こらぼでほすと ニート2
夕刻に、ティエリアも本宅へ戻ってきた。キラたちは店があるから、一緒に、こちらには戻って来ることになる。バイトも適当に入るように言われているが、毎日というオーダーではない。なるべく親猫と一緒に居られるようにという心配りだ。
「おかえり、ティエリア。」
夕刻に目を覚ましたニールが声をかけると、ティエリアもほんわりと笑顔になる。近寄って差し出された手を握る。
「ただいま戻りました。具合は、どうですか? ニール。」
「まあ、こんなもんだろう。メシは? 」
「これからです。あなたも少しは召し上がっていただきますからね。」
「はいはい。・・・・小さいのも可愛かったけど、やっぱり、こっちの姿のほうがしっくりくるな。」
前回は素体が間に合わなくて、二歳児の素体だった。あれはあれで可愛かったが、元の姿で逢うと親猫はほっとする。無事に戻って来てくれたと実感できるからだ。
「当たり前です。アレルヤ、食事を頼んでくれ。」
「もう頼んである。その前に、ニールはクスリ飲まさないといけないんだって。僕、八戒さんから頼まれたから、まず、そこからだ。」
店に出勤する前に、八戒がアレルヤに看病の手順は教えてくれた。いつもは看護士がやってくれているが、身内が居るなら、そちらにしてもらったほうがいいだろうとのことだ。冷蔵庫からオドロオドロしい液体の入ったペットボトルを取り出し、コップに容れる。それから、同じように丸薬を三粒だ。
「これを飲むんだよね? ニール。」
「・・・ああ・・・」
えーっと口直しは・・・と、そこに置かれているハチミツの瓶も用意して、ティースプーンと共にティエリアに渡す。
「ティエリア、これと水で口直しなんだって。」
「了解だ。」
ティエリアのほうは看病も慣れたものだ。ミネラルウォーターを用意してベッドの傍に待機する。
「おら、じじい。クスリだ。」
アレルヤではなくハレルヤのほうがニールの身体を抱き起こす。こういう場合は容赦ないアレルヤよりはハレルヤのほうが加減ができるからのことらしい。
「悪いな、ハレルヤ。」
「なんでもいいから飲め。」
丸薬を口に含ませて、ゆっくりとコップも傾ける。これがアレルヤだと一気にやってしまうから危険だ。飲める速度を調節しつつ飲ませると、ティエリアがコップを取り替える。こちらはミネラルウォーターだ。口をすすぐようにして飲ませて、すかさずティエリアがティースプーンでハチミツを運ぶ。
「もう一口。」
これも栄養があるから、二口ほど舐めさせると作業は終わりだ。終わる頃に看護士が食事を届けてくれた。
「ご苦労様。スープだけは完食させてくれ。」
他にも流動食は用意されているが、気分が良ければ、という程度のことらしい。それとは別に、アレルヤたちの食事も運んでくれた。
「ティエリア、待て。ベッドを上げろ。」
そのままスープを運ぼうとするので、ハレルヤが指示を出す。ベッドを起こして、そこに凭れさせたほうが食べやすい。
「じじい、なんか食えそうなもんはあるか? 」
「いや、スープだけで勘弁してくれ。」
まだ発熱したままで、さすがに固形物は辛い。しょーがねぇーなーとハレルヤも、それだけを準備する。ティエリアたちは、普通の食事だ。それを食べつつ、今回の降下の予定を話す。予定は二週間。ラボでの打ち合わせが終わったら、ヴェーダに戻り、システムを構築する。システムを互いが構築したら、今度はキラがヴェーダに出向いて、そちらで作業することになる。
「それって、おまえさんたち、休みなしにならないか? 」
「前回で十分、休みはとった。ヴェーダとラボのマザーのリンクは早急に処理するべき案件だ。遊んでいる暇はない。あなたの看病は、アレルヤに一任する。」
「僕は聞いてても、意味が無いからね。まあ、店のヘルプも入ってるから常時、ニールの看病ってわけにはいかないけど。」
組織の建て直しが終わらなければ、何も出来ない。だから、まずは、そこからだ。MSの新機体も開発は始まっているが、それについても全精力は投入できない状態だ。
「ダブルオーは刹那が中心になって再生を始めている。とりあえず、ダブルオーを完成させて、次の段階に進める予定だ。もう少し時間がかかるだろう。」
ダブルオーのトランザムバーストができれば、ニールの細胞異常も治療できる。それに、一機でも完成体がなければ、組織としても何かと動きが取れない。後者を理由にして、まずはダブルオーの再生を始めた。それについては実働部隊も周辺組織も文句はなく順調に進んでいる。
「まあ、何かと大変だろうからなあ。」
「おい、じじい、手が止まってるぞ? 」
「そう、せっつくなよ、ハレルヤ。ちゃんと、これは食うからさ。」
ニールのほうも、組織の再再始動というものはあるだろうと気付いているから、何も言わない。組織は、これからも連綿と続いていく。それは間違いのないことだ。そう考えれば、体制を万全のものにするのが必要なことだ。
「・・・ったく、漢方治療なんて効いてんのか? 余計に具合が悪くなってないだろうな? 」
「いや、効いてる。これが終わると、かなり身体が楽になるんだ。その代わり、えらい目に遭うんだけどさ。ティエリア、それも食え。」
ニールが指差しているのは、小魚の酢漬けだ。身体にはいいものだから、ひとつでも食べろ、と、注意している。
「俺のことはいい。あなたが食べてください。」
「徐々に食べられるようになるから、俺は大丈夫。・・・ちゃんと食って働かないと保たないぞ。キラは、あんなだけど体力はあるからな。」
「俺だって現役マイスターだ。キラと同等の体力はある。」
「それを維持するには、そういうものも食べないとダメなんだよ。ひとつでも食ったら、俺も、これを飲み干す。」
いつもとは逆に、ティエリアの苦手なものを克服させるために、ニールが手を止める。あなたという人は・・・と、ティエリアは睨みつつも、小魚を口にする。飲み込みそうな勢いで、それを嚥下すると、ニールのほうも頷いてスープを飲む。別に、ティエリアも怒っていない。しょうがないな、と、笑っているだけだ。本当に、ニールの傍に戻ると何気ない日常がある。その空気に触れると気分はゆったりとしたものになって落ち着く。そんな食事風景だった。
食事が終わって、親猫は食後の漢方薬を飲むと、またうつらうつらとしている。まだ時間は、夜という時間で、いくらティエリアといえど眠気はこない。俺はこのまま寝るから、おまえたちは、どっかで寛いでこい、と、親猫は言い置いたが、子猫たちは離れるつもりはない。とりあえず、風呂に入って、パウダールームで話をしている。病室は、ほぼ一流ホテルのスィートと変わらない設備だから、浴室、シャワールーム、パウダールーム、レストルームが別々にあって、パウダールームには休憩用に籐のソファまで配置されている豪華版だ。寝室のほうは電灯も薄暗くしてあるし、テレビをつけて親猫の睡眠を妨げるわけにもいかないからだ。風呂上りに軽い飲み物を口にしつつ、のんびりとお互いの本日の行動について話している。
「話したのか? 」
「・・・ううん・・・もう少し体調が落ち着いたらにする。話してると、ニールは、すぐに寝ちゃうんだ。」
「おかえり、ティエリア。」
夕刻に目を覚ましたニールが声をかけると、ティエリアもほんわりと笑顔になる。近寄って差し出された手を握る。
「ただいま戻りました。具合は、どうですか? ニール。」
「まあ、こんなもんだろう。メシは? 」
「これからです。あなたも少しは召し上がっていただきますからね。」
「はいはい。・・・・小さいのも可愛かったけど、やっぱり、こっちの姿のほうがしっくりくるな。」
前回は素体が間に合わなくて、二歳児の素体だった。あれはあれで可愛かったが、元の姿で逢うと親猫はほっとする。無事に戻って来てくれたと実感できるからだ。
「当たり前です。アレルヤ、食事を頼んでくれ。」
「もう頼んである。その前に、ニールはクスリ飲まさないといけないんだって。僕、八戒さんから頼まれたから、まず、そこからだ。」
店に出勤する前に、八戒がアレルヤに看病の手順は教えてくれた。いつもは看護士がやってくれているが、身内が居るなら、そちらにしてもらったほうがいいだろうとのことだ。冷蔵庫からオドロオドロしい液体の入ったペットボトルを取り出し、コップに容れる。それから、同じように丸薬を三粒だ。
「これを飲むんだよね? ニール。」
「・・・ああ・・・」
えーっと口直しは・・・と、そこに置かれているハチミツの瓶も用意して、ティースプーンと共にティエリアに渡す。
「ティエリア、これと水で口直しなんだって。」
「了解だ。」
ティエリアのほうは看病も慣れたものだ。ミネラルウォーターを用意してベッドの傍に待機する。
「おら、じじい。クスリだ。」
アレルヤではなくハレルヤのほうがニールの身体を抱き起こす。こういう場合は容赦ないアレルヤよりはハレルヤのほうが加減ができるからのことらしい。
「悪いな、ハレルヤ。」
「なんでもいいから飲め。」
丸薬を口に含ませて、ゆっくりとコップも傾ける。これがアレルヤだと一気にやってしまうから危険だ。飲める速度を調節しつつ飲ませると、ティエリアがコップを取り替える。こちらはミネラルウォーターだ。口をすすぐようにして飲ませて、すかさずティエリアがティースプーンでハチミツを運ぶ。
「もう一口。」
これも栄養があるから、二口ほど舐めさせると作業は終わりだ。終わる頃に看護士が食事を届けてくれた。
「ご苦労様。スープだけは完食させてくれ。」
他にも流動食は用意されているが、気分が良ければ、という程度のことらしい。それとは別に、アレルヤたちの食事も運んでくれた。
「ティエリア、待て。ベッドを上げろ。」
そのままスープを運ぼうとするので、ハレルヤが指示を出す。ベッドを起こして、そこに凭れさせたほうが食べやすい。
「じじい、なんか食えそうなもんはあるか? 」
「いや、スープだけで勘弁してくれ。」
まだ発熱したままで、さすがに固形物は辛い。しょーがねぇーなーとハレルヤも、それだけを準備する。ティエリアたちは、普通の食事だ。それを食べつつ、今回の降下の予定を話す。予定は二週間。ラボでの打ち合わせが終わったら、ヴェーダに戻り、システムを構築する。システムを互いが構築したら、今度はキラがヴェーダに出向いて、そちらで作業することになる。
「それって、おまえさんたち、休みなしにならないか? 」
「前回で十分、休みはとった。ヴェーダとラボのマザーのリンクは早急に処理するべき案件だ。遊んでいる暇はない。あなたの看病は、アレルヤに一任する。」
「僕は聞いてても、意味が無いからね。まあ、店のヘルプも入ってるから常時、ニールの看病ってわけにはいかないけど。」
組織の建て直しが終わらなければ、何も出来ない。だから、まずは、そこからだ。MSの新機体も開発は始まっているが、それについても全精力は投入できない状態だ。
「ダブルオーは刹那が中心になって再生を始めている。とりあえず、ダブルオーを完成させて、次の段階に進める予定だ。もう少し時間がかかるだろう。」
ダブルオーのトランザムバーストができれば、ニールの細胞異常も治療できる。それに、一機でも完成体がなければ、組織としても何かと動きが取れない。後者を理由にして、まずはダブルオーの再生を始めた。それについては実働部隊も周辺組織も文句はなく順調に進んでいる。
「まあ、何かと大変だろうからなあ。」
「おい、じじい、手が止まってるぞ? 」
「そう、せっつくなよ、ハレルヤ。ちゃんと、これは食うからさ。」
ニールのほうも、組織の再再始動というものはあるだろうと気付いているから、何も言わない。組織は、これからも連綿と続いていく。それは間違いのないことだ。そう考えれば、体制を万全のものにするのが必要なことだ。
「・・・ったく、漢方治療なんて効いてんのか? 余計に具合が悪くなってないだろうな? 」
「いや、効いてる。これが終わると、かなり身体が楽になるんだ。その代わり、えらい目に遭うんだけどさ。ティエリア、それも食え。」
ニールが指差しているのは、小魚の酢漬けだ。身体にはいいものだから、ひとつでも食べろ、と、注意している。
「俺のことはいい。あなたが食べてください。」
「徐々に食べられるようになるから、俺は大丈夫。・・・ちゃんと食って働かないと保たないぞ。キラは、あんなだけど体力はあるからな。」
「俺だって現役マイスターだ。キラと同等の体力はある。」
「それを維持するには、そういうものも食べないとダメなんだよ。ひとつでも食ったら、俺も、これを飲み干す。」
いつもとは逆に、ティエリアの苦手なものを克服させるために、ニールが手を止める。あなたという人は・・・と、ティエリアは睨みつつも、小魚を口にする。飲み込みそうな勢いで、それを嚥下すると、ニールのほうも頷いてスープを飲む。別に、ティエリアも怒っていない。しょうがないな、と、笑っているだけだ。本当に、ニールの傍に戻ると何気ない日常がある。その空気に触れると気分はゆったりとしたものになって落ち着く。そんな食事風景だった。
食事が終わって、親猫は食後の漢方薬を飲むと、またうつらうつらとしている。まだ時間は、夜という時間で、いくらティエリアといえど眠気はこない。俺はこのまま寝るから、おまえたちは、どっかで寛いでこい、と、親猫は言い置いたが、子猫たちは離れるつもりはない。とりあえず、風呂に入って、パウダールームで話をしている。病室は、ほぼ一流ホテルのスィートと変わらない設備だから、浴室、シャワールーム、パウダールーム、レストルームが別々にあって、パウダールームには休憩用に籐のソファまで配置されている豪華版だ。寝室のほうは電灯も薄暗くしてあるし、テレビをつけて親猫の睡眠を妨げるわけにもいかないからだ。風呂上りに軽い飲み物を口にしつつ、のんびりとお互いの本日の行動について話している。
「話したのか? 」
「・・・ううん・・・もう少し体調が落ち着いたらにする。話してると、ニールは、すぐに寝ちゃうんだ。」
作品名:こらぼでほすと ニート2 作家名:篠義