ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─
おまじない
2年前のピーターパンの劇は無事に成功を収めました。
恥をかくまいと猛特訓したとしはる君の演技はなかなかのもので、クラスみんな感服でした。
みゆきちゃんから見ても、ピーターパンの劇すごく良かったよ!と好評を得られました。
それからというものの、としはる君とみゆきちゃんの仲はまさかの進展です。
「としはる君、この本を貸してあげるから。絶対に読んでね!」
「あ、ああ…」
ピーターパン「だけ」が好きというとしはる君に、みゆきちゃんは他の作品を猛プッシュです。
あれもこれもと、みゆきちゃんは本当に楽しそうにお奨めの絵本を紹介してくるようになりました。
ピーターパンだけもなにも、はなからデマカセがあだになってしまったようです。
絵本なんて興味がないとしはる君でしたが、今の関係が嫌なわけもありません。
「絵本なのに辞典並にぶ厚い本なんだな…」
「各国いろんな童話と詳細もまとめられてるんだよ!すごくオススメなの!」
これを読み切る自信はないとしはる君でしたが、みゆきちゃんの厚意を受けたかったのです。
しばらくの間になるけど借りる事にして、空いた時間に読むようにしました。
とても忙しくて申し訳ございませんが、中学に進学してもその日課は続いていたとある夜の事です。
「まぁ、とにかく明日の家庭実習に使う材料くれぐれも忘れないでよね」
「わかってるって。心配するなら、みゆきの方だろ?」
ふみえちゃんと電話で翌日の授業の打ち合わせ中、同じ班員のみゆきちゃんの名前が出ました。
「みゆき、ね。そういえば、本当にとしはるもみゆきと仲良くなったわよね」
「まぁ、ふみえとつるんでいたら自然とそうなってしまってたなー…」
「………今、なにしてるの?」
「何ってちょうど、そのみゆきからずいぶん前に借りてた童話を読んでたとこだけど」
「……ふーん……」
思わせぶりな一言の後ふみえちゃんは、とある噂話を語りだします。
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意中の子の大事にしている本にはね、魔法が宿るの。
その魔法の力と本の持ち主の気持ちは気付かずに直結してるらしいのよ。
それでね。どんな紙切れでもいい。この場合は「しおり」がいいわ。
自分の名前を書いて、星空に向かって願う事で自分の分身が出来上がるの。
そこで、本の魔法の力に自分の分身を取り込ませる事で、持ち主の気持ちに貴方が存在する。
つまり、意中の子と両想いになれるっておまじないよ。
簡単に言えばその本に分身である「しおり」をはさんでおけばいいって事。
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ガキくせぇ。としはる君は鼻で笑いました。
よりにもよって女の子間で流行りそうな「おまじない」を教授されるなんて。
でもなぜ? ふみえがそんな事を自分に話してくるのだろうか。
普段は自分からは滅多に雑談なんて話してこないようなふみえが積極的なのも意外だ。
尋ねてみても「さあね」と受け流されてしまうだけです。
としはる君は幼馴染ゆえの世間話に付き合わされただけだと肩をすくめました。
電話の後、自分の部屋の窓から見える星空はいつもより一段と綺麗に輝いていたそうです。
作品名:ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─ 作家名:フェたま