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生まれ変わってもきっと・・・(完結)

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アリスは席を立ち見送りながら、前にも同じ様なことがあったと思い出す。そう、エリオットに頼まれて久々にこの屋敷に来た時のことだった。ふと横を見ると、ブラッドが側に立っている。アリスは彼を見上げる。この状況も一緒だ。そうして手を差し出されて・・・
ブラッドは、アリスの記憶通り腕を伸ばしてきたが、エスコートの為ではなかった。手の平に白い布が載っている。

「これで拭きなさい。」
「は?」
「だから、これで唇を拭くんだ。」

アリスの胸元まで突きつけられた厚意に、両手でブラッドの手を押し返しながら自分もハンカチは持っていると返事をする。

「それに子供の悪戯じゃない、気にしてないわよ。」

サラリと言うと、そのまま座って紅茶を飲もうとするアリスの口元に、ブラッドは強引に布を押し付け強く擦った。

「痛っ! 何するのよ。」
「君が素直に言う事を聞かないからだろう。」

明らかに不機嫌な声でそう言うと、再度アリスの唇に布を押し当てる。ゴシゴシと何度も擦られて、アリスはブラッドの手を跳ね除けた。

「痛いって言ってるでしょう?」
「男にキスされて、君は平気なのかっ!」
「ブラッド、あなた大人げないわよ? 子供の悪戯だって言ったでしょう?」

アリスは急に両腕を掴まれて唇を塞がれた。直ぐ目の前に、今まで言い合いをしていた男の顔がある。

ヒューッ

音を立てて風が通る。ブラッドはアリスとのキスを中断して闇を見上げていた。その頭に帽子が無い。

「ほら、意地悪するからよ!!」

アリスは、テーブルの上にあった布製のナプキンで口を拭きながら怒ったように言う。ブラッドはナプキンを取り上げながら、違うと言った。

「今のは嫉妬に駆られたシルフィードだよ。君が言っていた。」
「何を・・・」

ブラッドはアリスを抱き寄せると、もう一度キスをした。
この男の想いに飛び込む決心も出来ないままに身動きが取れない。このまま流されてしまって良いのか決心がつかないアリスは、抱き上げられて屋敷に向う。

「君が言っていた、朝食の紅茶を一緒に飲もう。」

驚いた。苦し紛れの一言を覚えていたのかと思いながらも、照れくさい。どうして、こういうタイミングでこんなことが言えるのか。この男は、やはり要注意だと結論が出る。

「私は、一緒に飲みたいなんて言ってないわ。それより帽子はいいの?」
「帽子は、精霊に記念にくれてやるさ。」

ご機嫌な様子でそう言うと、アリスに笑顔を見せる。何の記念なのよ?と内心思うが口には出さない。大人しく腕に抱かれながら、この男は上手だなと感心する。一体どれ程の女性との経験で培ったものなのか、是非聞いてみたいと思った。

「部屋に着いたら、貴方のさっきの質問に答えてあげる。」

そう言うと、ブラッドの首に腕を巻きつけ、彼の薔薇の匂いにひと時酔いしれる。判っているのだ。自分の性格では、また色々と思い悩む日々になることも。こんな男は自分の手に負えない。きっと翻弄されて酷い事になる。それでも、自分の気持ちは止められない。

この世界を気に入ったかと聞いた彼とのゲームに、勝てる気がしなくなってきたアリスだった。