Magical Mischief-Makers
白をベースに虹色に染めてみたらどうかな。
虹色ねえ…、それより、このままでも十分笑いが取れるだろ。まじめな顔で授業に出てみようぜ。
笑いが取れる?笑いものになるとは別だよ?
だからさ。変身学は何時からだ?
なるほど、リベンジか。
だろ?あいつ絶対まともな授業なんてできねーって。
あはは、それはいいね!
投げ出した手足を風が撫でる。視界にいっぱいの空が広がる。光る世界を吸い込みがらリーマスは微笑む。マクゴナガル先生はたしかに笑ってくださるかもしれない。笑って授業にならないかもしれない。けれどそれはやっぱり"笑いものになる"とそれほど離れてはいないような気がする。それに他の生徒はまず間違いなく僕たちを笑いものにするだろう。僕だって自分の事じゃなきゃ絶対に笑うもの。それでも、とリーマスは思う。こんなに楽しいことは他にない。どこを探しても見つからない。こんなに楽しいことがあるなんて知らなかった。世界がこんなに綺麗だなんて知らなかった。他の誰とも分かち合えない。他の誰にも分からない。
ジェームズが手を伸ばして、リーマスの頭で巣作りをしていた鳥をそっとすくい上げた。それをそのままちょこんと自分の頭に載せる。ピーターがそれを見て可笑しそうに笑った。
「さあ、そろそろ授業に出ようか。当初の計画は失敗だったけど、もう一仕事だ」
「失敗してもただじゃ起きないのが我々悪戯仕掛け人のモットー」
ジェームズとシリウスが企み顔で笑い合う。彼ららしい表情ではあるのだが、いかんせんこの髪型では威厳に欠ける。リーマスはゆっくり身体を起こした。
「失敗なんかしてない」
リーマスがそう言うと、3人は怪訝な顔でもさもさの白い頭を傾げた。
「いまのところ、僕は楽しい。マクゴナガル先生の髪型を変えることよりも、今の方がずっと楽しいから、僕にとってこの計画は成功なんだけど」
どうかなあ?
目顔で問う。それに応えてジェームズは目を細め、ピーターは頷いた。シリウスは口角を引き上げ、リーマスの頬をつまんだ。
「いいこと言うね、参謀」
頬を引っ張られながら、少しだけ誇らしい気持ちでリーマスは微笑む。
世界がこんなに綺麗だなんて、知らなかった。
「よし、それでは楽しい悪戯計画続行といこう」
「減点罰則怖るるに足らーず!」
「僕はちょっと怖いです」
「僕も減点はちょっと」
「なんだよお前ら、気合いが足りねえぞ」
気合いを入れろとばかり、シリウスが頭をごりごりと押しつけてくる。もさもさとした感触がくすぐったくて、リーマスは首を竦めてそれから逃げた。同じ攻撃に見舞われたピーターはこらえきれずにけたけたと笑っている。ジェームズの頭で鳥がぴよぴよと鳴いた。晴天に相応しい明るい声は彼らの頭上を回る。やがてジェームズが4人の中心に手を出した。差し出された手の上に陽は惜しげもなく降り、それはむやみに眩しかった。そこにそれぞれが手を重ねる。決意表明は誓いだからいつだって神聖だ。声を合わせて、視線を合わせて、心を合わせる。光の中に言葉を投げる。
われら、よからぬことをたくらむもの。
(2007.5.5)
作品名:Magical Mischief-Makers 作家名:雀居