ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─
お別れと告白
時はさらに流れ、2学年に進級しようという頃。事態は急転する事になります。
「大変に急な話かもしれませんが、星空みゆきさんはお父さんの都合で来週で転校になります」
放課後のホームルームで担任の横に立たされ、みゆきちゃんは申し訳無さそうに床を見つめ続けました。
クラス一同はショックを隠せません。
みゆきちゃんはクラスで積極的に表立つような子ではありませんでしたが、
どこか端に居てくれるだけでも、なぜか朗らかにしてくれるような存在でした。
なにか行動を起こせば、なにかしでかしてくれると、失礼にも「期待の星空」なんて噂されたり。
本当に面白い子で、不思議と幸せになれる笑顔が誰にとっても心のオアシスでもありました。
彼女にもとくに仲のいい友人もいるけれど、誰とでも接して優しくしてくれるし、
優しく返してあげたくなるような、本当に誰からも愛されていた天使のような子でした。
まだ満喫しきってない中学で知り合った友達、小学からの友達ももちろん。
今まで迷惑をかけっぱなしで本当にごめんなさい。残り数日ですが、これまで通りの学校生活で
これまで以上の思い出を作りたいと思ってますので、よろしくお願いします。
涙混じりの噛みまくりの挨拶を今までの付き合いから聞き取ったクラスメート達。
休み時間には、みゆきちゃんの席が囲まれる連日が続き、時間を惜しむように過ごしました。
としはる君は、クラスメートにご加護されて崇められるようなみゆきちゃんと話す機会もありません。
学校から開放されたとしても、帰り道は方向も違う。たまには別方向から付いて帰るのもいい。
そう考えていたとしはる君でしたが、いったい何を話せばいいのかわからずに実行には及びません。
でもこの数日、帰宅して自室のベッドに身を投じると毎回後悔しているのです。
明日こそは、明日こそは、としている内にみゆきちゃんとの最終日を迎えられました。
本来なら普通授業なはずなところを割いたイレギュラーなお別れ会がささやかに開催。
始終、笑顔を絶やさまいと努力するみゆきちゃんに花束、色紙等の追い討ち攻撃でついに崩れました。
寂しい気持ちと、嬉しい気持ちが相成って、普段ありえないぐらいの液を流す顔の隠し場所を求め、
親友のふみえちゃんが抱擁してくれたけど、液は倍増しと泣きっ面に蜂状態みたいです。
としはる君にとっても親友といえる間柄なのに、
最後となるこういう日に限ってみゆきちゃんと触れ合う事もないまま時間が流れてしまいます。
それこそ、今までの関係が何もなかったような第三者的な立ち位置で成り行きを見守るだけの。
みゆきちゃんが落ち着いた頃、本当に最後のホームルーム。
「これが星空さんへの最後の挨拶です。誰か星空さんに言い残した人はいませんかー?」
担任からの惜しむ意見の受付。としはる君は「はっ」としました。
ここ数日みゆきちゃんとの機会が無かっただけに、まさかの一隅のチャンスなのではないでしょうか?
ですが、あれだけ悩んで考えたのに何を話したいかまとまりつかなかったのです。
何を言えばいい? とりあえず手を挙げておくか? その後どうする? いったい何を伝えるべきか?
としはる君は永遠ともいえる一瞬の内に、考えを巡らせます。
みゆきちゃんに伝えたい事…本当は心の奥底でわかりきっているはずなのです。
ただ、勇気が出ない。
ピーターパンの主役の立候補の時の思い切りさとはまた違うのです。
しかも、今はクラスメート全員を前にしながら言えるような話じゃない…!
走馬灯のようなみゆきちゃんの笑顔の数々に押しつぶされかけるとしはる君は…。
永遠と思えた一瞬は一瞬に過ぎない。
担任が受付を締め切ろうとした時、としはる君は決心がつきました。
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「…はい。言いたい事があります…」
挙手した彼に「どうぞ」と担任に手の平ざしされると、彼はついに告白します。
「星空みゆきさん、あなたの事が好きでした」
瞬間、校舎2階の廊下全体でけたたましい冷やかしの口笛とブーイングの嵐が響きました。
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" 岩 澤 し げ る 君 の " 告白を前に、
みゆきちゃんは顔を赤らめて金魚のように口をパクパクさせるしかないのでした。
作品名:ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─ 作家名:フェたま