2.16→3.26
「上のお口が素直に食べてくれないので下のお口で食べて貰おうかな、シズちゃん。ウィスキーってアルコール度数いくらだっけ」
ねえ、と笑ってやると、シズちゃんは一瞬だけすごく嫌そうな顔をした。いや、ずっと嫌そうな顔はしていたんだけど、きっと身の危険を感じたんだろう。いい顔。今やトレードマークのバーテン服のズボンに後ろ手に手をかけようとすると、シズちゃんは渾身の力で身体を揺らした。おっとっと、俺は落ちそうになったけれどなんとか持ち堪える。弛緩剤打たれてこんだけ動けるなんて流石だよねシズちゃん。
「いーざーやぁぁああ! ほんっきでいい加減にしろっつってんだろーがぁぁあああああ!」
「いやいや、俺も本気だから。大人しく食べてくれないからじゃない」
「食べる、食べてやるから今すぐその手をどけろノミ蟲野郎!」
「……食べさせて下さいお願いします、でしょ? なんて、もう今更聞けないど」
俺は一度立ち上がり、ドン、とシズちゃんを蹴って転がしてやった。シズちゃんはもちろん枷がなくなったので逃げようとしたけれど、いくらなんでもそのスピードじゃあ逃げられない。うつぶせになったシズちゃんの腕を、着ていたパーカーで拘束してやると、やっぱりバタバタと抵抗される。けれども、結局はいつもの何十分の一だ。ほどけるはずもない。
「いい格好だねぇ、シズちゃん」
ベルトをゆっくりと引き抜き、ズボンを脱がせる。下着も邪魔だからもちろん剥がす。いやぁ、ココは路地裏ですが、誰がいつ来るかも分からないんだよね、それなのにこの間抜けなザマったらないよシズちゃん。
「はは、普段こんなトコ見たりしないけどさ、シズちゃんの肌はやっぱ傷ひとつ、しみひとつないね。下手な女の子より綺麗な肌して、ふふ、今なら切り裂けるかな」
「したら、ぶっ殺す……!」
「あー怖い怖い」
まずはさっき、食べて貰えなかったチョコレートをシズちゃんのむき出しになった肌に割り砕いてなすりつける。柔らかい(っていうのも変な話しだけど、男のだし)尻たぶを、チョコレートでマッサージする要領で塗り込める。肌で摂取って出来るものだったかな? すごく甘いにおいがする中で、シズちゃんはやめろ、と何度もバタついた。いっそのこと踏んでやろうとも思ったけど、首根っこを右手で掴んでやれば大体それは出来なくなったから良しとしよう。あまり使い慣れない左手で、もうひとつぶ、ウィスキーボンボンを取る。
「ここからが本番です。シズちゃん、力抜いてなよ? あ、もう抜けてるか」
緩みきった身体において、最奥への入り口もまたしかりだった。狭い、という点においては無茶があったかもしれないが、ぐっと押し込めば、チョコレートの柔らかさもあってすんなりと入り込む。中指で出来るだけ奥へとそれを追いやると、シズちゃんの身体がふるりとみじろぐのが分かった。
「なに、感じた?」
「ちげェよ……死ね!」
「なんだ、まだ余裕か」
じゃあ、と残りのウィスキーボンボンをあと二つ、挿入する。シズちゃんの中は熱くて、きっとすぐに溶けるだろう。
「……ッ、いざ、やぁ!? お前いい加減に……」
「やだよ、もっと中までぐっちゃぐちゃのどろっどろにしてやるんだから」
早く溶けろ溶けろ、と俺は突っ込んだ指をそのまま中で動かしてやった。ウィスキーボンボンは段々と柔らかくなって、ぐにゅぐにゅとした感触に変わる。シズちゃんはちょっとだけ震えているようだった。愉快愉快。
「もうすぐ溶けるよ。お酒出てきちゃうよ?」
「ば、っかやろ!」
「動くと早く溶けるけど。まあ、結果論だよね。一緒一緒」
ああ、愉快。ほんっと、こればっかりはバレンタインデーを考案した製菓会社を褒めてやってもいい。
「シズちゃんシズちゃん、中、すごいとろとろしてきたよ? 分かる?」
わざと音を出すようにかき回してやると、ぐちゅ、と水っぽい音が響く。チョコレートの甘ったるいにおいと、ウィスキーの熟れたにおいが混ざってる。アルコール度数、ほんとに何度だっけ? 結構高かったから直腸で粘膜摂取したらきっとすぐにクるよね。シズちゃんはお酒に弱くないはずだけどこれはひとたまりもないだろうなぁ。
「ねえ、きもちいい?」
まさか返事はしないだろうけれど、段々と肌が紅く色づいてきている。汗ばんできた首筋を柔らかく撫でてやると、シズちゃんの唇から吐息が漏れるのが分かった。効いていたようだ。いくら強靭過ぎる肉体でも、中から犯されればなす術はない。アルコールは確実にシズちゃんの身体を蝕む。溶けたチョコレートとウィスキージェルは、俺の指先をつたって溢れてくる。零してたまるかとぐっと中に押し戻すと、指先が少しかたいものに当たった。途端、シズちゃんの身体がぶわりと浮いて、ああ前立腺、と思わず呟いた。
「なんだコッチ、イイの? ふふ、シズちゃんの変態変態へーんたーい」
「っる、せ……ッ、も、やめ…」
ああ、しまったな、ウィスキーボンボンと一緒にクラッシュアーモンドのトリュフも買えば良かった。一緒に入れてこすったらきっと面白かっただろう。柔らかい粘膜があやしくうごめく。筋肉が弛緩しているからこんな締め付けだけど、もしも薬が効いていなければこの指先、喰い千切られてるかも。そう考えるとゾっとすると同時に、シズちゃんというバケモノに対して感嘆すら覚えるね。内壁を丹念に丹念にくすぐって、シズちゃんの身体がビクビクと反応するのを一頻り楽しむと、今度は声を聴きたくなった。痴態に喘ぐシズちゃんなんて強請りネタになりそうだから録画でもしとけば良かったな。なんて不埒なことも考えたけど。
「シズちゃーん、ねえ、なんか喘いで」
「……し、ね、よ……!」
「なんだよ、たまには素直になればいいのにさあ」
でもそんなシズちゃんも気持ち悪い。俺の下で大人しく喘ぐ? そんなのただの人間じゃん。
「やっぱいらない、シズちゃんは黙ってればいいんだよ」
箱に残ったひとつぶのウィスキーボンボンを口に含んでからシズちゃんをもう一度、転がしてやる。後ろ手で拘束されたままのシズちゃんと対面すると、ぜぇぜぇと息を殺して、涙目になっていたのでいいザマだと思った。でもそのくせ、やっぱり俺を睨んでる。そうじゃなきゃ!
「くちあけてよね」
下唇を指先で押して開かせる。白い歯で、指ごと持っていかれるかもなんてことは、ウィスキーボンボンを無理矢理に口に含ませてやった後で気付いた。キスの味はチョコレートでもウィスキーでもなくて、血の味だったからだ。