こらぼでほすと ニート1
温かい感情というものは、リジェネたちにもあることはある。だが、それが纏わりつく様にある状態というのは、今までなかった。ティエリアとリンクして、それを知ったら少し羨ましくなった。それに触れるには、自分も素体が必要だから、いそいそと準備した。ティエリアが感じているものだから、自分には向けられないかもしれない。だが、目にしてみたいとは思った。データとして知っている事柄は、ただのデータでしかない。なんせ、その相手は、私闘を選んで組織を裏切る形で死んだ人だ。そのデータからは、そんなことはわからない。
フェルトが八月一杯を寺で過ごして、組織へ戻った。そして、『吉祥富貴』も通常モードで動いている。シンとレイは九月からアカデミーへの進学を果し、忙しそうにしているし、キラたちは連邦が創設されていく過程に、いろいろと裏からちょっかいをかけて修正している。
寺のほうは、それらからは除外されているから気楽なものだ。悟空がアカデミーへの進学のために論文を提出することになって、天蓬の助言を受けたりアスランたちに教えてもらったりで、必死に勉強している。
「今まで一番、勉強してる気がする。」
卓袱台の前に座って、ぶへーと伸びている悟空は、軽くオーバーワーク状態だ。
「たまにはいいんじゃないか? 」
「でもさ、ママ。天蓬ったら、あれとこれを読めば、それは解決しますって言うんだぜ? そうじゃなくて答えを教えろって言うーんだよ。」
元保護者な天蓬は甘やかすばかりではない。それなりに知識もつけさせるつもりらしく、答えや結果を言うのではなく、課題を出して悟空自身に理解させようとしているらしい。だから、やたらと本やデータが送られてきて読み物ばかりに圧倒されて悟空でも疲れる。
「でも、それを理解してないとアカデミーに入ってから苦労するんじゃないのか? 」
「そうだけどさ。」
「いいじゃねぇーか、知識は持ってて損はないんだからさ。今のしんどいのが、アカデミーに入って楽になるかもしれないぜ。」
「うーん、そういうもんかなあ。」
せっせと、ニールが台所で立ち働きしつつ、悟空に大声で叫んでいる。明日から留守をするので、二週間分の食料作りの最中だ。定期的に行なわれている漢方薬治療の時期で、本宅へ連行されることになっている。明日から、ママがいない悟空は、目一杯甘えている。
「勉強すると脳にも栄養やらないとな。」
作業の合間に、おやつを運んでくれる。本日は、バウンドケーキだ。ただし、生半可の量では、悟空は満足しないから、丸々一本を運んでくるし、さらに果物なんかも付け足されている。本日は、ウイークデーだから、夜にはバイトがある。ここんところ、夜食というかおやつは店でニールが製作して、年少組やスタッフに食べさせているから、寺では軽いものになっている。
「しばらく、ママのおやつともお別れだ。これ、あと何個残ってるの? 」
がつがつと両手にバウンドケーキを持ちながら、悟空が尋ねる。
「昨日、焼いたから十本くらいはあるぜ、悟空。でも、印をつけてるのは三蔵さん用の甘くないやつだからな。」
色テープをつけられているのが、食卓に二本ある。これは、甘みの少ない分で、主に寺の坊主がおやつにするために用意されている。どこまでも甘やかしているので、とうとう坊主も、女房のおやつしか口にしなくなった。そのため、悟空たちに用意するのと別にしている。
「・・・なあ、ママ。離婚とかしないでくれな? 棄てられたら三蔵が、とんでもないことになるからさ。」
「離婚って・・・結婚もしてないと思うんだがな? 悟空。」
一応、『吉祥富貴』では、寺夫夫と一括りで呼称されているが、どっちも恋愛感情はない。気楽な同居人という感じだが、周囲は、夫夫として扱っている。というのも、ニールが怖ろしく三蔵を甘やかした結果、縦のものを横にもしないグウタラにしてしまったからだ。
「もうしてるってことでいいよ。・・・他に好きな人ができたら、寺に一緒に住んでくれればいいからさ。」
悟空だって、そこいらは理解しているが、ここまで甘やかしてしまったツケは、ニールになんとかしてもらわないと、とんでもないことになるのは、重々承知の上だ。
「好きな人か・・・もう、そんな気分にならないんだよな。こういう暮らしのほうが気楽でいいんで、三蔵さんが追い出さない限りは、世話になるよ。」
恋愛を楽しむというのが、ニールには昔からなかった。一夜限りの相手というなら、いろいろ調達して活用していたが、それだけだ。それが仕事の上での厄介になると理解していたし、定住できる仕事でもなかったからだ。さらに、組織に入ってから、拠点が宇宙になったから、そういう出会いもなかった。たぶん、どこかで心が壊れているんだろうと気付いているが、もう、こればかりは治しようがないのだ。
「そういうもん? 」
「俺は、そういう感じ。三蔵さんは、どうなのか知らないけど。」
「三蔵は坊主だからなあ。俺もよくわかんね。」
また食べるほうに、悟空が専念すると、ニールも台所へ戻る。悟空には告げていないが、追い出されなくても出て行く場合もある。刹那たちが、世界から贖罪を求められたら、その時は暇乞いをすることになるだろう。それでいいと、亭主は認めているし、亭主のほうも本山で何事かあれば、こちらを切り捨てると宣言している。どちらもどちらだから、それについてはお互いに何も言うつもりはないし、すっぱり離れるつもりだ。
ティエリアが、元の大きさに戻って、『吉祥富貴』を来訪したのは、九月に入って、すぐのことだ。親猫に挨拶をしようと思っていたら、漢方薬治療で歌姫の本宅で寝込んでいるとのことで、そちらは後回しにして、キラとラボで打ち合わせを開始した。ヴェーダの全てを掌握したので、ラボのマザーとリンクすることになったのだが、セキュリティーやらリンク方法やらで、いろいろと取り決めてシステムを組まないとならないから、連日、それについて話し合っている。
「どちらも最深部へのアクセスには制限をかけるほうがいいと思うんだ。僕やティエリアは制限を解除できるようにパスワード設定しておけばいいでしょ? そうでないと、外部から侵入された場合、一気に最深部まで覗かれちゃうから。」
「確かに、そこは厳重にセキュリティーをかけておくほうがいいだろう。全てを閲覧可能にするのは無理がある。連携するだけなら、そこまで使用することはない。」
「でも、ティエリアのところのヴェーダの目が運んでくる情報は見られるようにしておいてくれない? リアルタイムの情報になるから、僕らには拾えないからさ。」
「ふむ、確かにそうだな。では、そちらは別枠で共有できるようにシステムを構築しよう。検索機能や情報の整理は、どういう形態が希望だ? キラ。」
「うーん、とりあえず、うちは、こんな感じなんだけど。」
「なるほど、では同様のものにしよう。それなら、こちらのシステムを流用できるので簡単だ。」
フェルトが八月一杯を寺で過ごして、組織へ戻った。そして、『吉祥富貴』も通常モードで動いている。シンとレイは九月からアカデミーへの進学を果し、忙しそうにしているし、キラたちは連邦が創設されていく過程に、いろいろと裏からちょっかいをかけて修正している。
寺のほうは、それらからは除外されているから気楽なものだ。悟空がアカデミーへの進学のために論文を提出することになって、天蓬の助言を受けたりアスランたちに教えてもらったりで、必死に勉強している。
「今まで一番、勉強してる気がする。」
卓袱台の前に座って、ぶへーと伸びている悟空は、軽くオーバーワーク状態だ。
「たまにはいいんじゃないか? 」
「でもさ、ママ。天蓬ったら、あれとこれを読めば、それは解決しますって言うんだぜ? そうじゃなくて答えを教えろって言うーんだよ。」
元保護者な天蓬は甘やかすばかりではない。それなりに知識もつけさせるつもりらしく、答えや結果を言うのではなく、課題を出して悟空自身に理解させようとしているらしい。だから、やたらと本やデータが送られてきて読み物ばかりに圧倒されて悟空でも疲れる。
「でも、それを理解してないとアカデミーに入ってから苦労するんじゃないのか? 」
「そうだけどさ。」
「いいじゃねぇーか、知識は持ってて損はないんだからさ。今のしんどいのが、アカデミーに入って楽になるかもしれないぜ。」
「うーん、そういうもんかなあ。」
せっせと、ニールが台所で立ち働きしつつ、悟空に大声で叫んでいる。明日から留守をするので、二週間分の食料作りの最中だ。定期的に行なわれている漢方薬治療の時期で、本宅へ連行されることになっている。明日から、ママがいない悟空は、目一杯甘えている。
「勉強すると脳にも栄養やらないとな。」
作業の合間に、おやつを運んでくれる。本日は、バウンドケーキだ。ただし、生半可の量では、悟空は満足しないから、丸々一本を運んでくるし、さらに果物なんかも付け足されている。本日は、ウイークデーだから、夜にはバイトがある。ここんところ、夜食というかおやつは店でニールが製作して、年少組やスタッフに食べさせているから、寺では軽いものになっている。
「しばらく、ママのおやつともお別れだ。これ、あと何個残ってるの? 」
がつがつと両手にバウンドケーキを持ちながら、悟空が尋ねる。
「昨日、焼いたから十本くらいはあるぜ、悟空。でも、印をつけてるのは三蔵さん用の甘くないやつだからな。」
色テープをつけられているのが、食卓に二本ある。これは、甘みの少ない分で、主に寺の坊主がおやつにするために用意されている。どこまでも甘やかしているので、とうとう坊主も、女房のおやつしか口にしなくなった。そのため、悟空たちに用意するのと別にしている。
「・・・なあ、ママ。離婚とかしないでくれな? 棄てられたら三蔵が、とんでもないことになるからさ。」
「離婚って・・・結婚もしてないと思うんだがな? 悟空。」
一応、『吉祥富貴』では、寺夫夫と一括りで呼称されているが、どっちも恋愛感情はない。気楽な同居人という感じだが、周囲は、夫夫として扱っている。というのも、ニールが怖ろしく三蔵を甘やかした結果、縦のものを横にもしないグウタラにしてしまったからだ。
「もうしてるってことでいいよ。・・・他に好きな人ができたら、寺に一緒に住んでくれればいいからさ。」
悟空だって、そこいらは理解しているが、ここまで甘やかしてしまったツケは、ニールになんとかしてもらわないと、とんでもないことになるのは、重々承知の上だ。
「好きな人か・・・もう、そんな気分にならないんだよな。こういう暮らしのほうが気楽でいいんで、三蔵さんが追い出さない限りは、世話になるよ。」
恋愛を楽しむというのが、ニールには昔からなかった。一夜限りの相手というなら、いろいろ調達して活用していたが、それだけだ。それが仕事の上での厄介になると理解していたし、定住できる仕事でもなかったからだ。さらに、組織に入ってから、拠点が宇宙になったから、そういう出会いもなかった。たぶん、どこかで心が壊れているんだろうと気付いているが、もう、こればかりは治しようがないのだ。
「そういうもん? 」
「俺は、そういう感じ。三蔵さんは、どうなのか知らないけど。」
「三蔵は坊主だからなあ。俺もよくわかんね。」
また食べるほうに、悟空が専念すると、ニールも台所へ戻る。悟空には告げていないが、追い出されなくても出て行く場合もある。刹那たちが、世界から贖罪を求められたら、その時は暇乞いをすることになるだろう。それでいいと、亭主は認めているし、亭主のほうも本山で何事かあれば、こちらを切り捨てると宣言している。どちらもどちらだから、それについてはお互いに何も言うつもりはないし、すっぱり離れるつもりだ。
ティエリアが、元の大きさに戻って、『吉祥富貴』を来訪したのは、九月に入って、すぐのことだ。親猫に挨拶をしようと思っていたら、漢方薬治療で歌姫の本宅で寝込んでいるとのことで、そちらは後回しにして、キラとラボで打ち合わせを開始した。ヴェーダの全てを掌握したので、ラボのマザーとリンクすることになったのだが、セキュリティーやらリンク方法やらで、いろいろと取り決めてシステムを組まないとならないから、連日、それについて話し合っている。
「どちらも最深部へのアクセスには制限をかけるほうがいいと思うんだ。僕やティエリアは制限を解除できるようにパスワード設定しておけばいいでしょ? そうでないと、外部から侵入された場合、一気に最深部まで覗かれちゃうから。」
「確かに、そこは厳重にセキュリティーをかけておくほうがいいだろう。全てを閲覧可能にするのは無理がある。連携するだけなら、そこまで使用することはない。」
「でも、ティエリアのところのヴェーダの目が運んでくる情報は見られるようにしておいてくれない? リアルタイムの情報になるから、僕らには拾えないからさ。」
「ふむ、確かにそうだな。では、そちらは別枠で共有できるようにシステムを構築しよう。検索機能や情報の整理は、どういう形態が希望だ? キラ。」
「うーん、とりあえず、うちは、こんな感じなんだけど。」
「なるほど、では同様のものにしよう。それなら、こちらのシステムを流用できるので簡単だ。」
作品名:こらぼでほすと ニート1 作家名:篠義