Bizarre Morning
「自分らどこ行ってたんや」
緊張感とまだ状況が把握できてないのか、一斉に喋り始める。
「ちょ…、お前ら落ち着けよ」
驚いた双子が顔を見合わせた。
「珍しいですね、皆さんがそんなに慌ててるなんて」
「狐に鼻でも抓まれたのか?」
「それを言うなら、『狐につままれた』だろ」
「うるっせーな。つまりはそーいうことだろ?」
「全然違うよ」
呆れる弟に、ムキになる兄。普段の光景だ。そう思った途端に、いつもは聞こえていても聞き流している町の色んな音が急に聞こえ出す。通りの向こうで車が行きかう音。登校してきた生徒たちの喋り声。中庭を抜ける風に揺れる木々。噴水の水の音に朝の日差しで暖められた草と土の香り。安堵のあまり膝の力が抜けていきそうだ。
がさがさ、と茂みが鳴ったと思うと、クロが燐の身体を駆け上がって、燐の頭の上にいつものように体を落ち着ける。どうしたんだ?と問うようににゃぁん、と鳴いた。
「クロ…、どこ行ったのかと…」
「あ?コイツ?今日は朝からずっと一緒に居たぞ?」
勝呂、廉造、子猫丸の三人は、拍子抜けしたように顔を見合わせた。
「それやったら、あの猫は何やったんや…?」
呆然と呟く勝呂に、クロがきょとんとした顔をした。
完
作品名:Bizarre Morning 作家名:せんり