こらぼでほすと ニート4
先にアレルヤとティエリアが客間で寝てから、トダカが戻って来た。風呂に入り晩酌をするのは、いつものことだ。ニールはウーロン茶で相手をしてくれるから、トダカにとっても娘さんが滞在してくれるのは楽しい。今日の出来事をニールが話すと、トダカも頬を緩めた。
「まあ、世界遺産と一口に言っても都市部にあるものも多いからね。そういう場所ならリンク切れは起こらないだろう。」
「特区にも、いくつかあるみたいだし、最初はそういうとこからでもいいんじゃないかと思います。俺の故郷にも、いくつかありますし。」
「世界中にあるからね。私も行ったことがないな。娘さんの身体が落ち着いたら、一緒に行ってみよう。特区の西でもオーヴでも。そういうところなら案内してあげられる。」
「いいですね。そういや、シンとレイは訪ねたことがあるって言ってたから、あいつらも案内してくれるでしょう。」
「あの子たちが行ったのは、景観の綺麗なところが多かったんだ。MSで行かないと行けないようなとこだ。娘さんには、ちょっと無理だね。」
シンとレイが旅をしたのは、辺境地が多かった。古い遺跡やら大きな滝、大砂漠、天空の湖なんていう、かなり辺鄙な場所を巡ってきたそうだ。ニールもレイから、その話は聞いていた。
「MSか・・・・耐Gの訓練しないと吐きますね。」
「あははは・・・私も、もう無理だよ。もうちょっと穏便に行ける場所にしよう。オーヴに、とても美しい珊瑚礁があるんだ。世界遺産ではないんだが、あれは是非、娘さんに見せてあげたい。」
魚の楽園でね、覗くと大きな魚がたくさん泳いでいるんだ、と、トダカは説明をしてくれた。身体さえ治れば、どこへだって行ける。もう少しの時間、我慢しなさい、と、宥めている。もう五年以上、ニールは寺から周囲十キロ圏内から出ていないし、単独行動なんて、ほとんどしていない身だ。
「そういや、俺、ほとんど動いてませんね。」
「もう少しだ。刹那君のダブルオーが完成すれば身体は治る。治ったら、どこへでも行ける。私も娘さんと旅行してみたいんで楽しみにしてるんだ。」
トダカにとってニールは大切な自分の子供だ。元気になって欲しいと願っている。ニールにとっても、すっかりお父さんの気分だから、そう言ってくれると嬉しい。
「俺もトダカさんと旅行してみたい。・・・・できたら、うちのやつらも連れて行きたいな。」
「そうだね。でも、そうなるとキラ様やラクス様もついてくるだけろうから、大騒ぎになりそうだ。たぶん、うちの親衛隊も来るだろうしね。」
そうなってくると大所帯の移動になるから、のんびりした旅行とは程遠いことになりそうだ。トダカの親衛隊も総勢だと五十人は下らないし、『吉祥富貴』のスタッフだって総出になれば、相当の数になる。
「まあ、何度でも行けばいいさ。・・・・くくくくく・・・お父さんと二人でこっそり温泉でも行こう。そういうのも予定しておいてくれ。」
「あははは・・・まあ、それは難しいでしょう。親衛隊のみなさんが大人しく見逃してくれるとは思えませんよ? お父さん。それに、シンやレイだって。」
「そうなんだ。どうやって嗅ぎつけてくるんだか、うちのは現れるんだよ。」
トダカが、こっそりとオーヴに戻る時でも、きっちり現地に親衛隊が待っていて、結局、大所帯で移動することになる。唐突にチケットをとって民間の飛行機に搭乗してもバレるというのだから、日頃からトダカの動きはチェックされているのだろう。
「・・・・本当に、よく乗り切ったね、娘さん。」
「みんなのお陰です。独りだったら、どうにもなりませんでした。」
しみじみと、ふたりして口にする。刹那たちを地上で見守るだけの戦いというのは、正直おかしくなりそうだった。だが、なんだかんだと、『吉祥富貴』の面々が入れ替わりしてニールの傍に居てくれた。それがなかったら、とてもマトモな状態でいられなかった。
「私は信じてたよ? ちゃんとNGワードも言わずに、娘さんは戦い抜いてくれた。」
トダカが、それだけは絶対に言わないでくれ、と、頼んだ言葉がある。さすがに、そのNGワードを浴びせられたら、トダカでも凹むものだったからだ。
「『お父さん大嫌い』は言う暇もなかったが正解ですね。トダカさんが一番甘やかしてたと思うんですが? 」
「そうかな。私としては、完全に凹んでしまったら性根を叩き直す台詞も用意してたんだ。でも、使わずに済んだ。」
「トダカさんに罵声を浴びせられたら、俺、凹むどころかダウンしてるんじゃないかなあ。」
「現役の頃は、うちのには、かなり浴びせていたんだがね。アマギも、かなり怒鳴った。」
「でも、それ、心配したり気にかかったからでしょ? みなさんも、それが判ってるから親衛隊にいらっしゃるんだと思います。叱ってもらうのは嬉しいことだって、俺は思います。」
「きみの亭主は、現役バリバリで怒鳴っているものね。」
「毎日、怒鳴ってるから、あんまり気にならなくなっちまって・・・でも、本気の時は怖いし嬉しいもんですよ。」
「惚気られると、お父さん、三蔵さんにムカつくんだけど? 」
「惚気てません。お湯割りにしますか? それとも、新しいのを開けましょうか? 」
「もう一本開けよう。娘さんはお湯割りで付き合いなさい。飲んだら温かく寝られるだろ? 」
まだ涼しい季節でもないが、身体を冷やさないように最後はお湯割りで締め括るのが、定番だ。適当にアテを摘みつつ、トダカは冷酒を飲んでいる。ようやく先が見えてきた。だから、トダカも次の予定を考えることができるようになった。
翌日、トダカの運転で寺へ戻った。子猫たちは、今夜の便で特区を離れる。せっかくの貴重な休みだから、どこかへ行って来れば、どうだ? と、親猫は勧めたのだが、どっちの子猫も拒否して寺でダラダラしている。
そして、親猫のほうは寺でいつもの家事に勤しんでいたりする。亭主のほうも、機嫌が良いので、なんだかんだと構っていたりするのだが、これがイチャイチャにしか見えない。
「それで? 」
「夜に空港まで送っていくだけで、これといっては何もないです。あんたのバイトが終わる頃には、俺も戻ってますよ。なんかリクエストありますか? 」
「いつ、作る暇があるんだ? 」
「今から作れます。まあ、あんま凝ったモノはリクエストされても無理ですが。どうせ、出汁巻きとか山芋の短冊とかでしょ? 」
亭主がリクエストしそうなものは、女房も心得たものだ。戻ってくるとリクエストされるものは、そういうものが多いからだ。
「じゃあ、こんにゃくと豆腐の田楽。」
「豆腐とこんにゃくか・・・ちょいと買ってきます。」
「そんなもん、ちびどもに行かせろ。」
アレルヤとティエリアは、ふたりして境内で草むしりをしている。子猫たちは、寺では時間があれば草むしりをしているのが常だ。働かざるもの食うべからずなので、そういうことになっている。
「俺も行って来ます。留守番しててください。」
「ああ? 亭主の相手は放棄か? 」
「ティエリアたちが帰ったら、たっぷり付き合いますよ。どうせ、あんたとは毎日一緒でしょ? こういう時は、あっちが優先。」
「ちっっ、しょうがねぇーな。」
「まあ、世界遺産と一口に言っても都市部にあるものも多いからね。そういう場所ならリンク切れは起こらないだろう。」
「特区にも、いくつかあるみたいだし、最初はそういうとこからでもいいんじゃないかと思います。俺の故郷にも、いくつかありますし。」
「世界中にあるからね。私も行ったことがないな。娘さんの身体が落ち着いたら、一緒に行ってみよう。特区の西でもオーヴでも。そういうところなら案内してあげられる。」
「いいですね。そういや、シンとレイは訪ねたことがあるって言ってたから、あいつらも案内してくれるでしょう。」
「あの子たちが行ったのは、景観の綺麗なところが多かったんだ。MSで行かないと行けないようなとこだ。娘さんには、ちょっと無理だね。」
シンとレイが旅をしたのは、辺境地が多かった。古い遺跡やら大きな滝、大砂漠、天空の湖なんていう、かなり辺鄙な場所を巡ってきたそうだ。ニールもレイから、その話は聞いていた。
「MSか・・・・耐Gの訓練しないと吐きますね。」
「あははは・・・私も、もう無理だよ。もうちょっと穏便に行ける場所にしよう。オーヴに、とても美しい珊瑚礁があるんだ。世界遺産ではないんだが、あれは是非、娘さんに見せてあげたい。」
魚の楽園でね、覗くと大きな魚がたくさん泳いでいるんだ、と、トダカは説明をしてくれた。身体さえ治れば、どこへだって行ける。もう少しの時間、我慢しなさい、と、宥めている。もう五年以上、ニールは寺から周囲十キロ圏内から出ていないし、単独行動なんて、ほとんどしていない身だ。
「そういや、俺、ほとんど動いてませんね。」
「もう少しだ。刹那君のダブルオーが完成すれば身体は治る。治ったら、どこへでも行ける。私も娘さんと旅行してみたいんで楽しみにしてるんだ。」
トダカにとってニールは大切な自分の子供だ。元気になって欲しいと願っている。ニールにとっても、すっかりお父さんの気分だから、そう言ってくれると嬉しい。
「俺もトダカさんと旅行してみたい。・・・・できたら、うちのやつらも連れて行きたいな。」
「そうだね。でも、そうなるとキラ様やラクス様もついてくるだけろうから、大騒ぎになりそうだ。たぶん、うちの親衛隊も来るだろうしね。」
そうなってくると大所帯の移動になるから、のんびりした旅行とは程遠いことになりそうだ。トダカの親衛隊も総勢だと五十人は下らないし、『吉祥富貴』のスタッフだって総出になれば、相当の数になる。
「まあ、何度でも行けばいいさ。・・・・くくくくく・・・お父さんと二人でこっそり温泉でも行こう。そういうのも予定しておいてくれ。」
「あははは・・・まあ、それは難しいでしょう。親衛隊のみなさんが大人しく見逃してくれるとは思えませんよ? お父さん。それに、シンやレイだって。」
「そうなんだ。どうやって嗅ぎつけてくるんだか、うちのは現れるんだよ。」
トダカが、こっそりとオーヴに戻る時でも、きっちり現地に親衛隊が待っていて、結局、大所帯で移動することになる。唐突にチケットをとって民間の飛行機に搭乗してもバレるというのだから、日頃からトダカの動きはチェックされているのだろう。
「・・・・本当に、よく乗り切ったね、娘さん。」
「みんなのお陰です。独りだったら、どうにもなりませんでした。」
しみじみと、ふたりして口にする。刹那たちを地上で見守るだけの戦いというのは、正直おかしくなりそうだった。だが、なんだかんだと、『吉祥富貴』の面々が入れ替わりしてニールの傍に居てくれた。それがなかったら、とてもマトモな状態でいられなかった。
「私は信じてたよ? ちゃんとNGワードも言わずに、娘さんは戦い抜いてくれた。」
トダカが、それだけは絶対に言わないでくれ、と、頼んだ言葉がある。さすがに、そのNGワードを浴びせられたら、トダカでも凹むものだったからだ。
「『お父さん大嫌い』は言う暇もなかったが正解ですね。トダカさんが一番甘やかしてたと思うんですが? 」
「そうかな。私としては、完全に凹んでしまったら性根を叩き直す台詞も用意してたんだ。でも、使わずに済んだ。」
「トダカさんに罵声を浴びせられたら、俺、凹むどころかダウンしてるんじゃないかなあ。」
「現役の頃は、うちのには、かなり浴びせていたんだがね。アマギも、かなり怒鳴った。」
「でも、それ、心配したり気にかかったからでしょ? みなさんも、それが判ってるから親衛隊にいらっしゃるんだと思います。叱ってもらうのは嬉しいことだって、俺は思います。」
「きみの亭主は、現役バリバリで怒鳴っているものね。」
「毎日、怒鳴ってるから、あんまり気にならなくなっちまって・・・でも、本気の時は怖いし嬉しいもんですよ。」
「惚気られると、お父さん、三蔵さんにムカつくんだけど? 」
「惚気てません。お湯割りにしますか? それとも、新しいのを開けましょうか? 」
「もう一本開けよう。娘さんはお湯割りで付き合いなさい。飲んだら温かく寝られるだろ? 」
まだ涼しい季節でもないが、身体を冷やさないように最後はお湯割りで締め括るのが、定番だ。適当にアテを摘みつつ、トダカは冷酒を飲んでいる。ようやく先が見えてきた。だから、トダカも次の予定を考えることができるようになった。
翌日、トダカの運転で寺へ戻った。子猫たちは、今夜の便で特区を離れる。せっかくの貴重な休みだから、どこかへ行って来れば、どうだ? と、親猫は勧めたのだが、どっちの子猫も拒否して寺でダラダラしている。
そして、親猫のほうは寺でいつもの家事に勤しんでいたりする。亭主のほうも、機嫌が良いので、なんだかんだと構っていたりするのだが、これがイチャイチャにしか見えない。
「それで? 」
「夜に空港まで送っていくだけで、これといっては何もないです。あんたのバイトが終わる頃には、俺も戻ってますよ。なんかリクエストありますか? 」
「いつ、作る暇があるんだ? 」
「今から作れます。まあ、あんま凝ったモノはリクエストされても無理ですが。どうせ、出汁巻きとか山芋の短冊とかでしょ? 」
亭主がリクエストしそうなものは、女房も心得たものだ。戻ってくるとリクエストされるものは、そういうものが多いからだ。
「じゃあ、こんにゃくと豆腐の田楽。」
「豆腐とこんにゃくか・・・ちょいと買ってきます。」
「そんなもん、ちびどもに行かせろ。」
アレルヤとティエリアは、ふたりして境内で草むしりをしている。子猫たちは、寺では時間があれば草むしりをしているのが常だ。働かざるもの食うべからずなので、そういうことになっている。
「俺も行って来ます。留守番しててください。」
「ああ? 亭主の相手は放棄か? 」
「ティエリアたちが帰ったら、たっぷり付き合いますよ。どうせ、あんたとは毎日一緒でしょ? こういう時は、あっちが優先。」
「ちっっ、しょうがねぇーな。」
作品名:こらぼでほすと ニート4 作家名:篠義