こらぼでほすと ニート11
キラのほうも心得たもので、軽いサーブを打ち上げる。まずは、ラクスが、それを打ち返す。「次は、リジェネが返して。」 と、キラが命じれば、リジェネも、それを打ち返す。で、次はニールだが、スカッとかすりもせずにシャトルは玉砂利に落ちた。
「あれ? うーん、距離感を間違ったか。」
右側の視力がないので、こういう細かいものだと距離感が、うまくつかめないこともある。見えているところで打てば、どうにかなるが感覚に頼ると、シャトルを把握しそこねるらしい。
「では、今度は私がサーブいたします。キラ、受けてください。」
「オッケー。」
気にせず、歌姫様がサーブを上げる。キラが打ち返すが、緩くニールが手元で確認できるようなスピードのシャトルが返って来た。サンキューとニールが打ち返すと、今度はリジェネだ。えいっっと打ち返したシャトルは、とんでもないところに返っているが、歌姫様が楽々と着地点に走って、キラに返している。キラのほうは、ニールの左側にシャトルを打ち返す。それなら、ニールも打ち返せる。なるべくニールが動かなくていいように、ラクスとキラが連携してシャトルを操ってくれている。こういうところは、さすがコーディネーターなんだろうなあ、と、ニールも楽しく参加した。そういうラリーを続けて、リジェネが取り損なったところで一端、休止だ。その頃には、レイとヒルダの白熱した試合も終わっていて、全員が、こちらの観戦をしていた。
「どうだ? リジェネ。打ち返せると楽しくないか? 」
「楽しいかもしれない。」
素直に、「楽しい。」 と、言えないのはティエリアと似た性格であるらしい。だから、ニールは、「それなら、もう少し遊ぼう。」 と、誘う。
「距離感は慣れだから、しょうがないさ、ママ。もう少しやれば、そこそこ打ち返せるようになるよ。」
隻眼のヒルダが、ニールにアドバイスをする。視覚でついていけない部分は感覚が勝負だ。そこいらは、ヒルダも慣れたもので、こういうふうにすると、大丈夫、と、打ち方の実演をする。
「ああ、なるほど。」
「でも、初めてにしちゃあ、綺麗に打ち返せている。たいしたもんだ。」
「羽根突きで練習しましたからね。」
正月の羽根突き大会の時は、ほとんど打ち返せなかった。まだ、あれよりはシャトルとラケットが大きいから、どうにか返せている。
「ねーさん、羽根突きはひどかったもんな。」
「うるせーぞ、シン。あんな小さいもんは無理だってぇーのっっ。」
「ママ、少し練習して俺とダブルスでシンを叩きのめしましょう。俺がフォローします。」
「あっ、レイ。ひでぇーっっ。俺が、ねーさんを苛めてるみたいに言うなよっっ。別に、事実を言っただけじゃん。」
ニールの周囲には、人が集まる。もう少し、ニールとやってみたいリジェネは、それを主張したいのだが、いつ叫べばいいのか考える。考えているうちに、どんどん進むので、困っていたら、ニールの視線が、こちらを向いた。
「レイ、リジェネもまぜてやってくれ。」
「はい、わかりました。じゃあ、三対一にしましょう。」
「いや、それ、おかしいだろ? なんで、俺一人なんだよ? 」
「じゃあ、僕がシンのところへ参加したげるよ。もう一人は悟空? それともアスラン? 」
「なー、そういうことなら円座でやればいいんじゃね? それならママのフォローをしつつ、シンに攻撃できるぞ? レイ。」
「そうか、それじゃあ、そうしよう。シン、しっかり返せよ。」
「ちょっ、ねーさん? 」
「はははは・・・やられろ、シン。」
護衛を除く面々が大きな輪になり、適当にサーブを上げる。対面に届けば、対面のものが、届かなければ近くのものが打ち上げる。こういう遊び方なら、激しく動き回る必要もないし、適当に打ち返せる。リジェネはニールの左隣に呼ばれて、そこでシャトルがくるのを待ち構えた。ポーンと上がったシャトルが、リジェネのほうにくると、「リジェネ、叩けっっ。」 と、ニールが指示する。叩くようにスマッシュすると、シンのところへ、へなちょこスマッシュが飛んでいく。
「うおりゃあーっっ。」
それを受けて、シンが悟空に強烈スマッシュだが、難なく受け止められて、今度はアスランに、悟空にしては激しくないアタックが行く。
「悟空、ナイスパス。」
難なくではないが、アスランも、それを拾った。そして、ポンポンとラケットで何度か跳ねさせて、となりのキラにパスだ。
「ほおーら、シンッッ、アターーーックッッ。」
「ぎゃあー、キラさんのバカぁー。」
バシュッと小気味良い音がしてシンの肩口をシャトルが抜けていく。顔面を狙ったらしいが、シンもコーディネーターだから、それは避けた。ちっっと背後に飛んでいったシャトルを走って取りにいき、リジェネのほうにサーブがくる。
「ママ、ママ、あれ。」
「はいはい、落ち着け、リジェネ。ほれ、ラクス、パス。」
高いサーブをニールがキャッチしてラクスのほうへ返す。ほほほほほ・・・とラクスが、それをジャンピングアタックでシンにスマッシュだ。それはどうにか返したが、すぐに悟空の重爆撃みたいなスマッシュがシンに返って来る。
「次、リジェネ。打てっっ。」
シンが落としたシャトルを、再度、リジェネに打ち上げてくれる。それを、リジェネがスマッシュする。これは、意外と楽しい、と、リジェネもせっせとシャトルを追い駆け始めた。そうなると、ニールは輪を抜けて、少し背後に退いた。同じようにやっていては体力が保たない。
「水分補給。」
そのニールにトダカが麦茶を配達してくれた。こういう遊びで一緒に騒げば、それだけで仲良くなったりする。リジェネは初心者だから、手加減してくれているから同じように対応できているので、負けた気もしないだろう。
「これ、集団でやるには楽しいスポーツですね? トダカさん。」
「ああ、技術も必要じゃないし、適当に身体を動かすには、いいスポーツだ。観戦するなら、あちらに行こう。」
本堂の前の階段に、護衛陣と坊主が座っている。そちらを顎で示して、トダカと完全に輪を抜けた。熱中しているらしく、リジェネはニールが抜けたことに気付いていない。七人で適当にパスを回しているので、横を確認する暇がないのだ。
「おまえ、できるじゃねぇーか? 」
階段に座り込むと、亭主が声をかけてくる。
「本気でやられたら、全然ダメでしょう。俺、右側に打ち込まれたら追いつけない。」
どうしても視界が狭い右側は、反応が遅くなる。気付いて反応しても、本気のスマッシュだと通り抜けているに違いない。
「おまえに本気でアタックするヤツはいねぇ。」
「そりゃそうでしょうけどねぇ。あんたはやったんですか? 」
「悟空には負けた。」
「へぇー、それは見たかったなあ。もう一度、やってくださいよ? 」
「亭主が負けるとこが見たいのか? 」
「見たいですね。あんた、負けてるとこなんて、なかなか拝めませんから。」
「確かに、三蔵さんは負けるとこを見るのが難しいな。」
「おまえらなら瞬殺してやる。」
作品名:こらぼでほすと ニート11 作家名:篠義