Blue
名前を教えてくれた。
名前はシンイチ、漢字は新一。
その他のことは何も教えてくれない。
年齢も何処から来たのかも、俺との関係も。
ここに泊めてと言った理由もよく分からない。
朝は起きないし、昼は俺は学校だし、
でも俺が帰ってきてもまだ寝てるから・・ずっと寝てるんだろな。
夕方は俺が夕飯の準備をするのを見てる。
食事の時はずっと俺の話を聞いてる。
寝る前は俺のマジックの練習を見てる。
そう、聞いてるか見てるかなんだ。
こんなものを望んでいるんだろうか・・・。
「なぁ、新一・・まぢで何しに来たの?」
「KI・・快斗に会いに。」
そして何より気になるのが、
新一はしょっちゅう俺のことをKIDと呼ぼうとする。
「またKIDって言おうとしたでしょ、いい加減教えてよ。」
「嫌だね。」
そこでハタと思い出す。
今日はいいものを持ってきてあるのだ。
それは図書館で以前に見つけた本。
新一にそっくりなヴァンパイアが登場して、KIDの衣装を身に纏っている。
快斗はにやにやしながら取り出し新一に見せ付けた。
たとえ関係なくてもいい、こんなにそっくりなイラストは普通に面白いだろうと。
「これ、見てみろよ。」
「・・・何?」
「図書館で見つけた本。面白いものが載ってるぜ。」
「・・・・・kaito・・?」
「そう、俺と同じ名前。凄い偶然だよな。」
「・・・っ・・・!!」
ページを1枚、2枚とめくるうち、
新一の表情はみるみるうちに変わっていった。
「・・し・・新一・・?」
「・・・・っ・・・」
「新一・・・・」
新一は泣きながらその本を読み続けた。
快斗はそれ以上声をかけられず、
読み続ける新一をただただ見つめていた。
しばらくして、
パタンと本が閉じられた音がした。
それを確認した快斗はそっと席を立ち、新一の前にティッシュを置いた。
「・・・使って。」
「さんきゅ。」
「あの・・さ、あんまり泣くなよな。」
「・・・快斗?」
「なんか・・嫌なんだよ。
新一に泣かれるのは・・・・うん、嫌だ。」
「・・・分かった。泣かねぇよ。」
「・・・・・ありがとう。」
新一は大切そうに本をギュッと抱きしめた。
その姿にどうしてだか俺は恥ずかしくなって目を逸らした。
なんで・・なんだろう。
気づけば、夜は更けていて。
新一は貸りている快斗の部屋へ向かった。
快斗は風呂から上がり、
そのまま2階へあがると、自分の部屋のドアが少し開いていた。
その隙間からはまだ光がもれている。
まだ起きてるのかよ、と近づいていけば、中からは新一の声がした。
携帯電話で誰かと話しているのだろうか。
それならば、彼が何者か分かるかもしれないと、
足音を忍ばせ、快斗は聞き耳をたてた。
KID・・・・・・
(・・・やっぱり、新一はKIDと何か関係があるんだ。)
KID・・俺は生きたよ・・
お前がまた会えるって・・絶対会えるからって・・
お前がそう言ったから・・
(・・KIDに・・・会う?・・)
こんな本残しやがって・・・・
・・・お前に言いたいことがありすぎる・・
(・・・一体・・どういう事なんだ・・・・?)
もっと何か聞き出せないかと、
ドアに近づいたのだが、それがいけなかったんだろう。
「入れよ快斗。」
「・・・・・・っ・・・!!!???」
突然、名前を呼ばれた。
隙間からのぞき見れば、新一はまっすぐにこちらを見ていた。
観念して、部屋に入れば苦笑された。