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こらぼでほすと ニート2

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 単独で組織を離れるという話をしておきたい。ただし、少し相談したいこともあって、アレルヤはニールの看病を申し出た。
「だが、我々の時間も、それほどあるわけじゃない。」
「明日か明後日には話せると思う。ティエリアのほうは、どう? 」
「そろそろ、システムの設計の話になっている。キラと設計を詰めてしまえば、あとは実務的な話だ。予定通りに終われる。」
「きっちり二週間だね。」
「あまり組織を空けているわけにもいかないからな。とりあえず、リンクが終わったら、俺もダブルオーの再生の手伝いに参加する。」
「僕も、ニールが元気になってから出かけるよ、ティエリア。マリーも、すぐには無理だろうから。」
「ああ、そうしてくれると助かる。・・・・俺も手伝いはするが、それだけに専念はできないだろう。」
 ティエリアは今回も組織本体の復興作業がある。あちこち分断されてしまった組織の内部を整理して再構築するのも急務だ。前回ほど崩壊しているわけではないが、それでも組織を外れるもの、亡くなったものなど、穴が空いている部分は多数ある。それらを、きっちりと埋めて、再再始動に向けて完全な状態にする必要があるのだ。
 ゴクリとミネラルウォーターを口に含み、アレルヤは沈黙する。本当は、ティエリアも一緒に連れて行きたい。だが、このアレルヤの大切な紫猫は、組織を優先する。自分自身はイノベイドという人間に奉仕するための存在だとおっしやって、アレルヤの提案なんて聞くつもりはないのだ。
「でもね、ティエリア。きみは人間だって、ニールは言うよね? 人間はリフレッシュする必要がある生き物なんだ。」
「わかっている。だが、俺は前回も組織を立て直した。経験者がやるほうが効率的だろう。」
「もちろん、そうだけど。」
「それにリフレッシュ休暇というのなら、三ヶ月ばかり地上でゆっくりさせてもらった。あれで十分ではないか? 」
「そういうことなら、僕もそうなるよ。」
「きみは、奪還されて、そのまま再始動に参加した。俺たちのように、ニールと休暇を過ごしたわけじゃない。その分は休んでもいい。」
 アレルヤたちは、人革連に捕縛されて収監されていた。その間は、ずっと緊張状態だったし、身体や精神を休められたわけではない。だから、その分は休んでもいい、と、ティエリアは言う。この話し合いは、延々、こういう結果になる。そうじゃなくて、僕がティエリアと世界を旅してみたいんだ、と、アレルヤは言い募るのだが、携帯端末で繋がるから、それで我慢しろ、という反論がされる。ほぼ毎日、堂々巡りだ。
 カタンと音がしたので、ティエリアがパウダールームから顔を覗かせると、ニールがゆっくりと起き上がるところだった。
「どうしました? ニール。」
「いや、トイレ。風呂入ってたのか? 」
「ええ。アレルヤ、介助しろ。」
 はいはい、と、アレルヤがニールを担いでトイレへ移動させる。独りで寝ると眠りが浅いのは、いつものことだ。この部屋に予備のベッドを二つ運んでもらっているので、そのひとつをニールのベッドの傍に移動させる。ぐっすり熟睡させるには、誰かの体温が必要な人なのだ。ティエリアたちが、本宅へ戻るまではレイが居座ってくれていた。
「俺は、そろそろ寝る。」
「僕も寝るよ。」
 アレルヤも予備ベッドを移動させた。すっかり隙間なくベッドを並べて準備が整う頃に、ニールがトイレから出てきた。並べられたベッドを見て苦笑する。
「まだ、寝る時間じゃねぇーだろ? 上でテレビでも見てくればどうだ? それとも軽く飲むとかさ。」
 やれやれとニールはソファに座り込む。追い出してから休むつもりらしいのだが、そうは問屋が卸さない。
「せっかく降りて来たのに、あなたは俺を追い出すのですか? 」
「いや、そんなつもりはないけど。俺に付き合う必要はないって。」
「では、俺に付き合ってください。」
「いいけど、何をするつもりだ? 」
「俺の愚痴でも聞いてもらいましょうか。あなたの実弟が、どれほどバカなのか、教えて差し上げます。」
「え? あいつ、ものすごく頭がいいんだぞ? ティエリア。」
「知能や知識の問題ではない。社会性や一般常識のことだ。」
「それだって、あいつ、大企業で営業職をやってたんだから、社会性とか一般常識だって身についてるだろ? 」
 マイスターよりは、とは内心で付け足した。刹那は世界放浪で、ある程度の社会性は身についた。それからすれば、この二人のほうが箱入り状態だ。
「俺に向かって、『可愛い教官殿。』と茶化すのは、いかがなものですか? それに、カタロンの基地が攻撃された時は、勝手に反撃に向かってしまうし、あまつさえカタロンの基地で我々の顔まで晒してくれた。本当に、それは常識的な行動ですか? 」
 比べているつもりはないが、やはり、初代ロックオンとの行動とはかけ離れていて、最初は刹那にも、「なぜ、あんなバカを用意した? 」 と、詰ったほどだった。こういう軽い愚痴は、いつもならアレルヤにぶつけているものだが、ロックオンの兄にならぶつけてもいいだろうというところだ。だから、本気ではない。顔は笑っている。
「あいつな、最初は、俺と比べられて辛かったらしいんだよ。だから、キレたりもしたし嫌味も言ったらしいんだ。いきなり違う世界に叩き込まれて戸惑ったっていうのもあるから・・・・そこいらは許してやってくれ。」
 ニールにも最初の頃は、相当キツかった、と、ライルも愚痴っていた。なんせ、特殊な生い立ちの純粋培養テロリストばかりで、話も何もあったもんではなかったらしい。意思疎通する以前の問題で、どちらもすれ違っていたというのが実際のところだろう、と、ニールは推測する。
「途中からミッション時の連携は、どうにかできるようになりましたが。刹那に対する執着は目を瞠るものがあります。」
 ティエリアとしては公衆の面前でいちゃいちゃとするのが目の余るという意味で言ったのだが、当代ロックオンの兄は大きく溜め息をついた。
「・・・あれな・・・そのうち、刹那が目を覚ましたら別れさせてくれ。」
「はあ? 」
「ほら、刹那は正しい男女交際とかしてないからさ。そういう相手が現れたら、いつか目も覚めるかもしれないだろ? 」
「あなたは、男同士の交際は否定すると? 」
「いや、違う違う。そういう差別はないよ。刹那はライルに押して押して押し倒されたんだろ? だから、ちゃんとした交際を知らないからさ。」
 とは言ったものの、ここにも、ちゃんとした男女交際なるものを知らないのがいる。というか、まさに、その男同士の交際関係なのがいる。この話題はまずかった、と、いきなり方向転換する。
「なあ、せっかくの地上なんだから、おまえら、ふたりで別の部屋で休め。ふたりっきりなんて、なかなかなれないんだからさ。」
「そんなあからさまなこと言わないでよ、ニール。」
 親猫の提案に顔を赤らめたのは、アレルヤのほうだ。
「あなたは三蔵に対する愛はないんですか? 」
 ティエリアのほうは、ますますツッコミの態勢だ。こういう親猫とのコミュニケーションは楽しい。
「ということは、ティエリアは刹那とライルのことは認めているってことか? 」
作品名:こらぼでほすと ニート2 作家名:篠義