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こらぼでほすと ニート5

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カフェで適当に時間を潰して、送迎デッキに上がった。深夜便ともなると、デッキにも人影はない。あれだな、と、ハイネがエンジン音が聞こえる機体を指し示した。ふらりと、それが見える場所まで移動する。右腕にはリジェネがへばりついているが、あまり気にしていない。リジェネのほうは、ハイネからくっついていろ、と、言われたからそうしているだけだ。
 ゆっくりと飛行機はタキシングロードを進んで行く。チカチカと管制灯が点滅し、機体を誘導している。まるで光の川のようで綺麗な光景だ。滑走路に到達すると、飛行機は停止してエンジン音が甲高くなる。そして、疾走して浮き上がった。夜ともなると上昇していく機体は、すぐに追えなくなる。
「帰ろうぜ。」
 ハイネが声をかけると、「うん。」 と、素っ気無い声がしてニールも動き出す。送迎デッキから明るい施設内に戻って、リジェネはぎょっとした。泣いてはいないが、ニールは寂しそうな顔をしていたからだ。
「どうして? 」
「ん? 」
「いつも離れてるのに、そんな顔するの? 」
 ここ数年のティエリアの動向は掴んでいる。ティエリアは一年に二度ばかり地上に降下していたが、会っていたのは、その時だけだ。
「離れてるからだよ。また、しばらく逢えないと思うと寂しいんだ。」
「通信すれば、逢えるのに? 」
「それは、実際に逢ったとは言わないし、俺は連絡はできないからさ。」
「僕が繋いであげる。」
「いや、いいんだ。ありがとさん、リジェネ。」
 リジェネには、よく意味がわからない。確かにリジェネもティエリアとは何年も離れていたが、それが寂しいと思ったことはない。二つでひとつのイノベイドだから、リンクすればわかるからだ。



 坊主たちが寺に戻ったら、紫猫もどきが、ちょこんと居間に座っていた。これはなんじゃ? と、悟空が首を傾げる。
「ティエリアじゃねぇーよな? 」
 なんとなく気配は違う。殺気はないが、好意的とも思えない。でも、顔はそっくりさんだ。坊主は容赦なく、懐でマグナムの撃鉄を上げている。
「誰? 」
「リジェネ・レジェッタ。きみが悟空? そして、そっちが三蔵? 」
 その段階で、坊主が蹴りを見舞いつつマグナムを構える。いきなり、やられた紫猫もどきのほうは転がった。
「何の用だ? 」
 敬称がついていない段階でキレているのが大人気ない態度だが、まあ、坊主はそういう人なので気にしてはいけない。
「痛い、痛いっっ。何するんだよっっ。」
「てめぇーこそ、人んちで居座って、何様だっっっ。」
「さんぞー、殺すのは後だ。とりあえず、キラに連絡してみようぜ。こいつ、弱っちぃみたいだ。」
 キラの関係者だろうか、と、悟空が携帯端末を取り出していたら、奥から寺の女房が廊下を走ってきた。怒声が響いていたらしい。手にマグナムの坊主と転がっているリジェネで状況は分かり易い。
「待って待って、三蔵さんっっ。この子はティエリアの双子の片割れです。」
「はあ? ちびは帰ったんじゃねぇーのか? 」
「入れ替わりに、うちに遊びに来たんです。」
「でも、ママ。それなら、こいつ、刹那の敵じゃね? 」
「いや、そんなことはない。ティエリアとリジェネでヴェーダを管理しているんだ。」
 ニールも、あまり戦闘時のことは聞いていないが、アレルヤからの説明を聞くと、途中からは共闘していたらしい。そこいらから説明して寺に滞在することになったと話したら、坊主はマグナムを懐に納めた。悟空のほうも、なぁーんだ、と、卓袱台の前に座る。
「それならいいや。ママ、なんかある? 俺、ちょっと腹減ってるんだ。」
「うどんぐらいか? それともメシモノか? 」
「スパゲティーとかがいい。ミートで。」
「それなら、すぐに出来る。あんたは晩酌しますよね? 」
「おう、その前に風呂は? 」
「空いてますよ。・・・・それで滞在させていいですか? 」
「好きにしろ。ただし、敬称ぐらいつけさせろ。」
 ティエリアも敬称はつけていないのだが、慣れている相手はスルーだ。いきなり、呼び捨てにされたから坊主は叱る。別に、一匹や二匹、猫が増えても三蔵には、なんの問題もない。さっさと外出用の着物を脱ぐと風呂に消えた。
「ママ、ハイネは? アッシーに行っただろ? 」
「ハイネは、用事を思い出したって店へ行ったよ。たぶん、戻って来るとは思うんだけど・・・・」
 キラにイノベイドの報告のため、ハイネのほうは店に戻った。坊主たちとは入れ替わりになったらしい。



 さて、こちら、『吉祥富貴』では、そのハイネが閉店後の後始末をしていたアスランとキラを掴まえて、リジェネについての報告をしていた。携帯端末でもよかったが、店のほうに何人か残っているだろうから、そちらで報告したほうが手っ取り早いと思ってのことだ。
「リジェネ・レジェッタ? 」
 報告したら、アスランもキラも驚いた顔だ。残っていた鷹も虎も、はい? と首を傾げる。ニールとの接点など皆無な相手だし、元は敵でもあった相手だ。何かしら企んでいるのなら、排除の方向で動かなければならない。
「そういうもんでもないらしい。アレルヤが言うには、散々にヴェーダで話していたからママニャンに会いたくなって降りて来たんだと。」
「物見遊山ってことか? 」
「まあ、そんなとこだろう。で、ママニャンは紫猫もどきでも世話できれば落ちこまさなくて済みそうなんだが、キラ、うちのマザーとかラボのセキュリティーの強化はしてくれ。あいつが、ちょこまかと動くとしたら、そこいらの奇襲に違いない。」
 用心するなら、そこいらのシステムのセキュリティーレベルは上げておかなくてはならない。相手は電脳世界を自由に飛び廻れる。
「それより、ママは大丈夫なの? 漢方薬治療して、あんまり療養してないのに。」
 いつもなら、トダカが十日か二週間は里帰りと称して、トダカ家で療養させる。今回は、ティエリアたちが帰ってきて寺へ滞在させるために早めに戻ってしまった。体調は万全とは言い難いし、あまり体力を使うことはしていただきたくないのが、キラの考えだ。
「そこいらは、俺と悟空で牽制しておく。」
「トダカさんにも説明しておいたほうがいいな。キラ、これからラボのほうへ行こう。何かしら仕掛けてくるなら早いはずだ。」
「うん、セキュリティーレベルだけは上げておこう。ハイネ、明日、僕らもお寺に顔を出すってママに伝えて。」
 キラにしても、リジェネは初対面だ。ヴェーダを掌握している相手ではあるが、ティエリアほどの信頼はない。その部分もあって、ティエリアとヴェーダとのリンクについて打ち合わせをしていた。ティエリアしか、『吉祥富貴』のマザーにアクセスできないように考えていたからだ。もし、そういう心配がないなら、もう少しシステムを組むのは簡単になる。まあ、いきなり信頼関係なんてものは無理だから、とりあえずリジェネ単体での悪戯は阻止する方向だ。
「了解、キラ。アスラン、スタッフにリジェネが来てることはメールで廻しておいてくれ。」
「そっちは引き受けた。ハイネ、ママニールのほうのフォローは頼む。シンとレイが、今のところ、アカデミーの初年度オリエンテーションで休んでいるんだ。」
作品名:こらぼでほすと ニート5 作家名:篠義