より水夏な、DCPS霧羽・香澄ストーリー(ネタバレ注意)
…チリン…
その時、頭の上からかすかな鈴の音が聞こえてきました。
「あたし……そろそろ行かなきゃ…」
「香澄!!」
足を踏み出すお姉ちゃんに、朝倉さんは駆け出して…
でも、抱きしめようと伸ばした腕は、お姉ちゃんの身体を通り抜けてしまいました。
お姉ちゃんは…確かにそこにいるのに…
いくら、その髪に、その頬に触れようとしても…朝倉さんの手は空しく虚空を泳いでしまいます。
もう、見ていられませんでした。
(朝倉さん…ごめんなさい…ごめんなさい…)
私は、その朝倉さんの様子に、心の中で、ただ謝ることしかできませんでした。
「あたしも………朝倉と、ちゃんとキスしたかったよ」
…チリン…
かすかに迷いの表情を見せるお姉ちゃんを促すように、もう一度鈴が鳴りました。
(…………?)
頭上の月輪に、おぼろげな影が浮かんで見えました。
(あ、あれは!?)
間違いありません。そこにいるのは、先ほど桜並木で会った、あの不思議な女の子でした。
そうか…あの子は…そして、おそらく千(チ)夏(ナツ)さんも…
死者の魂を導く者………『死神』だったんだ…
この時になって、ようやく私は、あの子が去り際に見せた、悲しげな笑顔の意味を理解しました。
あの時すでに、あの子には解かっていたのでしょう。事情はどうであれ、自分が、私から、大切な者を…お姉ちゃんを、永遠に奪ってしまうことになると…
ゆるく纏ったマントと、月光を浴びて光る銀色の髪の毛が風に翻ります。
作品名:より水夏な、DCPS霧羽・香澄ストーリー(ネタバレ注意) 作家名:PN悠祐希