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こらぼでほすと ニート8

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 戦いに関する細かな事情は、ニールに知らせなくていい。今、人類が関心を寄せているのはイノベーターという存在だ。刹那しかいないから、万が一にでも刹那の正体を把握されてしまったら、実験材料として新設されていく連邦で研究されることになるだろう。そんなことになっては、困るからキラもティエリアもヴェーダの最深部のデータを隠そうとしているのだ。もし、ヴェーダが刹那の命じる通りにしか動かないとなれば、組織に所属しているのも危険な状態になる。そういう問題があるから、ニールには知らせていなかった。それに、イオリア・シュヘンベルグの壮大な計画は、まだ始まったばかりだ。人類がイノベーターに進化して遠い宇宙へと進出するという気の遠くなる時間がかかるもので、今現在生きている人間で、それを目にするものはいないだろうと考えられている。
「刹那は危険なんじゃないか? 」
「そこいらも考えて、キラとティエリアで打ち合わせをしてるんだ。」
「でも、ヴェーダの優先権が刹那にあるとしたらさ。」
「それは、今のところないと言っておくね、ママ。僕とティエリアがヴェーダそのものだから、刹那の命令に盲従することはない。」
 だからこその二個一だ。どちらもが納得しなければ、ヴェーダを自在に行使することはできない。もちろん、ティエリアは刹那を信頼しているから、ある程度の無茶は聞くだろうが、リジェネは、そんなつもりはないからだ。
「リジェネ、刹那が一人で重荷を背負うってことはないのか? 」
「それはない。刹那は組織のマイスターであって、組織の支配者ではないし、ヴェーダに対しても支配力はない。僕らと気長に付き合ってもらうことにはなると思うけど、一人でなんでもすることはないと思う。」
「・・・それならいい。」
「うん、安心して。僕らは暴走しても、どちらかが止めるだろうし、刹那がヴェーダを破壊することもできる。・・・・ごめん、ママ。この話はダメなんだね? 」
 リジェネもニールの顔色が青くなったから、これは禁句だったと気付いた。できるだけ先の大戦のことも、組織のことも話してはいけない、と、ティエリアに注意されていたことに抵触していたらしい。
「ダメに決まってるだろっっ。こいつ、ちびどもに関する心配事に敏感なんだよっっ。ママニャン、もう、この話は終わりだ。忘れろとは言わないが、これ以上は尋ねたりするな。」
「まあ、腑に落ちない点が、いくつか解消した。・・・・ハイネの役割も理解したよ。リジェネが余計な情報を俺に与えないために、監視してたんだな? 」
 なぜ、出勤もせずにへばりついているのかと思っていたら、そういうことだったらしい。じじいーずの過保護も、ここまでくると、ニールでも笑える。それを聞いただけで、ダウンすると思われているのが情けない。
「おまえ、自分が思ってる以上に精神的に弱ってるんだよ。だから、虎さんとトダカさんが心配して、俺をつけてるんだ。・・・・リジェネ、これ以上に先の大戦の話はしてくれるな。いいな? そうしないと、こいつ、寝込むぞ。」
 まだまだ、いろいろとイノベイドのやらかしたえげつない攻撃というのがある。それらを聞かされたら、ニールの神経は弱るばかりだ。
「了解、ハイネ。でね、ママ。僕とティエリアは家族になれると思う? 」
「元々、家族だろ? 俺と刹那だって、もっとキツイ関係だったし、俺とライルだって、この間、十数年ぶりに顔を合わせたぜ? それでも、やっぱり家族だとは思う。だから、お互いに歩み寄ればいいんじゃないか? 過去にあったことは水に流せないかもしれないが、お互いに受け止めるなり赦し合えばいいと思うよ。これから関係を築いていく上において、それを踏まえていればいいんじゃないかな。」
 ニールの言葉に、リジェネはふっと微笑んだ。最初から家族だから、とか血が繋がっているとかいうものでなくてもいいらしい。そう言って貰うと、リジェネも安堵する。
「俺、元々、ライルのことは切り捨てていたからな。今になって、顔を合わせられたことは嬉しいけど、かなり複雑でもあった。・・・・でもさ、結局、ライルの顔を見たら、そんなことは、どうでもよくてさ。やっぱ嬉しいと思ったんだよな。」
 刹那の嫁でなければ、もっと大喜びしていたかもしれない。闇社会に身を沈めてから、接触しないように心がけていた。ライルに迷惑がかかるだろうし、ライルからも棄てられたと思っていたからだ。だが、実際は、ライルはニールが生きていたことを喜んでくれたし、昔と同じように話をしてくれる。生まれて十数年の付き合いというのは、簡単に断ち切れるものではないんだな、と、感じたことだ。
「僕もね、ティエリアのことは知っていたし、リンクして少しティエリアの心にも接触してた。でも、実際に逢うのとは程遠いと思ったよ。ヴェーダで半年くらい一緒に過ごして、ティエリアと僕は同じ遺伝子情報で作られていても、どこかは違うんだって理解した。僕も、実際にティエリアと逢って話をしたら、やっぱり嬉しかった。」
「それならいいじゃないか。もっと話をすればいいんじゃないか? お互いに分かり合えるまでは時間がかかるだろうけど、楽しいとは思うぜ。あいつ、慣れるまではツッケンドンだからさ。」
「そうなんだ。僕は、いろいろと話しかけてるのに、ティエリアは、『五月蝿いっっ。』って一刀両断なんだもん。でも、確かに話したいことは話したほうがいいんだね、ママ。」
 自分の言葉を肯定されるのは嬉しい。これから、延々とヴェーダを二人で管理していく。だから、できるなら、お互いに信頼関係は欲しい。でも、その方法が、リジェネにはよくわからなくて困っていた。確かに、ティエリアとは、それほど親しいわけではない。慣れるまで時間をかければいいのかもしれない。時間だけは飽きるほどあるのだから。
作品名:こらぼでほすと ニート8 作家名:篠義