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メア@這いよる篝ちゃん
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魔法少女リリカルほむら、2枚目

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私(アタシ)の憧れていた存在は、正義の味方と呼ばれてた。
 強くて、カッコ良くて、優しくて。
    ――私の嫌いな存在は、正義の味方と呼ばれてた。
       偽善的で、自己満足で、矛盾に満ちて。

ずっとずっと夢見てた。
誰かを助けられる存在を。
    ――最初からわかってた。
       この世には醜い存在が居ることを。

みんなに夢を、希望を、優しさを与える存在。
    ――誰かに悲しみを、苦しみを、絶望を吐き出す存在。




私は、魔法少女になった。





「さやか……ちゃん?」

塗りつぶされていた世界が、日常の世界に戻っていく最中、さやかの形を成していた影が消えゆく様子を、痛々しく眺めていたまどか。その瞳に怯えの色を宿しながら呟いた彼女の身体を引き寄せ、震えるその頭を私は撫でた。精一杯に優しく、あやすように。 元の世界に戻った後、始業の鐘が鳴り、まどかと私は教室へと移動した。彼女の様子は心配だが、彼女と直に話すことが出来ない、この授業中という時間は私にとっても有難かった。今回の件が終った後、向かった教室の先で普段通りに過ごす、美樹さやかの姿が私にとって最大級のイレギュラーとなったからだ。

「美樹さやか本人が、あの影の魔女に変質した。……この考えは不正解のようね。」

とは言っても、あの影が美樹さやかと無関係であるとは思えない。加えて、あの影の反応が他の使い魔と異なっていたことも気になる。私のソウルジェムが捉えた反応は、魔女と使い魔の反応が混在しているものだった。
情報の不足を感じた私は、今後取るべき行動を思案しつつ、放課後までの時間を過ごしていった。


次の日の放課後。

ほむらちゃんと話しあって、私たちはこの街に住むもう一人の魔法少女を訪ねてみることにしました。今、その人の住むマンションを目指して、二人で街中を歩いています。仲良しなうです。……なんて、おどけた表現をするほどには、隣を歩くほむらちゃんの表情は明るいものではありませんでした。

――いくつもの世界を渡って、私のことを護るために闘い続けてくれたほむらちゃん。そんな彼女が今何を考えているのかも、私には分からなくて。その人の笑顔すら、私はまだか数えるほどしか見たことがない。
でもね。

「こうやって街を二人で歩くなんて、デートみたいだね。」
「!? ま、まどか、貴女何を言って……」
「ほむらちゃんと私じゃ、デートするには釣り合わないかな。ティヒヒ。」
「そ、そんなこと……!?……ない、わよ。……ぁぅ」

それでも、私を大事にしてくれるほむらちゃんが、こうやって可愛らしい表情を見せてくれること、私はとっても嬉しく思います。

「えへへ。あ、着いたみたいだよ?」

アプリの地図と、目の前のマンションの表札を交互に確かめながら、私は言った。
照れた表情のまま何か言いかけては呑みこむ、ほむらちゃんの様子をそっと楽しみながら、これから訪れる少女の部屋まで来ました。 そして、インターホンを押します。

「……出てこないね?」

少し待ってみても現れない家主さん。

「留守かしら?」

そう言ってほむらちゃんはそっとドアノブに手を伸ばし、ゆっくり廻した。がちゃり、というドアノブが廻る音。何か不思議な力に導かれるようにほむらちゃんと私はドアを開けました。

「……え?」

玄関から見えるリビングは、少し落ち着いたアイボリーの壁紙と、ブラウンのソファに合わせたお洒落な家具、そして……。

「あら?」

デフォルメされた、無数のQBさんのぬいぐるみと、今まさに私たちを出迎えようとしていた、巴マミさんの姿、更には――

「――やぁ、僕の名前はきゅうべえ。君達は、一体誰だい?」

マミさんの腕に抱かれた一匹の本物のQBさんでした。



「どうぞ、紅茶にミルクは必要かしら?」

木製の、小さめのテーブルの上に、白くフリルの付いた受け皿と、セットのティーカップに紅茶を注いでくれた巴マミに対し、「結構よ」と私は微笑んで見せた。
巴マミの住むマンションを訪ねた私とまどかは、ひとまず自分たちが敵対する魔法少女ではないことを伝えると、彼女は警戒しながらもリビングに通してくれた。道中、彼女の説得に時間が掛かるかと思案していたが、魔法少女ではないまどかを連れていたことが、どうやらプラスに働いたようだった。
リビングの中にも、玄関口から垣間見たあの無数の白いぬいぐるみが犇めき合っているのではないかと心配したが、一応客間であるという意識が巴マミの中に根付いていたのか、以前の世界で見た彼女の部屋と相違はなかった。

「それで、今日はどういった要件なのかしら?新しい魔法少女さん。」

カップを口に運び、流れるような所作でカップを置いた彼女が、そう話を切り出した。
巴マミと話をするに当たって、影の使い魔の情報を、交渉のカードとして使用することを考えていた私は、先に考えていた応答を変更することにした。

「いえ、少々気になった情報を得ましたから。QBの様子がおかしいようですが、詳しい話を聞かせてもらえないかしら?それと、出来ればさっきのぬいぐるみ群についても。」

前者は、あたかもQBを心配して来たかのような偽装の為。…いえ、例え偽装のためとはいえあの白い塊を心配する素振りなどは見せたくないのだけれど、という私の心情を読み取ったのか、隣のまどかは、マミに注がれた紅茶を飲みながら苦笑していた。後者に関しては、単純に興味本位で聞いたものだった。

――話せば長くなるわね。
そう言って、巴マミは何故か申し訳ない様な表情で語りだした。


以下、回想シーン

昨日の放課後。魔力の反応を追っていた私は、人気の無い街中の路地を歩いていた。夕陽の斜光がビルの陰に遮られ、不気味に影を落とす中、私はふと、魔力の波動が途切れるのを感じた。

「おかしいわね、こんな唐突に反応が消えるなんて。」

周囲の気配を探りつつ、いつでも変身できるようにソウルジェムを確認し、警戒しながら進んでいく。やがて十字路に差し掛かった所で、私は見慣れた存在を見つけた。

「え、きゅうべぇ?」

道の中央で横たわっているQBは、所々に土が付着し、無数の傷跡によって、襤褸雑巾の様に打ち捨てられていた。慌てて駆け寄った私は、傷を刺激しないようゆっくりと抱きとめると、満身創痍といった表情のQBが虚ろな瞳で口を開いた。

「君は、誰だい?済まない、どうやらボクの記憶に齟齬が発生しているようだ。確かボクは、何か勧誘活動をしていた筈なんだけど。」
「え、ええ。きゅうべぇ、何があったの?いえ、それより治療しなくちゃ…!?」

ソウルジェムを胸ポケットから取り出し、そこから魔力を供給して治療を行う。身体的な外傷は解決出来る。けれど記憶は…。
突然の事態に思考が追い付かない私に、QBはうわ言の様に呟いた。

「君の腕は暖かいね…。あれ、この感覚、何か思い出せそうだよ…?」
「きゅうべぇ、記憶が!?」
「ああ。この柔らかい感触に、華奢に見えて力強い芯のある骨格、アスリートに必要な強靭な足腰、そして、栄養の吸収効率の高い体組織、思い出した!! 素晴らしいね、君の様な逸材を探していたよ!!」