より水夏な、DCPS霧羽・香澄ストーリー(ネタバレ注意)
それから、完全に意識を取り戻した萌先輩を家に送り届け、俺と音夢は、水越家の屋敷の門の外に立っていた。
俺は、もはや逃げるのは諦め、ただ音夢の出方を待っていた。
明日美との事だけでもああだったのに、さらに千夏との会話の中にも、それこそ音夢が勘違いしそうなNGワードが、結構あったしな。迂闊といえば迂闊だが、しかし、あの場合は仕方あるまい。
俺は、それ相応の地獄は覚悟していた。
だが、音夢の次の行動は、俺の予想の範疇をはるかに上回るものだった。
「ね、音夢?」
なんと、音夢の奴、自分の腕を俺の腕に絡めてきやがったのだ。
と、音夢も、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
そして…
「聞きたい事は沢山ありますし、さっきの事やその他諸々の事も、ぜんぜん納得したわけじゃないですけど……でも、今はこうして、兄さんと一緒にいられることを大事にしたいなって、ちょっと思ってみたんです!!」
ムキになって本心を語る、そんな音夢の姿が、なんだかやたら微笑ましくて。
「そうか…」
だから俺も、その音夢の気持ちを素直に受け入れようと思った。
「さてと……帰るか」
「はい、兄さん♪」
すでに昇った朝日の光の中、俺達兄妹は、まるでお互いの存在を確認するかのように、肩を並べてゆっくりと歩いていった。
作品名:より水夏な、DCPS霧羽・香澄ストーリー(ネタバレ注意) 作家名:PN悠祐希