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ながさせつや
ながさせつや
novelistID. 1944
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2.16→3.26

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 濃く、甘ったるい黒檀色したチョコレートの熟れたにおい。まるく、うつくしく整えられたそれは、割り砕くと中からとろりとしたジェルみたいな液体が流れ出る。アルコール度数の高い液体をゆるく閉じ込めたそれは、街中を紅(あか)や金色に染める季節に、一等良い場所に出回るものだ。ウィスキーボンボン。ミニボトルをかたどったものも多くあるけれど、丸いこの形も最近はよく見るようになった。トリュフと間違えて食べたら酔っ払ってしまう、そんな思惑でもあるのかなぁ?
「ねえ、シズちゃん、どう思う?」
「……いい加減、何もかも省略する話し方やめたらどーだよノミ蟲が」
「えー……全部言っていいの? 俺がどれだけシズちゃんを殺してやりたいか、どんな殺し方してやりたいか、殺した後なにしてやろうか……とか全部?」
「今はソコじゃねぇ」
「いつならソコなのかなぁー、興味あるー」
 なんてね、とけららと笑えばシズちゃんはサングラスの向こうで嫌そうな目をした。そりゃそうだ、こんな状況、しかも俺との会話は成立しない。いつものことだけどね。
「でもシズちゃんってば不注意。俺なんかに乗っかられて」
「俺だってそう思うぜ、いーざーやーくーんーよーぉ。まっさかな、いたいけな自分の妹たちの作ったチョコに弛緩剤仕込むったぁ、兄貴のやることじゃねぇなぁ?」
「アイツらのこといたいけとかいうのシズちゃんだけっしょ。ばっかだな。まあ、セルティのチョコにしなかっただけ俺、常識人だよ?」
 シズちゃんが妹たちのチョコを口にしたトコを狙って顔を出し、吹っかけて、そろそろイイかなってところで殴らせる。弛緩剤が効いた身体はシズちゃんのパワーの反動を受け止められないで自滅。自ら地面とごっつんこ。そのシズちゃんを適当に転がして腹に乗っかって、ああ、楽しいねぇ、なんてことをして今に至る。
「バレンタイン終わってさー、すっごいチョコ安くなってんの。マジうけるよね、イベント終わればこんなに価値が下がるものに必死になってる女も男も。でもね、臨也くんはすごくすごくシズちゃんのこと好きだからね、あ、ラブとかじゃなくって、なんていうのかな、義理的な意味合いで。でね、お酒好きでしょ、シズちゃん。だから優しい優しい臨也くんはシズちゃんのためにチョコを買ってきたわけ。食べて欲しいなぁ、ねえ、シズちゃん。ああ、そっかシズちゃん今動けないもんね、仕方ないな手ずから食べさせてあげるよ、こんなサービス滅多にしないんだから感謝しなよね? ってこれ誰の台詞だっけ」
 なっ、とか、ばかやろう、とか聞こえるのをスルーして、俺はポケットにつっこんであったチョコレートボンボンの箱を開けた。定価3,150円のそれは、14日の18時の時点で1,575円になり、15日になれば525円になっていた。なんという錬金術。まあそれでも俺はそれをさらにワンコインに値切ったけどね。綺麗なゴールドのリボンで飾られていた紅い箱に、五つのウィスキーボンボンがそっと並んでいる。
「口、開けてー」
 弛緩していてもべらべら喋れていたのだから、口を開けるくらいは造作ないはずだ。というか、新羅の特別制だから首から上は動くんだけどね。つんつん、とチョコを唇に押し当ててやる。が、しかし、それを口に含む気配は全くない。
「なに、あけてくんないの?」
「死んでも嫌だ」
「シズちゃんのケチんぼ!」
「シズちゃん呼ぶな! ケチんぼでもねぇ! 何が入ってるか信用もできねぇンなもん喰えるかよ」
「……あーなんかほんっと手間掛けさせてくれるよねぇ、大人しく口開けばいいのにさぁ」
 俺はシズちゃんほど我慢弱くないけどね、でも流石に真っ向否定されると意地もある。別にこのチョコには何も入ってないですよ。バレンタインという派手で毒々しい女と男の駆け引きめいたイベントに生来の意味合いで使って貰えなかったチョコレートそのものの恨みとかは入ってるかもしれないけど、折原臨也個人としての恨みつらみなんてものは一ミクロンだって入ってないよ、だって誰ともしれない個人か機械の手を経て作られたものなんだから。

作品名:2.16→3.26 作家名:ながさせつや