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Kid the phantom thief 後編

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そこは緑に囲まれた霊園だった。
きちんと手入れの行き届いた植木は綺麗に並んでいる。



「こちらです。」


そこには黒羽家と書かれたシンプルなお墓。


ここがお前の眠る場所――――


掃除をして、線香を供える。
手を合わせ、目を閉じる。

新一は小さく深呼吸すると、
先日あったことを話し出した。



「中森青子ちゃんに会ったんです。」

「・・!?」

「快斗と間違えられました。」

「・・・・そうですか。」

「写真見たけど、そっくりだったんですね。」


「・・はい。快斗ぼっちゃまとあなたは本当に瓜二つでした。」


「俺は初めて知ったんです。」






俺は、

初めて知ったんです。



本当の姿である黒羽快斗のことを。
初めて知ることがあまりにも多すぎて・・笑えました。
俺のこの想いは本当だと思ってます。
今でも、この気持ちは変わらない。

でも、俺のこの言葉はどんなにちっぽけで…
どんなに軽い言葉に聞こえたんだろうなって思いました。

だって・・・キッドからしたら、
自分のことをどんなに知らずに、ほんの一部しか知らないだろうに…って。


もっと知りたかったです。


生きているときに…


残酷なことでも良かった。
キッドが、黒羽快斗が本当に好きだったのはあの子でも。
そんな真実だとしても、知りたかったです。



ははっ・・・
なんか情けないですね・・・・



すみません・・。





「・・・確かに生きているうちにと思うことは私も何度もございます。」


何度も、

何度も、後悔をしています。

生きているうちにキッドを辞めるようにもっと言っていれば、と。
キッドを辞めさせていれば・・死ぬことはなかっただろうにと・・・。


「寺井さん・・・・・」

「後悔しない日はございません。
ですが、沈んだ気分で居ては、ぼっちゃまに叱られます。
人の思いに敏感な方でしたから。
ですから私は残してくれたものを必ず守ると誓いました。
そうすることで私は前へ進める気がしたのです。」

「・・・・・。」

「その中の一つ。」

「・・何ですか?」

「快斗ぼっちゃまの想いです。」

「・・・・・想い?」

「これは、私が口にすべき言葉ではありませんが。
ぼっちゃまの代わりに――



『新一、愛してる』




「・・・・・・っ!!!!!??」

「ぼっちゃまはいつも言っておいででした。」

「・・・・・・・そん・・・っ・キッド・・」



あれを渡すべきなのかもしれませんね・・・



「・・・・・・キッド・・っ・・」

「少々ここでお待ちいただけますか。」


そう言い残し、寺井は車へ戻っていった。
残った新一の目からは涙が溢れていた。



「・・・はぁ・・お前のせいで・・俺、すっかり泣き虫じゃねーか。」

止まらない涙を拭う。



『新一愛してる。』


そう言ったのは寺井だったが、
新一には確かにキッドの言葉として届いた。


生きているときに、その名を呼んでほしかった。
生きているときに、その言葉を言ってほしかった。
悔しさが混ざるが・・それでもたまらなく嬉しい。



「俺も・・・俺も愛してるよ。
キッド・・いや、快斗・・愛してる。」



作品名:Kid the phantom thief 後編 作家名:おこた