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まあ

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長い黒髪を頭のうしろで結っていて、まるで馬のしっぽのようだ。
そのしっぽを揺らして廊下を早足で歩いてきて、生真面目な表情で言う。
「銀時、今日がなんの日か知ってるか?」
「あ〜?」
銀時は縁側から庭に出ようとしていた足を止めた。
庭の木々の葉は昼過ぎの光を受けて活き活きと輝いている。この家の主である松陽の趣味が植樹であるため、庭には緑が多い。
銀時は襟元から手を入れて肩のあたりを掻きつつ、ほんの少しのあいだ考えた。
「知らねーな」
「おい、貴様、もう少し思い出そうと努力したらどうだ!?」
桂は怒りをあらわにして一歩つめよってきた。
なんでコイツはこんなに怒りっぽいんだろーなー、と銀時は思う。
松陽に拾われて一緒に暮らすようになって、松陽の塾の塾生である桂と知り合った。
そして、いつのまにか、勝手に友達認識されるようになった。
いい家のお坊ちゃんらしいのに、自分とは境遇がまるで違うのに、なぜ関わってくるのか、銀時にはさっぱりわからない。
「今日はな」
桂はえらそうに胸を張って続ける。
「俺の誕生日だ」
「あーそー」
素っ気なく返事すると、銀時は歩きだそうとした。
けれども。
「ちょっと待て!」
桂の鋭い声が飛んできた。
「なんだその反応は!?」
「だって、興味ねェもん」
「おめでとうと祝うのが人というものだろうが!」
「じゃあ、オメデトウ」
「心がこもってない!!」
「そんなモンこめてねーからな」
「俺は貴様の誕生日にはしっかり祝ってやったはずだ。甘い物好きの貴様に金平糖をやったはずだ」
「……」
自分の誕生日。
そんなもの、知らない。
聞かれたときに知らないと答えたら、松陽が勝手に決めたのが、塾生など周囲に誕生日と思われているだけだ。
なぜかそれを桂に知らせる気にはならないのだが。
「……なんかくれって言われても、俺はテメェがほしがるようなモン持ってねーぞ」
「大丈夫だ」
桂の顔に笑みが浮かんだ。
その笑みを見て、銀時はイヤな予感がした。
「俺はおまえから物をもらおうとは思っていない。その代わり、してほしい事があるんだ。いや、正確には、させてほしい事とい」
「断る!!!」
銀時は桂の言葉をぶった切って言った。
桂は眼を丸くした。
「俺は最後まで言ってないぞ。それなのに、なぜ断る?」
「テメェの眼が俺の頭を見ていて、その手がわさわさ不気味に動いてたら、最後まで聞かなくても、わかる」
銀時は不機嫌そのものの顔を桂に向ける。
「テメェ、俺の髪をもてあそびたいんだろ?」
「もてあそびたいのではない! さわりたいんだ! そのフワフワした髪を、さわって、なでて、少しもんだりしてみたいだけだ!」
「キモいんだよ! 絶対ェ、イヤだ。断る」
そう力強く言うと、銀時は足を動かした。
縁側から飛ぶような勢いで降り、草履を引っかけて、庭を走って逃げた。

けれども。
「……もう逃げられんぞ」
そう桂は低い声で告げた。その肩は揺れ、ハァハァと荒い息をしている。
今、神社の境内にいる。
逃げた先まで、桂が追ってきたのである。
銀時は地面に座りこんでいた。
さっき桂が言ったとおり、もう逃げられそうにない。
桂が距離を詰めてきた。
「年に一回だけだ。俺にその髪を思う存分さわらせてくれ……!」
正直、キモいとしか言いようがない。
しかし。
銀時のほうに向けられている顔は整っていて、少年というよりも美少女といった感じである。
こんなこと思いたくないのだが、自然に心に浮かんでくるものはしかたがない。
綺麗だ、と思う。
だいたい、なんで、コイツは俺にここまでこだわるんだ?
そう思う。
自分たちは生まれも育ちもまったく違う。もちろん、桂が上で、自分は下だ。
それなのに、なんで。
そう思った、けれど、深く考えたくもなかった。
だから。
「チッ、しょーがねーなー」
考えるのを断ち切って、銀時は言った。
直後、桂の顔がパッと輝いた。嬉しいのだろう。
その顔を見て、胸の中でなにかが動いた気がしたが、銀時はそれについても考えないようにした。








作品名:まあ 作家名:hujio