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生まれ変わってもきっと・・・(完結)

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先刻、執務室であれを取ろうとしてやんわりと阻止されたのはその為かと、アリスには思い当たる節もあった。ひょっとして、初めて部屋に入った時の意味の解らない機嫌の悪さも、写真集を見ていたからかもしれない。そんなに気に障る物を、人目に触れる所において置くのも如何かと思うが、個人の蔵書の置き方などに文句は言えない。

「エリオット、大事な用事は終わったのか?」

思いもかけず、急に背後から声を掛けられたエリオットは身体に電気が走ったみたいに硬直していた。表情までが強張り、振り向くことも困難な様子のウサギに代わりアリスが返事をする。

「何よ。まだ文句があるの?」

挑戦的なアリスの言葉に、エリオットは自分が気を失って倒れてしまいたいほどの恐怖を感じた。


★17. 許せない悪戯

アリスは執務室の本棚の前に居た。
エリオットと話しているところで声を掛けられ、城との交渉で中断してしまった読書を続けたいのならどうぞと言われたのだった。エリオットは真っ青な顔をしていたのだが、その言葉を聞いて気分が悪いからと一人自室に戻って行ったようだ。
彼と親しくなって思ったことは、このファミリーで一番精神的にも体力的にもきついのはエリオットだと言う事だ。彼ほどの立場なら、そういう役どころはもっと他に回せばいいのだろうが、ブラッド崇拝者だからなのか、元々の性格なのか、どちらにしても大変な所を一手に引き受けている。彼が居るからファミリーは上手く回っている。アリスはそう感じている。毎度のお茶会での人参攻勢を苦笑いで許しているのは、ブラッドもそんな彼を認めているのだろう。
アドバイス通り写真集は諦めて、何かストーリ性の有るものでも選んでみようかと数冊手に取りソファに戻った。
ブラッドは先程の交渉の時と同じ位置に腰掛けている。アリスは向かい側の席に腰を下ろそうとして制止された。

「そこに座るんじゃない!」

少しきつい言い方に驚いて、アリスは思わず振り返り座面を見た。特に座るのに不都合そうには見えない。座ることを制止された意味が掴めず、声の主の方を見る。彼の視線は手持ちの書類を見ているが、向かいの席から此処に座れと自分の横のスペースを手の平で軽く叩いて合図する。小首を傾げながらもそれに従う。

「何? 如何して?」

アリスの質問に、ブラッドは何でも良いだろうとだるそうに言いながら視線は書類から離れない。ペーターが持って来た資料なのだろうと思い、それ以上は追求しなかった。彼女には席に拘りがあるわけではないし、本が読めれば何処でも良いのだ。


活字の向こうに夢魔が笑っている。何か言っているが小さくて良く聞き取れない。聞き取れたのはほんの少し。

「君は本当に怖い物知らずだな。命が幾らあっても足りなさそうだ。」
「・・」
「全く、本棚によじ登ったり、良く知らない男の部屋で転寝したり、もう少し年頃のお・・・ゲハッ・・・」

彼は一人で喋り、一人で吐血して退場して行った。眼を開けると同時に身体を起こす。夢魔のもたらした突然の覚醒に、意識が付いて行けない。

「ユリウス・・・」

声を出して気付いた。自分は時計塔へいつ戻ったのだと。見回すと、何処か覚えのある部屋。大きな窓から白っぽい三日月が見えた。此処は一度、酷い目に遭わされそうになった部屋だと気付く。急いで着衣を見たが別に変わりない。靴を履き、恐る恐る明かりのついた部屋へ向う。赤いソファに座るブラッドは、前の時間帯と同じ姿勢で資料に目を通していた。

「食事に行かないか?」
「ごめんなさい、私・・」

彼は書類を見ながらそう言うと、紙の束をテーブルに置き立ち上がる。此方も見ずに、先に扉の方へ歩き出した。アリスも後に続く。知らない間に眠ってしまったことと、ベッドに運んでもらったことで気まずい。無防備な姿を晒してしまった事が恥ずかしいといえばいいのか。

「私は、本当に君の父親似なのか?」

歩きながら突然訊かれて、如何答えたものか困る。今更、過去に好きだった人にそっくりだなんて聞きたくないだろうし、言いたくない。

「君が、私に寄り掛かって眠ってしまった時には、正直複雑だったよ。」

ブラッドの声が此方に向いて発せられていることに気付き、俯き加減だったアリスは彼を見上げた。二人の視線が出合う。前回、手を引っ張られて小走りで通った少し薄暗い廊下。今は彼が歩調を合わせてくれているのがわかる。
何故、複雑になるのよ。彼の顔を見ながらそう思った途端、アリスの中で何かがパチンと弾けた。胸が苦しくなる。
お互いの間合いを計るこの感じ。覚えがある。この世界に来て、一番避けてきたことだ。
覚えのある苦しさに支配されて何も言えないまま歩き続けた。何となく気まずい雰囲気で食事を摂る。味も判らなければ、咀嚼した物を飲み込もうにも満足に喉を通らない。ただただ胸が苦しくて、この場を逃げ出したい。目の前の男がずっと此方を見ているような錯覚。実際見られてもいないのに視線を感じてしまう。顔も上げられず食事を終えた。
酷く長く感じた食事が終わる頃、外でお茶にしようと言われた。この上まだこんな思いをする時間が続くのかと思うが、上手く断る理由も見つからなくて黙っている。ダイニングを出ると、また並んで歩く。二人の間に微妙な間が開いて、それがまたアリスを苦しくさせる。
前回の様に強引に連れ回された方が、よほど気が楽だったと思う。こんな、近づいたら良いのか、離れた方が良いのか判らない様な関係は困る。いつの間に自分はこの人をこんな風に感じるようになっていたのだろう。ついこの前までは、過去の人を連想して苦しくなるから会いたくないと思っていたはずだ。けれど今では、その方がずっと楽だったと思っている。そんな事は無い筈なのに、過ぎてしまえば何でも楽だったと思えるものなのか。
外に出て、冷えた空気に触れて少しホッとする。

「お姉さん、こっちこっち~」

喧嘩中の二人に挟まれて席に着く。紅茶を飲みながら、兵士の数を数えに行って如何したのかと訊いた。

「数を数えてから、門まで僕達が先導したんだ。そのままお仕事してたんだよ。偉いでしょう?ね、兄弟。」
「う、うん。」

明るいダムに反して、ディーの様子がおかしい。顔を覗き込んで如何したのと聞いても答えない。ダムは、特に気にもしていないようで、アリスに話しかけてくる。城の兵士をからかったが無反応で楽しくなかったとか他愛も無い事だ。

「お姉さん!」

急にディーが切羽詰ったように声をかけてきた。振り向くと、目の前に青い瞳が迫っていて、唇に柔らかい感触がする。反対側でダムが立ち上がり、やった!! と歓声を上げた。

「やったよ兄弟!! 僕もお姉さんとキスした!!」
「お前ら!! ちょっと来い。」

エリオットが二人の襟を掴むと、抵抗する二人を引っ張って行く。

「お前ら、変に色気づいてんじゃねーよ!子供は寝ろ。俺が添い寝してやる。」
「放せ! 添い寝ならお姉さんに・・」
「馬鹿ウサギの添い寝で寝れるわけ・・・」