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Magical Mischief-Makers

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「やべっ」
「撤収!」
「わぁぁん!」
「早く、こっち!」

 ばたばたと廊下を走り、開けておいた抜け道を通り、中庭をかすめて塔の裏側に身を潜める。ジェームズがどこからか透明マントを取り出し、それに4人でわたわたとくるまった。多少のトラブルに見舞われたくらいでは出てこない秘密の道具だ。それが出てきたことで、自分が考える以上に切羽詰まった状況だったのだとリーマスはあらためて思い知る。互いをぎゅうぎゅうと塔の石壁に押しつけるようにして縮こまりながら、4人はマントの中で息を詰めた。
 ぱたぱたぱた、と軽やかな羽音。
 追いかけてきたそれが、あたりをつぶさに探査しながら飛んでいく。
 その気配が通り過ぎるのを待って、それからさらに20を数えて、ジェームズがマントの隙間から目を出した。

「どうだ?」
「んー、……よし、オッケ」

 それを合図に、ぷはあ!と大きく息を吐いてシリウスがマントをかなぐり捨てた。ピーターはその場にへたり込み、ジェームズは苦笑しながら透明な色をしたマントを拾い上げた。

「いやー助かった。やばかった。死ぬと思った」
「感謝してるならもう少し大事に扱ってくれよ」
「ありがとうございました。このごおんはいっしょうわすれません」

 シリウスは棒読みの台詞を吐きながら、跪いてマントの端にキスをした。けれど端で見るとそれはジェームズのローブにくちづけているようにしか見えない。ジェームズは顔をしかめてマントをたくし上げ、その手をシリウスの頭にごつんと振り下ろした。シリウスは人の悪い笑みを浮かべる。
 あ、わざとやってる。
 解けた緊張も手伝って笑いがこみ上げた。リーマスがけたけたと声をあげて笑うと、それにつられるように座り込んでいたピーターにも笑顔が戻った。きらきらと陽の光が降る暖かな午後。緩やかな風が笑声を空へ運ぶ。
 ジェームズは見えないマントをどこかへしまって、ピーターの隣に腰を下ろした。そのジェームズの向かいにシリウスが陣取って、4人は短い草の上に円を描いて座った。

「マクゴナガルのやつ、なんで気付いたんだ?」

 シリウスが足を投げ出して唇を尖らせた。
 狙いを定めて撃ち出した秘密兵器。紙で作った小さな鳥は教授を背後から攻撃するはずだった。鋭いくちばしはそれだけで立派な武器だったし、小さいながらかぎ爪も立派なものを備えていた。鳥は背後から回り込み、帽子を払い落とし、頭頂に降り立つ。そこに貼りついたままぴよぴよと鳴いてくれればそのままでもじゅうぶんに楽しめる光景になるはずだったが、実行直前にシリウスが杖を取り出してにやりと笑った。産んだ卵が爆発してあの頭がモジャモジャになったら面白くね?彼はそう言って、リーマスがまばたきをするほどの間に仕掛けを終えた。あまりの早業に、どういう魔法をかけたのかさえ分からなかった。
 しかし。
 ぱたぱたと軽快に飛び出していった小鳥は。
 質問を受けて、ジェームズが腕組みをして応えた。

「僕が思うに、やっぱり原因は羽音なんじゃないだろうか」

 振り返った敵に、丸めた羊皮紙で叩き落とされたのだ。

「あれで気付かれた。もっと静かに飛ぶものにすれば良かったな」
「でも鳥じゃなきゃ卵産まねーだろ」

 ぱこんと軽い音ひとつ、鳥は進路を失ってぺしゃりと床に崩れた。5人分の視線が集まる中、鳥はふらふらと再び飛び立ち、

「鳥じゃなくても卵は産むだろう。虫とか」
「虫でも飛んだら羽音はするぞ」

 錯乱したのか帰巣本能のなせる技か、あるいは敵が呪を打ち返したのか。鳥は悪戯仕掛け人たちの頭をめがけて飛行を始めた。鳥の腹部には素敵な魔法を孕んだ卵が大事そうに抱えられたままだというのに。
 それぞれの脳裏に退避の文字が点灯するまで長い時間はかからなかった。
 念のため抜け道を開けておいて良かった、とリーマスは走りながら思ったものだ。

「じゃあ魚」
「魚が空を飛ぶか」
「じゃあムササビ」
「ムササビが卵産むか」
「でも滑空ってのはヒントにならないか?羽音がしなくて、卵を産むもの」
「うーん」

 ふたりは腕組みをして考え込んだ。リーマスは口を噤んだまま、難しい顔をしているふたりを交互に眺めた。リーマスが思い付く程度のことはふたりの中ではとっくに却下の判を押されているだろうし、自分の意見が採用されることよりも、ふたりがどんなことを思い付くのか、そのことのほうがよほど興味深かった。ピーターも同じなのだろう、瞳にきらきらと光を宿して彼もまた事の推移を見つめていた。
 やがてぱちんと指を鳴らして、シリウスが顔を上げた。

「ドラゴン!」
「あ、それいいね!」

 即座にジェームズが賛同を表した。たしかにサイズによっては、そして飛行高度によっては彼らは滑空のような飛び方をする。でも、とリーマスは思う。彼らの背にも翼はついているのだ。そして彼らは鳥など比較にならないほどの声量で咆吼し、その口からは炎を吹き出す。まじないががりの卵など必要ない。本物は使わずに紙細工に魔法をかける方針のようだったけれど、ディテールにこだわるのならそのあたりは無視できない特徴だろう。リーマスはピーターを見遣った。彼も同じことに思いが至ったのか、リーマスを見つめて少しだけ困った顔をしていた。リーマスは頷いて、その役を引き受けた。

「あのね、ちょっと思ったんだけど」
「おお、言ってみなさいルーピン君」

 晴れやかな顔をしているふたりにとつとつと説明する。彼らはまず笑みを消し、それから口を引き結び、腕を組み直して顔を見合わせた。余計なことを言ってしまっただろうか。的外れなことを言ってしまっただろうか。不安な気持ちで彼らを窺うと、ジェームズがまず、ふううと長く息を吐いた。

「え、っと、あの」
「困ったな」
「なに、が?」
「ドラゴン、全然ダメじゃないか。リーマスの言うとおりだ」
「お前だって大賛成だったじゃねーか。"それいいね!"」
「僕そんなおバカな口調で言ってないよ」

 物真似を続けるシリウスをじろりと睨んでから、ジェームズはリーマスに向き直った。リーマスの進言にはふたりぶんの署名があることを察して、彼はにこりと笑った。

「教えてくれてありがとう。君たちのおかげで恥をかかずに済んだ。まったく、こいつに付き合ってたら身が持たないよ。次は僕の頭がもじゃもじゃだ」

 向けられた発言を、けっ、とシリウスは一蹴した。
 
「お前の頭は最初からもじゃもじゃなんだから、卵くらったらストレートになるんじゃねーか?良かったなあもじゃもじゃ君、お前の頭にも魔法かけてやるよ」
「何言ってるんだ、癖毛じゃなくなったら僕のセクシーさが3割減じゃないか」
「は、その頭がセクシーならオウムの頭もセクシーだろ」
「マクゴナガル先生もくるくるの髪になったらセクシーになるのかな」

 ぽつり、ピーターが呟く。

作品名:Magical Mischief-Makers 作家名:雀居