こらぼでほすと ニート2
「当たり前でしょう。現ロックオンはバカですが、刹那に対する感情は真摯なものだと、俺は判断しています。刹那も、それなりに愛情はある様子だ。どこにも問題点はありません。」
「ニールが思ってるほど、ロックオンは無茶して刹那に手を出したって感じじゃないよ。仲は良いよ? 」
アレルヤもティエリアに同意する。ちゃんとした絆みたいなものはあるから、どちらも、それなりの感情を互いに向けている。そうでないなら、ライルは組織を抜けていただろう。アニューの一件も、ライルを守るために刹那が殺してしまったという形になっているが、本来はライルが決着をつけるべきことだった。それをライルも分かっているから、殴っただけで、それ以後にわだかまりはない。むしろ、それで絆は深まったといえる。だから、それについて異論というか反対する感情は、ティエリアにもアレルヤにもない。
「それならいいんだけどさ。・・・・なんか複雑な気分なんだよ。」
「それはわかる気もするけどね。」
「本当にいいのかなって。」
「だが、ニール。刹那の現在の状況からすれば、新しい出会いというのは難しいと思います。」
実際問題として、刹那はイノベーターという特殊な生物になってしまった。それに組織に所属している限り、地上で長い休暇なんてものもないし、休暇は特区へ降りてくるから出会いの場所というのが少ない。一目惚れでもしなければ、難しい状態だ。
「アザディスタンのお姫様は? 」
「あちらも祖国の復興で忙しいだろう。個人的に会える機会がない。」
「それこそ、こっちのMSを使えばさ。」
『吉祥富貴』のMSを使えば隠蔽皮膜でアザディスタンへ潜入するくらいは朝飯前だ。
「刹那は、マリナ・イスマイールに、そういう感情はないと、俺は推測しています。どちらかといえば、世界を変革する同志という位置づけではないでしょうか。」
ティエリアの意見に、ニールも同意はする。以前も、刹那に勧めたことがあるのだが、そういう感情ではない、と、言われたからだ。姉みたいなものだ、と、刹那は言うのだから、恋愛感情なんてないのだろう。
「いい相手だと思うんだけどなあ。」
「でも、ニール。そんなことになったらライルは棄てられるんだけど、いいの? 」
「それも、よくないんだけどさ。」
なんていうか気分的には複雑だ。実弟が愛している相手が、刹那じゃなければ、それはそれでいいのだ。ただ、刹那だから気になる。とはいえ、実弟が棄てられるなんていうのもイヤだから困る。
「そう考えると、僕らとマリーも似たようなものだよね。僕とマリーも、恋愛感情ってないんだ。」
「ああ、そうか。」
「気分的には姉っていうのも、刹那と一緒だ。僕は、マリーに説明したよ? そしたら祝福してくれた。大切な人ができたことは素晴らしいことだって。」
同じ機関にいた時から、アレルヤたちにとってマリーという人は、そういう感じだった。そう言われてしまうと、ニールも納得するしかない。
「別に、俺は大切だと思ったことはないぞ、アレルヤ。」
「うん、僕が思ってるだけ。」
ツンデレは健在で、ティエリアから、そういう言葉を引き出したいとは、アレルヤも思っていない。
「あなただって、三蔵に恋愛感情はないと言うのに、一緒に暮らしているでしょう。」
「それとこれは違う。」
「違いません。俺も、これが傍にあると楽だと思う。それだけだ。だから、刹那が、いいと言うなら、それでいいと思ってください。」
ニールの横に座り込んで、ティエリアも苦笑する。深く想ってくれる相手が、傍らにあることが、とても大切なことだ。今、ティエリアは愛情を注いでくれるニールと、恋情を向けてくれるアレルヤに囲まれている。これほど幸せな環境はないと思っている。
「おまえさんが幸せなら、俺はいいよ? ティエリア。」
「幸せなんでしょう。・・・・打ち合わせが終わったら、あなたの料理が食べたい。それまでに、ここから出られる努力はしてください。」
「まあ、なんとかなるさ。」
ティエリアの頭を撫でて、ニールが欠伸をする。ほら、寝ましょう、と、腕を引っ張ってベッドへ移動した。
作品名:こらぼでほすと ニート2 作家名:篠義