの隙間から光が漏れている様子もないから人がいたとも思えない。メイド長はそのまま自分の部屋を通り過ぎ、先を急いだ。
走るメイド長に置き去りにされた部屋のドアの隙間から一瞬白光が漏れたが、背中を向けたメイド長が気付く事はなかった。

「誰かー!もしいたら返事しな!」
 煙の巻き起こるなか、そんなことを気にもとめず、廊下でメイド長は大口を開けて叫び続けた。
「ふ…うか…さん。あ…いえ、メイド……長……」
 メイド長の呼びかけに誰かが応えた。掠れて生まれたばかりの鳥のように弱々しい声だが、メイド長の耳にも届いた。
「だ、誰!?というかどこ!?」
 メイド長は必死で声の主を探し始めた。
「ここです…」
 煙と崩れ落ちた壁や天井で隠れた廊下から声がする。その場所は第二キッチン付近の廊下で、元々狭い廊下だったが崩れ落ちたものによってもはや通れない状態になっていた。
メイド長は瓦礫と化した壁や天井の崩れ落ちたものをどかし、声の発信者を探した。
 瓦礫の下から足が生えていた。
「足…。今引っ張るからもうちょっと生きてて!」
「お…お願い…しま…す」
 全身全霊全ての力を込めて瓦礫から一人の人を引出し救助に成功した。
「やっぱあかりだったのね、声的にそうだと思った」
「うごへっ…ありがとうございます…」
「よかった、一人でも多く助けれた。大丈夫?歩ける?」
「足はなんとか無事なので歩けます。本当にありがとうございます…私…」
「話は後!まだ人命救助続けなきゃだからとりあえずさっさと外に逃げなきゃ!アナタの他に近くにメイドはいた?」
「いえ、第二キッチン付近は私一人でした。でも大キッチンのほうは料理を用意していたのでもしかしたら…」
「いるかもしれないわねぇ。とりあえず全てはアナタを外に送ってから」
「すいません…」
「はぁ、謝らなくてもいいのに」
 メイド長の呆れた顔の裏には安心感の笑顔があった。仲間を一人でも多く助けれたことに満足した笑顔ではなく、仲間が一人でも多く生き残ってくれたというありがたみに笑顔を見せたのだろう。

 二人は走り出した。あかりが負傷しているためあまり早くは走れてはいないが、小走り程度に走っていく。
二人がメイド長の部屋の前を通り過ぎる時、二人の後ろで何かが崩落する音がした。驚いた二人は同時に後ろを振り向く。