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思うにこれは恋

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第4話 決意


「あーあ、全く腹が減っちまったぜ!」
イーリス城の食堂に入るなり、ギャンレルは大きな声を上げた。
夕食の時刻になり、訓練を終えた兵士たちが続々と集まってきていた。
食堂はいっきに賑やかな場所になっていた。
時に、その場所は兵士たちの趣味の披露の場所になったりする。
食堂で(これは自分でお金を払わなければならないが)お酒も買えるので、兵士たちのくつろぎの場所でもあった。
ここイーリス城の最上階の一角には庭師が心を込めて作った素晴らしいバラの庭園がある。
お酒を呑んでる輩が嫌いな潔癖症は、屋上にでも行って、マリアベルがその場所に作った『優雅なティータイムのひととき』にでも参加すればいいとギャンレルは思っていた。
もっとも、自分は、頼まれても絶対にそんなところには行きたくないが。(←軍の中で最も高所恐怖症なため)

ここイーリス城の食事はビュッフェスタイルだ。
各自が好きなものを好きな量だけ皿にのせればいい。
そのため、最初に膳を持って、料理が置かれているレーンをスライドさせ順番に順繰り回って行くのだ。
ギャンレルはそのレーンの一番最初の部分に並んだ。
「本当疲れちまったぜ。」
そのレーンに並んでいる兵士を見ながら、ギャンレルは盛大にため息を吐いた。
ギャンレルの後に並んだソールは、その盛大なため息を吐く人物を見て、あははと苦笑した。
そして、横目で不機嫌そうな彼を見て答えた。
「今日の軍事演習でのフレドリックは、張り切りすぎだったよね。」
先ほどまでの、すさまじいまで厳しい軍事演習にギャンレルと共に参加していたソールは頷いた。
いくら、女性が参加しない軍事演習とはいえ、実践さながらで、一歩間違えれば死も覚悟をしなけばならなかった。
「ふん。
 てめーはいいだろうよ。」
そんなソールを鼻で笑うとギャンレルはわなわなとふるえながら、彼もまた軍事演習のことを思い出していた。
「フレドリク・・・あいつはぜってーオレのことを嫌ってやがるぜ。」
ギャンレルはそう言うと、地の底から湧き出でるかのような暗い声で、ふふふ。と、笑出だしていた。
「そうだ。絶対に間違いない!」
そして、こぶしを握り、ギャンレルはそう確信していた。
久しぶりに参加してやった軍事演習で、ギャンレルは本当にひどい目にあった。
ソールなどには比べものにならないくらいだ。
もっとも許せないことは、このプライドの高いギャンレルをみんなの前であーんなことやこーんなことで赤っ恥をかかせられてしまったことにある。
人の前で恥をかくことだけは、御免こうむりたいギャンレルは今日の出来事を絶対に忘れないと心に誓った。
思い出すだけで腸が煮え返る思いだ。
もし、自分がペレジアに帰り、国王に戻ったとしても、あいつのような部下だけは決して採用するか!と、今度は神に誓った。

そんな様子のギャンレルに、ソールはますます苦笑するしかないと思った。

とはいえ、当初のギャンレルは軍事演習など目もくれないという人物だったが、最近はどういうわけか比較的真面目に参加するようになっていた。
イーリス軍の人たちに慣れたのか?はたまた、違うことが目的か?
ソールには分かりかねたが、彼を取り巻く環境のことを考えると、少なからずいい傾向だと思った。
きっと、今日の妙な張り切り具合のフレドリクは、絶対にギャンレルがいたからに違いないとは思ったが・・・。

確かにギャンレルは、イーリス国の聖なる支えを失わせた張本人ではある。
しかし、それをせっかく会心した人物に、過ぎたことをいつまでも根に持っていたって仕方のないことだとソールは考えていた。
ソールは孤立しやすい彼を気にして、彼が気にならない程度に距離を保ちながら接するよう心掛けていた。
きっと、彼に対して悪い気持ちを持っていない誰かが、この男の隣にいてあげたほうが、イーリス軍にもメリットがあるだろうし。
なにより、この男の中で、もっと何かが変わるきっかけになるかもしれないと考えたからだ。

「だからこそ、僕はおなかが空いたよ。
 疲れたのを癒すことは食べることだ。」
「まぁな。」
「食事は質より量!
 たくさんの量を食べることが、体の調子を整える第一歩だ!」

目の前にずらりと並び、こんもりと皿の上に盛られた料理を見て、ソールは目を輝かせた。
今晩もめいいっぱい食事をとることができる!
バイキング形式だからこそできること!
これだからイーリス城勤務はやめられない!
と、イーリス軍の中で食い意地が張っているソールは思った。
そうして、彼は夢中でどんどんと自分の皿の上に、好きなものを好きな量だけ乗せていった。

ふと、ギャンレルを見ると、ソールよりも先に食事を盛るのをやめてまったようだった。
慌てて、彼を追いかけて、何気なく膳の中にある食事をふいと見た。
それを見て、ソールは驚いた。

ギャンレルの膳と自分の膳を比べてみると、それは一目瞭然だった。

彼の膳は、バイキング形式なのにも関わらず、それはそれは皿の上に品よく盛りつけられていたのだった。
まるで・・・それは、フラ〇ス料理のフルコースのように・・・。
「け!安い肉を使ってやがるぜ!
 下っ端だと思って、ここの軍はバカにしてやがるのか!?
 オレ様の目は騙されないぜ!」
ギャンレルは悪態をついて見せた。
ソールはその姿を見て愕然とした。
(そうだった・・・。
 そうだったよ。
 この人は、粗雑な性格と横暴な振る舞いで忘れていたが、結局はいいところのボンボンだったんだ。)
ソールは自分が言った言葉は伝わらないと思い、がっくりと肩を落とし、ギャンレルの座る席の隣に座った。

「甘い!甘いな!」
突然、そう言い切る声が自分たちに向けられ、ソールは目の前を見た。
すると、オレンジの髪のガイアが自分たちの前へと座ってきたのだった。
「質より量。
 量より質。
 俺に言わせれば、どちらでもないな。」
「じゃあ。違うというのなら、おまえなら何だと思うんだよ?」
その質問に待ってましたとばかりに、ガイアは不敵な笑みを浮かべると。
「決まっているじゃないか!」

「当然。
 甘いものだよ!甘いもの!」
甘いものを想像しているのか、ガイアの目は据わっている。

そんな様子のガイアにソールはやっぱり・・・という顔をした。

「俺はな、ここの食事に一つケチをつけなくてはいけないところは、まさにそこだよ!
 ここの食事にはスイーツ!!が足りない!!いや、非常に不足しているのだ!!
 それは、由々しきことだ!
 許されることじゃない!
 悪だ!悪以外の何物でもない!!

 ・・・それ以外は、まぁまぁだ。
 そう、悪くもない。」
そうだろう。そうだろう。
と、ソールは思った。

「しかし、甘いものだけが足りなのは・・・
 俺には我慢できんのだーーー!!!
 だからこそ、俺は、日夜ここの軍事活動の傍ら、せっせと甘いものの収集を行っているのだ!!」
そう、胸を張ってガイヤは言い切った。
それも、いっそ気持ちがいいくらいに。

しかし、ソールは目の間に置かれた、ガイヤの膳の中を見た。
それは自分と同じように、皿いっぱいてんこ盛りに食事が盛られている。
「そんな文句を言ったって、ガイヤ・・・
作品名:思うにこれは恋 作家名:ワルス虎