Blue
玄関前に居た怪しい男は、
俺を見るなり顔を歪め泣き出した。
もう少しだった。
もう少しで伝う涙に触れていた。
一瞬でかけめぐった夢の映像は、
記憶を残すことなく、消えていった。
悪ぃ、と言って自分の手で拭われた涙。
行き場を失ったような俺の手は誤魔化すように玄関に向かった。
入ってと促せば、大人しく言うことを聞いてくれた。
すると後ろから笑い声がした。
「・・・・なんですか、」
「変わらねぇなって・・」
「・・・はい?」
快斗は制服から着替えるといって2階へあがった。
適当に服を手に取り、心を冷静にして考える。
これは夢の続きか、現実なのかと・・
夢の中で俺を『KID』と呼んで、泣いていたのは確かにあの男。
そして先ほどの図書館で見た本に出てくるヴァンパイアと瓜二つな男。
これは一体どういうことなんだろうか。
頬をつねってみても確かに痛い。
夢じゃない。
じゃあ何なんだ?
こんなに答えを出せないことは初めてのことだ。
でも・・・・なんで・・
なんで‥‥懐かしいんだろう。
あまり時間もかけていられないので、
そろりそろりと部屋を出て階段の所から男をのぞき見る。
男はリビングに飾ってあった写真を眺めていた。
もしかして両親のどちらかの知り合いだったのだろうか、と思い至る。
だが、そんな予想は簡単に壊された。
「・・・両親が居るのか?」
「・・ぇ・・・・あっ・・はい。」
「・・・・・良かったな。」
「・・・・へ?・・」
「それと、言葉くずしていいから。」
「・・・わかった。」
「なぁ俺のこと・・怒ってるか?」
「・・・ぇ?」
何を言っているのだろう。
まるで分からない。
何を怒る?
俺とあんたの関係は何?
「・・・・あんた誰なんだ?」
「・・・っ・・!!」
「俺・・悪いけど、あんたのこと知らない。
会ったことあるのかもしれないけど、俺は覚えてない。ごめん。」
「・・・いや、・・そうだよな。」
「・・・・?」
「俺とお前は初対面だ。」
「・・・へ?」
「頼みがあるんだ。」
「・・・・・。」
男の頼みは簡単だった。
少しの間、ここに泊めてやること。
そんなのお安い御用だと、
俺は何も考えずにそれを承諾した。
すると男はまた笑った。
『変わってないな』って言って・・・・・