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こらぼでほすと ニート9

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翌日、ニールが午後から昼寝に突入すると、ハイネがリジェネに外出を申し渡した。というのも、『吉祥富貴』の店は、マザーのアクセスポイントだから、そこにリジェネを入れられないからのことだ。
「寺に居ちゃダメなの? ハイネ。」
「おまえが留守番するって言うと、ママニャンは連れて行こうとする。」
「悪戯するつもりは微塵もないんだけどなあ。信用してくれない? 」
「さすがに、三日やそこらで信用できるかどうかの判断はできねぇーよ。悪いが、今夜は外泊してくれるか? ホテルを用意するからさ。」
 キラも、イノベイドには慎重に対処するつもりだ。一応、悪戯しないと約束はしているが、イノベイドに普通の倫理感があるかは不明だ。一度でも、ラボのマザーへの侵入路を見つけられてしまったら、今度からリジェネは、そこを攻撃してくる。それに、今は他のイノベイドはいないと言うが、イノベイドにはヴェーダの目として動いている個体もあって、それは世界中に存在している。それらに情報を一斉に流されてしまうと、いかにスーパーコーディネーターといえど防御が厳しいからの処置だ。
「人間は厄介だな。」
「まあな、悪いが頼まれてくれ。」
 イノベイド同士ならリンクすれば、相手のことも即座に分かり合えるわけだが、人間とは、そうもいかない。
「わかった。ホテルは結構だよ、ハイネ。僕が勝手に好きなところへ泊る。もしかしたら、しばらく、そっちに滞在するかもしれない。それでもいい? 」
 この際、追い出されるなら、特区の情報を調べたり興味の引くものを探してみようとリジェネも考えを切り替える。別に、ずっとニールを観察している必要はない。

 とはいうものの、しばらく一人で遊んでくる、と、リジェネがおやつの時間に言い出したら、「え? 」 と、ママは納得しない顔になった。
「何か嫌なことでもあるとか? 」
「そういうんじゃなくて、僕も優雅に特区を散策してみたいって思っただけ。僕だって、ようやくの自由な休暇なんだから、そういうのも満喫したいと思ってさ。」
「別に、うちから出かければいいだろ? 」
「一々、同じとこに戻るのも面倒だよ。」
「案内ぐらいなら、俺だってしてやれるぞ? 」
「帰ってきたら、ママのお勧めのとこへ連れて行ってくれる? たぶん、僕が行こうと思うところとは食い違ってると思うから。」
 そこまでリジェネが言うと、「わかった。」 と、一応、頷いてはくれた。ただし、携帯端末のアドレスと番号は交換させられた。何か困ったことがあれば、連絡してこい、という。地球の知識を丸ごと保有しているヴェーダを管理しているリジェネは、その心配に苦笑で頷いた。





 数日、特区の五つ星ホテルに滞在したリジェネだが、なんとなくニールのしてくれる世話とホテルで受けるサービスの違いなんてものは気付いた。確かに、ホテルのスタッフというのは、それ専用の教育もされているから卒なくこなしてくれるし、ある程度の会話にも応じてくれる。ホテル内のショッピングモールに行けば、適当に見合う服も手に入るし、食事だって興味の引くものをチョイスすればいい。出かけるのが面倒なら、ルームサービスを頼んで自堕落に過ごせば、何も自分で動く必要はない。ヴェーダでまどろんでいた時と変わらず、ホテルの部屋でごろごろしているのは、のんびりできるものだが、根本的に周囲に人はいない。


・・・・こちらからのオーダーには応じるけど、それだけなんだよね・・・・・

 ホテルのスタッフは、こちらから話しかければ返してくれるが、率先してスタッフから話しかけられることはない。何かをオーダーすればこなしてくれるが、それにはチップや対価が必要だ。寺には三日ばかり滞在しただけだったが、寂しいと思うことはなかった。とにかく出入りの激しい場所で、常に誰かがいたし、ママも動いていた。そして、そのママはリジェネが必要だと思うことを先に用意してくれている。今のところ、食べ物の好みがわからないから、好き嫌いや好みの飲み物なんかは、先に尋ねて用意してくれるが、出入りする人間たちの分は、ちゃんと当人たちの好みのものが言わなくても出てくるのだ。それは愛情というものなんだろうと、リジェネにもわかる。



 数日して寺に戻ったら、なんだか台所が賑やかだった。かなりの人数がいるらしい。居間に入ったら、そこには厳ついのが二人座っている。ギロリと睨まれたが、相手は護衛の人間だ。
「おお、おかえり、リジェネ。ちょうどいいとこに戻った。」
 台所からニールの声が飛んでくる。そちらには、宇宙で一番高名な歌姫様と、その護衛、さらにザフトの元軍人様だ。
「ラクス・クライン、何してるの? 」
 歌姫様は手を真っ白にして白いものを捏ねている。
「リジェネ・レジェッタさん、ごきげんよう。メロンパンを製作しておりますの。」
 本日は休暇だった歌姫が、寺に遊びに来ていた。ボリュームのあるお菓子ということで、メロンパンを作っている。レイとニールは、それとは別のケーキの分量を量ったり、お昼ご飯の製作中だ。さらに、悟空とヒルダまで参加しているから台所はぎゅうぎゅう状態になっている。
「めろんぱん? 」
「ええ、さようです。甘いパンです。」
「リジェネ、菓子パンって食べたことがあるか? 」
「さあ? 」
「おまえさん、朝は食ったのか? 」
「うん、ホテルで済ましてきた。それはお昼ごはんになるの? ママ。」
「菓子パンはおやつだ。午後からキラたちも遊びに来るから、昼はカレーだよ。」
 とはいうものの、久しぶりに顔を出したレイのために、レイの好物のアイリッシュシチューも同時に製作する予定だ。カレーもアイリッシュシチューもルーを投入するまでは、同じ内容で行程も同じだからだ。たくさん作って、余らせてレイやシンに持ち帰らせてやろうと考えている。レイも、それがわかっているから、とてもご機嫌で手伝いをしている。ハイネがラボへ仕事で戻ったから、本日、休みだったレイが交代でママの監視にやってきていた。シンも午後から合流するし、シンとレイが休みなら、みんなで騒ごうとキラもやってくることになった。ここんところ、アカデミーの学業が忙しくて、シンとレイと顔を合わせられなかったからだ。さらに、その情報を聞き込んだ歌姫様も、私くしも参加いたします、と、いそいそと寺へやってきて午後からのおやつ製作をしている。この癒し空間の効果は絶大で、ついつい、みんな、暇があれば顔を出してしまうので、休日は、こんなことになることが多い。
「リジェネ、なんか手伝えるか? 」
「・・・・無理だよ。それなら、僕、ママの部屋でテレビ見てる。」
「わかった。腹減ったら、戻って来い。」
 悟空も、手伝えとは強制はしない。世間知らずで家事能力皆無の人間だと、ママに聞いたからだ。そういうのは手伝いたいと言われても、家庭菜園の水遣りとかを頼むぐらいしかやることはない。坊主は、歌姫が顔を出した段階で、逃亡した。
「手伝わないんですか? ママ。」
「ああ、のんびり休暇を楽しむって言うし、たぶん、ティエリアよりも家事能力は低いだろうからさ。こういうことが楽しいと思うなら教えるんだけど、まだ、そこまでの余裕はないみたいだ。」
作品名:こらぼでほすと ニート9 作家名:篠義