いくとせの・・・
りんが殺生丸に嫁いで半年が過ぎた。
帰宅した殺生丸がめずらしく晩酌をするというので、りんは邪見が運んできたいい香りのする酒で殺生丸にお酌していた。
「りん、お前も飲むか?」
殺生丸がりんに盃を差し出す。
「あ、いいえ、りんはお酒はちょっと苦手で・・・」
「そうだな、お前には酒はまだ早いかもしれぬ」
殺生丸はそう言って、りんの右手をとって、自分の胸に引き寄せた。
「匂いだけでも試してみるか?」
殺生丸はそっとりんの口を吸った。
「ん・・・」
りんの頬が紅く染まる。それが酒の匂いを吸ったためか、殺生丸の口づけのためか、わからないが、可愛らしいことに変わりはない。殺生丸はりんを抱く腕に力をこめた。
「りん・・・」
殺生丸はりんに更にくちづけようとする。
「あ、あの・・・殺生丸さま、ちょっと待って」
「りん?私を拒むのか?」
「いいえ、違います。りん、ちょっと聞きたいことがあるの」
「なんだ?」
「あの・・・犬夜叉さまのことなんですけど」
「犬夜叉?」殺生丸の眉が不愉快そうに寄せられる。
「はい。犬夜叉さまは殺生丸さまの弟でしょ?でも殺生丸さまはいつも犬夜叉さまのこと弟だなんて思わないっていっているけれど・・・」
「それがどうした?」
「殺生丸さまが犬夜叉さまのこと弟と認めないのは、あの・・・犬夜叉さまが半妖だから?」
「・・・だとしたら、何だというのだ?」
「殺生丸さま、やっぱり半妖が嫌いなのかなって・・・」
「ふん。しれたことを」
「そっか・・・やっぱり・・・」
「りん?どうした?なぜそんなことを聞く?」
「ううん。ただ・・・確かめたかっただけなの・・」
「りん?半妖がどうした?お前は自分が人であることを気にしているのか?」
殺生丸はりんを自分の膝の上に抱き上げた。
「だとしたら愚かだぞ。りんはりんだ。お前が人であろうと妖怪であろうと関係ない。お前は私が選んだ妻だ」
「はい・・・」
「誰かになんぞいわれたのか?」
「あ、いいえ、いいえ、そんなことありません。お屋敷の方はみんな優しくしてくれます」
「母上が何かいったか?」
「いいえ!母上さまはいつもとても優しいです、りんに」
「そうか」
「はい」
「ならば、犬夜叉のことなど考えるな。りん、私のことだけ考えていよ」
殺生丸はりんを自分の白毛皮の上に押し倒した。
「りん・・・」
そのままりんの帯をゆるめて、着物の襟を広げる。りんの首筋をなめる。
「あ、ちょっと待ってください、殺生丸さま」
「待てぬ」
「あの、でも、ちょっと・・・」
「どうした?」
「今日は・・・ちょっと気分が悪くて・・・」
「気分が?」
「はい・・・ごめんなさい、殺生丸さま」
「・・・・気分が悪いなら仕方あるまい。りん、大事にしろ。もう休め」
殺生丸はりんを抱き起こして、夜具の上へ運んでいった。
「酒の匂いなどかがせないほうがよかったか・・」
「大丈夫です。休めばよくなりますから」
「そうか」
りんが殺生丸の求めを拒むなど初めてのことだった。よほど具合が悪いのだろうか。また風邪でもひいたのだろうか。殺生丸はりんの額に手を置いた。しかし熱はないようだ。
「りん、よく休め」
殺生丸はりんの睡眠の邪魔をしないよう隣室へ去っていった。
翌朝、りんは殺生丸の白毛皮の中で目がさめた。殺生丸が横に添い寝して、りんの顔をみつめていた。
「あ・・殺生丸さま・・」
「りん。目覚めたか。具合はどうだ?」
「あ。はい、もう大丈夫です」
「そうか・・・」
殺生丸はりんを抱き寄せて唇を重ねてきた。
「あ・・・」
「りん」
殺生丸はその舌でりんの耳やのどを愛撫する。
「あ・・・殺生丸さま・・・だめです・・・」
「なぜだ?昨夜、私は耐えたのだぞ、お前が具合が悪かったからしかたなく・・・」
「あの・・あの、まだ気分が・・・」
殺生丸は舌の動きをとめて、りんをみつめた。
「まだ気分が悪いのか?」
「あ・・・はい・・」
「お前何か病ではないか?」
「いえ・・・そんなことないと思いますけど・・・」
「では、なぜ、私を拒む?」
「拒むだなんて・・ただちょっと、今日は・・」
「昨夜もそういった」
「・・・・」
「薬師を呼ぶ。りん、母上に頼んでおくから具合を見てもらえ」
「え・・・」
殺生丸は床から出て、身支度を整えた。
「殺生丸さま?」
「母上のところへ行く。一刻も早く薬師にきてもらったほうがよい」
「はい・・・」
殺生丸は起き上がろうとするりんを抑えて、寝ているように言った。
「りん。薬師に見てもらえ。早くよくなれ」
「殺生丸さま。心配かけてすみません・・・」
「つまらんことをいうな。今日はなるべく早く帰るようにする。遠出はしない。何か食したいものがあるか?」
「いいえ、何も・・・」
「りん」
殺生丸はりんへかがみこんだ。寝ているりんの頬をやさしくなでる。
「お前の具合はよくならなければ困る。お前を抱けないではないか」
「殺生丸さま・・・」
「よく休め」
殺生丸は部屋を出ていった。
母にりんの状態を話し薬師に見させるよう頼んだあと、邪見を連れて、殺生丸は出かけていった。今日は東の谷の妖怪たちが騒動を起こしていると苦情が来ているので鎮めてこなければならない。しかし、りんの様子が心配だ。殺生丸は瞬殺で片をつける気でいた。
東の谷で起こった妖怪同士の縄張り争いを鎮めた後、殺生丸は家路の空を飛んでいた。邪見が白毛皮のもこもこにつかまっている。
屋敷の上空につき、下降を始めた殺生丸の五感に、いつもと異なるざわめきがひっかかり、眉をひそめた。殺生丸が屋敷へ降りると、屋敷内がざわめいている。従者たちが廊下を忙しく往来していた。殺生丸はますます眉を寄せた。
(まさか、りんの身に何か・・)
大妖怪である母が君臨している屋敷ゆえ、他の妖怪に襲われるような羽目にはならないはずだが。しかし、りんは昨夜より具合が悪いと言っていた。母に薬師を呼ぶように頼んでおいたが。まさか、りんは病にかかっているのか。
「おう殺生丸、帰ったか」
母が出迎えに出てきた。
「母上、りんは部屋か?薬師は呼んだか?」
「ああ。りんは自分の部屋で休んでいるぞ」
「そうか。薬師は何といっていた?りんは病にかかっているのか?」
「いいや、りんは病ではないぞ、元気なものだ」
「そうか・・・」
ならばなぜ出迎えにこないだろう。昨夜から具合が悪いといっていたが。どうしたのだろう。殺生丸の金色の瞳が急にかげる。
急いでりんの部屋へ向かおうとする殺生丸を、母が呼び止めた。
「少し待て、殺生丸。お前に話がある」
「後で聞く」
「まあ待て。りんのことが心配なのだろう?話とはそのりんのことだ」
「・・・」
殺生丸は足を止めて母を振り返った。
「りんがどうした?」
「殺生丸。りんは懐妊したぞ」
「!!」
殺生丸の瞳が大きく見開かれた。
「薬師によると二ヶ月ほどらしい。りんは懐妊に気づいていたらしいな」
「・・・」
帰宅した殺生丸がめずらしく晩酌をするというので、りんは邪見が運んできたいい香りのする酒で殺生丸にお酌していた。
「りん、お前も飲むか?」
殺生丸がりんに盃を差し出す。
「あ、いいえ、りんはお酒はちょっと苦手で・・・」
「そうだな、お前には酒はまだ早いかもしれぬ」
殺生丸はそう言って、りんの右手をとって、自分の胸に引き寄せた。
「匂いだけでも試してみるか?」
殺生丸はそっとりんの口を吸った。
「ん・・・」
りんの頬が紅く染まる。それが酒の匂いを吸ったためか、殺生丸の口づけのためか、わからないが、可愛らしいことに変わりはない。殺生丸はりんを抱く腕に力をこめた。
「りん・・・」
殺生丸はりんに更にくちづけようとする。
「あ、あの・・・殺生丸さま、ちょっと待って」
「りん?私を拒むのか?」
「いいえ、違います。りん、ちょっと聞きたいことがあるの」
「なんだ?」
「あの・・・犬夜叉さまのことなんですけど」
「犬夜叉?」殺生丸の眉が不愉快そうに寄せられる。
「はい。犬夜叉さまは殺生丸さまの弟でしょ?でも殺生丸さまはいつも犬夜叉さまのこと弟だなんて思わないっていっているけれど・・・」
「それがどうした?」
「殺生丸さまが犬夜叉さまのこと弟と認めないのは、あの・・・犬夜叉さまが半妖だから?」
「・・・だとしたら、何だというのだ?」
「殺生丸さま、やっぱり半妖が嫌いなのかなって・・・」
「ふん。しれたことを」
「そっか・・・やっぱり・・・」
「りん?どうした?なぜそんなことを聞く?」
「ううん。ただ・・・確かめたかっただけなの・・」
「りん?半妖がどうした?お前は自分が人であることを気にしているのか?」
殺生丸はりんを自分の膝の上に抱き上げた。
「だとしたら愚かだぞ。りんはりんだ。お前が人であろうと妖怪であろうと関係ない。お前は私が選んだ妻だ」
「はい・・・」
「誰かになんぞいわれたのか?」
「あ、いいえ、いいえ、そんなことありません。お屋敷の方はみんな優しくしてくれます」
「母上が何かいったか?」
「いいえ!母上さまはいつもとても優しいです、りんに」
「そうか」
「はい」
「ならば、犬夜叉のことなど考えるな。りん、私のことだけ考えていよ」
殺生丸はりんを自分の白毛皮の上に押し倒した。
「りん・・・」
そのままりんの帯をゆるめて、着物の襟を広げる。りんの首筋をなめる。
「あ、ちょっと待ってください、殺生丸さま」
「待てぬ」
「あの、でも、ちょっと・・・」
「どうした?」
「今日は・・・ちょっと気分が悪くて・・・」
「気分が?」
「はい・・・ごめんなさい、殺生丸さま」
「・・・・気分が悪いなら仕方あるまい。りん、大事にしろ。もう休め」
殺生丸はりんを抱き起こして、夜具の上へ運んでいった。
「酒の匂いなどかがせないほうがよかったか・・」
「大丈夫です。休めばよくなりますから」
「そうか」
りんが殺生丸の求めを拒むなど初めてのことだった。よほど具合が悪いのだろうか。また風邪でもひいたのだろうか。殺生丸はりんの額に手を置いた。しかし熱はないようだ。
「りん、よく休め」
殺生丸はりんの睡眠の邪魔をしないよう隣室へ去っていった。
翌朝、りんは殺生丸の白毛皮の中で目がさめた。殺生丸が横に添い寝して、りんの顔をみつめていた。
「あ・・殺生丸さま・・」
「りん。目覚めたか。具合はどうだ?」
「あ。はい、もう大丈夫です」
「そうか・・・」
殺生丸はりんを抱き寄せて唇を重ねてきた。
「あ・・・」
「りん」
殺生丸はその舌でりんの耳やのどを愛撫する。
「あ・・・殺生丸さま・・・だめです・・・」
「なぜだ?昨夜、私は耐えたのだぞ、お前が具合が悪かったからしかたなく・・・」
「あの・・あの、まだ気分が・・・」
殺生丸は舌の動きをとめて、りんをみつめた。
「まだ気分が悪いのか?」
「あ・・・はい・・」
「お前何か病ではないか?」
「いえ・・・そんなことないと思いますけど・・・」
「では、なぜ、私を拒む?」
「拒むだなんて・・ただちょっと、今日は・・」
「昨夜もそういった」
「・・・・」
「薬師を呼ぶ。りん、母上に頼んでおくから具合を見てもらえ」
「え・・・」
殺生丸は床から出て、身支度を整えた。
「殺生丸さま?」
「母上のところへ行く。一刻も早く薬師にきてもらったほうがよい」
「はい・・・」
殺生丸は起き上がろうとするりんを抑えて、寝ているように言った。
「りん。薬師に見てもらえ。早くよくなれ」
「殺生丸さま。心配かけてすみません・・・」
「つまらんことをいうな。今日はなるべく早く帰るようにする。遠出はしない。何か食したいものがあるか?」
「いいえ、何も・・・」
「りん」
殺生丸はりんへかがみこんだ。寝ているりんの頬をやさしくなでる。
「お前の具合はよくならなければ困る。お前を抱けないではないか」
「殺生丸さま・・・」
「よく休め」
殺生丸は部屋を出ていった。
母にりんの状態を話し薬師に見させるよう頼んだあと、邪見を連れて、殺生丸は出かけていった。今日は東の谷の妖怪たちが騒動を起こしていると苦情が来ているので鎮めてこなければならない。しかし、りんの様子が心配だ。殺生丸は瞬殺で片をつける気でいた。
東の谷で起こった妖怪同士の縄張り争いを鎮めた後、殺生丸は家路の空を飛んでいた。邪見が白毛皮のもこもこにつかまっている。
屋敷の上空につき、下降を始めた殺生丸の五感に、いつもと異なるざわめきがひっかかり、眉をひそめた。殺生丸が屋敷へ降りると、屋敷内がざわめいている。従者たちが廊下を忙しく往来していた。殺生丸はますます眉を寄せた。
(まさか、りんの身に何か・・)
大妖怪である母が君臨している屋敷ゆえ、他の妖怪に襲われるような羽目にはならないはずだが。しかし、りんは昨夜より具合が悪いと言っていた。母に薬師を呼ぶように頼んでおいたが。まさか、りんは病にかかっているのか。
「おう殺生丸、帰ったか」
母が出迎えに出てきた。
「母上、りんは部屋か?薬師は呼んだか?」
「ああ。りんは自分の部屋で休んでいるぞ」
「そうか。薬師は何といっていた?りんは病にかかっているのか?」
「いいや、りんは病ではないぞ、元気なものだ」
「そうか・・・」
ならばなぜ出迎えにこないだろう。昨夜から具合が悪いといっていたが。どうしたのだろう。殺生丸の金色の瞳が急にかげる。
急いでりんの部屋へ向かおうとする殺生丸を、母が呼び止めた。
「少し待て、殺生丸。お前に話がある」
「後で聞く」
「まあ待て。りんのことが心配なのだろう?話とはそのりんのことだ」
「・・・」
殺生丸は足を止めて母を振り返った。
「りんがどうした?」
「殺生丸。りんは懐妊したぞ」
「!!」
殺生丸の瞳が大きく見開かれた。
「薬師によると二ヶ月ほどらしい。りんは懐妊に気づいていたらしいな」
「・・・」