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今日一日だけのワガママ

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誠凜高校の放課後、黒子テツヤは校門に向かって歩いていた。
今日はバスケ部の練習はない。
だから、このまま真っ直ぐ家に帰るつもりである。家に帰ったら読みかけの推理小説を読むのだ。
それにしても。
なんだか校門のあたりが騒がしい。
騒いでいるのは誠凜高校の女子生徒たちだ。
ああいうのを黄色い声というのだろう。
そう思ったとき、黒子はなんだイヤな予感がした。
女子がキャアキャア騒ぐ光景をこれまで何度も見たことがあり、その原因を思い出した。
黒子は意識して存在を消しつつ歩く。
けれども。
「黒子っちー!」
見つけられてしまった。名前を呼ばれてしまった。
海常高校の制服を着た黄瀬涼太がいる。
女子生徒に囲まれて、その人垣の向こうにいても、すらりとした長身で華やかな雰囲気を持つ黄瀬は目立っていた。
黒子のほうに向けられている整った顔は輝いている。
「……黄瀬君」
とりあえず黒子は立ち止まった。
そのあいだに黄瀬が近づいてきた。
黒子は冷静な表情のまま問いかける。
「ウチの高校になにか用ですか?」
「違うっス。用があるのは、誠凜じゃなくて、黒子っちにっスよ」
「ボクに?」
「黒子っち、今日はなんの日か知ってるっスか?」
「今日、ですか?」
黒子は右手を口元に当てて考える。
今日は六月十八日だ。なんの日だっただろうか……。
しかし、黒子の返事を待たずに黄瀬が言う。
「オレの誕生日っス!」
「……ああ」
「だから、今日はオレのワガママきいてほしいっス!」
うきうきとした明るい笑顔で黄瀬は告げた。

黒子はいつものハンバーガーショップにいた。
向かいの席には黄瀬が座っている。
近くの席にはどうやら誠凜高校からついてきてきたらしい女子生徒たちがいて、黄瀬のほうをチラチラ見ている。
だが、黄瀬は見られるのを慣れているせいか周囲の視線を気にしている様子はない。
「……本当に、誕生日プレゼントがコレでいいんですか?」
黒子はカップをトレイに置きつつ言った。
同じ物が黄瀬のまえにもある。
「だって、黒子っち、好きっスよね?」
黄瀬は答える。
「ここのバニラシェイク」
「はい」
このバニラシェイクが好きなのは事実なので、黒子はうなずく。
けれども、それが黄瀬の誕生日プレゼントとどうつながるのかわからない。
すると、黄瀬はふたたび口を開いた。
「オレは黒子っちが好きな物を飲んでるとこを見ていたいだけっス」
にこにこしている。
一瞬、黒子は固まった。
そして。
「……まったく、これだから黄瀬君は……」
小声でつぶやき、ハァ……とため息をついた。



作品名:今日一日だけのワガママ 作家名:hujio