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こらぼでほすと ニート9

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 レイが、一人だけ逃亡したリジェネを非難めいた口調で、ニールに言ったが、相手は笑っている。レイやラクスは、こうやって一緒に作業して完成する楽しみを知っているから、手伝ってもらうのだが、リジェネは、そういうことをしたことがないらしいから無理強いはしていない。
「レイ、リジェネはスーパーニートだから、こういう労働は理解できないのだと思いますわ。こんなにストレス解消になりますのにね。」
 ほほほほほ・・・と歌姫様は笑いながら、パンのネタを机に叩きつけている。こうやって、しっかりと練りこむとおいしいパンになるし、ストレスの原因を思い浮かべて叩きつけると、すっきりするらしい。キラの携帯端末に、ティエリアからリジェネのデータは送られて来た。スーパーニートで、他人と接触することも皆無だったから、共同作業などはできないという注意書きもついていたのだ。歌姫様も、それをキラから転送してもらっていたから、手伝わないことに文句はない。
「てか、ラクス。あんま叩きつけてばっかだと生地がボロボロなるぞ? 」
「大丈夫です。後二回ほど叩きのめして、それから寝かせます。」
 あーなんか、いろいろとストレスフルなんだな、と、ニールも気付いて、はいはいと頷く。
「なあーなあーママ。俺、カレーうどんとかも食いたい。」
「うどんはないぞ? 悟空。ルーは分けて、和風出汁で薄めればいけるけど。」
「なら、買って来る。何個? 」
「冷凍うどんを2パックくらいでいい。あと、うすあげと・・・」
「待って待って、今、メモするからっっ。」
 急遽増えたメニューの分の材料を、ニールがすらすらと読み上げると、悟空は、それをメモしてスーパーへひとっ走りだ。
「ということは、だ、レイ。もうちょっと具材を増やさないとダメだな。」
「そうですね。タマネギとニンジンとジャガイモを・・・。」
 食材の保管場所から、レイが増やす材料を取り出す。ヒルダは増えた材料をピーラーですかすかと皮を剥いているという一連の連携作業も慣れたものだ。
「ママ、夜の分は本宅のスタッフが運んできますから。」
「おう、頼む。後、悪いんだけど、ビールを多目に運んでもらってくれないか? 」
「それは頼んであります。」
 大人数になると缶ビールなんか箱単位で消費されてしまうから、とても寺の在庫では追いつかない。全員が成人しているから、どうしても缶ビールの消費が激しくなる。
「でも、ママ。あんた、あの紫猫の世話を焼きすぎてダウンしないでおくれよ? いつもなら、まだ、お里で静養してる時期なんだからさ。」
「はいはい。わかってますって、ヒルダさん。割と手間はかからないから大丈夫です。」
 ざっくりと切られたジャガイモ、ニンジン、タマネギは大鍋に投げ入れられてコンロにかけられる。これが柔らかくなる頃に、各料理用に分けてメインの肉やらが炒められて投入されることになっている。煮込んでしまえば、後は簡単だ。その合間に、レイがシフォンケーキをオーブンに入れる。これも、ガンガン焼いておけば日持ちもするから、大量に製作しているし、その後、歌姫様製作のメロンパンも焼かれる予定だ。
「ヘルベルトさん、マーズさん、すいません、レタス千切ってください。それとトマトのヘタ取り、お願いします。」
 ヘルベルトとマーズも雑用に借り出されるが、相手も慣れたものだ。はいよ、と、それらをザルとボールで受け取ると、卓袱台で作業する。
「さて、これで粗方、準備できたな。レイ、他に食いたいものはないか? 」
「みかんゼリーが食べたいんですが・・・。」
 レイも遠慮はしないで食べたいものをねだる。そのほうがママは喜んでくれるからだ。
「それは、おまえさんが来るって聞いた時に用意しておいた。みかんと黄桃とパイナップルのがあるよ。」
 おかあさんの味とでも言うのか、レイはニールが缶詰で作るゼリーが大好きで、何かあるとリクエストする。ニールのほうも、それは、先に用意した。勉強で忙しくしているのだから、好物ぐらいは用意してやりたいからだ。
「それをホイップクリームとチェリーで飾ってくれると最高です。」
「うん、それも用意してる。ホイップはシンにでもやらせよう。」
 大したものではないのだが、ついつい食べたくなる。レイはママの言葉に大輪の花が咲くように嬉しそうに笑う。これだから、ついつい寺に来たくなる。さすがに二年近い休学で、今の授業に追いつくには、かなりの復習が必要になった。バイトに出る時間もないほど、そちらに追われていて、ママとも顔を合わせられなかった。マイスター救出作戦にフルタイム参戦するために休学していたことは、バレてしまったが叱られはしなかった。ただ、「ありがとう。」と、お礼を言ってくれた。それだけでレイは満足だ。無事にマイスターたちも組織の人間も救出できたから、その苦労は報われたからだ。
「今夜は泊まります。」
「はいはい、俺のとなりでいいよな? 」
「まあ、ママ。私も、となりがよろしいです。」
「・・・おまえさんは本宅へ帰れ。キラでも連れて行けばいいだろ。」
「差別です。」
「・・・・あのな、ラクス。年頃の娘が、こんなおっさんの横に寝ているのが、そもそも間違いだ。」
「なんて失礼なことを。私のママは、おっさんではありません。見目麗しい美人さんですわ。」
「三十路越えたら、おっさんだ。だいたい、俺は見目麗しくなんかねぇーよ。目が曇ってるんじゃねぇーか? 視力検査して来い。」
「ママ、俺もママは、おっさんではないと思います。俺のママは美人です。」
「あははは・・・よかったねぇーママ。おっさん認定されなくてさ。」
 作業の合間のかけあい漫才のような会話で、全員が大笑いしている。居間のヘルベルトとマーズも、それを耳にして噴出している。これこそが癒しの日常というものだ。



 悟空が、スーパーから戻ってきたら、居間の前の廊下にリジェネが立っている。どうやら、中の会話を聞いているらしい。
「リジェネ、入れよ。」
 声をかけたら、「だって・・」 と、背後に下がる。何かややこしい話でもしてんのか? と、耳を、そちらに傾けたら、いつものバカ話だ。
「難しい話してねぇーぞ? 」
「入ったら労働しなくちゃいけないんだろ? 僕、やりたくない。」
「労働? しなくてもいいぜ。話を聞きたいなら入って聞けよ。参加すりゃいいじゃん。」
 ほれ、と、悟空がリジェネの腕を掴んで居間に入る。「ただいまー。」 と、声を張り上げたら、全員が、「おかえりー。」の返事だ。
「こいつ、外で聞いてたから連れて来た。労働はしたくねぇーけど、会話は聞きたいみたいだ。」
「なら、そこいらで座ってればいい。悟空、うすあげの中に餅でも入れるか?」
「うん、入れて入れて。カレーうどんにも肉一杯っっ。」
 買って来た食材を、整理して、さらに料理は進む。ケーキは焼けたので、卓袱台のほうで冷まして、今度はメロンパンだ。
「うわぁーラクス。このメロンパンでかくてうまそーっっ。」
「うふふふふ・・・悟空、中身にハチミツを仕込んだものがございますよ。ノーマルとハチミツ入りと両方楽しんでくださいね。」
作品名:こらぼでほすと ニート9 作家名:篠義