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生まれ変わってもきっと・・・(後編)

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はっ。と言う返事と共に彼女の足元に靴が出されメイドが履かせてくれた。そのまま手を取られ歩いて執務室を出る。振り返ると、資料を手に背もたれに寄り掛かり脚を組むブラッドと、少し前屈みで膝と膝の間で両手の指を組むペーターが見え、そこで扉が閉まった。
(私って、もしかして人質!? ペーターに迷惑掛けてるのかしら。)
ブラッドの意味不明な言動は、いかにもペーターに見せ付ける為にやっているとしか考えられない。今の交渉に何らかの支障が生じてはいないのだろうか。気になる。

「ねえ、ペーターはよく来るの?」

顔無しのメイドに聞くと、初めてではないと思うが殆ど無いと言う事だった。ただ今回の交渉は以前から決まっていたらしく、急に出向いて来た自分とは無関係だと思いたい。




メイドが案内してくれたのはダイニングだった。

「おっ! 約束通り来てくれたんだな。ほら、人参スティック食べるか?」

「ヒヨコうさぎは黙ってて。お姉さん、こっちこっち~」
「馬鹿ウサギの隣は駄目だよ! 馬鹿が染っちゃうよ。」

屋敷に来た時は不在だったエリオットとディーとダムがお茶を飲んでいる。アリスは双子達の勧めるままに彼らに挟まれた席に座る。

「何時戻ったの?」

「ちょっと前だよね。兄弟。」
「うん。見回りって楽しいね。兄弟。」
「お前ら、斧振り回してただけじゃねーか!」

見回りとは何をするのか良く知らないが、双子たちが斧を振り回して楽しいと言う辺りから、血の臭いが漂って来そうな事だと思われる。あまり突っ込んで聞かない方がいいことなのだろう。それとなく話題を変える。

「そう言えば、ペーターの護衛だと思うけど、凄い人数を従えて来るのね。ブラッドの部屋の前にも沢山兵士が居たわ。」

「僕たち数えたんだよ! 門の所が二十人で、玄関が十人だった。数だけ揃えたって、僕達がちょっと斧を振り回せば簡単に殺られちゃうのにさ。無駄だよね。」
「そうだよね。あいつら、ただ立ってるだけで意味無いよね。ねぇお姉さん、ボスの部屋の前って何人くらい居たの?」

「う~ん。数えたわけじゃないけど、十人とか二十人くらい?」

「本当、面倒だよな~。城の奴ら、あんな大勢で来るなっての。権威だか何だかしらねーけど鬱陶しいぜ。ちょっと人数減らしてくるか?」

エリオットは人参スティックをかじりながら余計なことを言い出す。途端に色めき立つディーとダム。

「え、いいの?殺っちゃおうよ!!」
「馬鹿ウサギ、偶には気が利いたこと言うじゃん!」

「ちょっと、エリオット!! 貴方達、駄目だからね!? 絶対、ぜったい駄目よっ!」

アリスは慌てて、双子達を制止する。無難な話題にしたつもりだったが、結局血生臭い話になってしまう。
僕達、ボスの部屋の前に居る兵士の数、数えてくるよと、双子はいそいそと出て行った。アリスは彼らの背中に、斧を置いて行きなさい!と叫んだが、聞こえただろうか。
それにしても、執務室の扉の両隣とその向かい側だけでなく、屋敷の玄関、外の門にも、幾人もの兵士が直立不動で待機しているらしい。三・四十人ではきかない数の兵士と幾人もの側近らしきお供を連れて交渉事に臨む。これが自分の知らないペーター=ホワイトのこの世界での顔なのだと、改めて思った。

気付くと、エリオットがにこにこといった表現が似つかわしい笑顔で此方を見ている。

「何よ、凄いご機嫌なのね。良い事でもあったの?」
「まぁね。あんたのこと、ブラッドに頼んどいたから、もう安心だぜ!」
「は?」

アリスは言葉の意味が解らず聞き返す。何を頼んでくれたのか知らないが、あの男と、安心という言葉は結び付かない様に思う。つい先刻も、意味不明な嫌がらせとも取れる事をされたばかりだ。

「私の何を頼んだって言うのよ。」

「だからさ、ゴーランドのおっさんの言ってた件だよ! あんた誰かに脅かされるとか、酷い目に遭わされそうなんだろ? 俺さ、この前あんたを送って行った時に、心配でさ、帰る振りして後尾けたんだぜ? そしたらあの宰相のヤローあんたが嫌がるのに手ぇ無理矢理握ったり、手にキスしてたろ! それでピーンと来たんだよ。」

何となくその先は聞かなくてもよさそうな気がしたが、目の前の男が話を止める気配は勿論無い。

「んで、帰ってからブラッドに提案したんだよ。俺達のアリスを守ろうぜ!って。そしたらさ、ブラッドったら笑えるんだ・・」

一人で思い出して笑っているエリオットを見て、溜め息が出た。その件なら、お陰様でほぼ解決したわよとも言えず、目の前のクッキーを一つ、口の中に放り込む。そうして彼の笑っている顔を見た。本当に無邪気に笑う男性だ。この男に殺されそうになったなんて思えない。初対面の、あの時の表情で、先刻の見回りと称する行為にも行っているのだろうか。
クッキーで渇き気味になった口の中を紅茶で潤す。

「ブラッドがさ、俺達結婚するのかなんて言うんだぜ。笑っちゃうよな~」
「熱っ!」

アリスは二口目の紅茶を飲み損ねた。俺達? それは目の前の男と自分か? その発想の飛躍は何処から来たのだろう。アリスは笑えなかった。

「ちょっと、その誤解はちゃんと解いてくれたのよね?」
「当たり前だろ~。俺は、アリスはファミリーの一員として大事なんだって、ちゃんと言ったぜ。」

胸を張るエリオットに、そもそもペーターは無関係だし、私はいつからファミリーの一員になったんだよと心の中で突っ込みを入れながら、先程の場面を回想する。
あれは、腹心の話を真に受けた為なのか?あの男の考えも行動も、まだ良くわからない。ただ、ペーターに喧嘩を売っていたか、何らかの精神的な圧力を掛けたのは間違いない。何か誤解されてもおかしくないような、そんな状況だった。ペーターの時計塔での言動が気になっているアリスは、それも重なって今回の交渉に響かなければ良いがと、部屋を出る時に見えた少し前屈みのペーターを思い浮かべた。

アリスは、もう一つ気になっていることを尋ねる。先程の様子では仲直りしたように見える双子のことだ。

「ディーとダムは仲直りしたみたいね。」
「いや、まだ喧嘩してるぜ。あんたが座ってる席、空いてただろ? それはあんたの為に空けたんじゃねえよ。あいつらが離れて座ってたんだ。」