届かない君へ
1
グランコクマ。
マルクト帝国の首都である。
そこにはマルクト帝国軍の基地がある。
そこの第三師団所属、ユーマ・レイルは城でピオニーの前で眉をよせてイライラしていた。
彼女が怒るのは無理もない。
今、自分の師団の師団長であるジェイド・カーティス大佐は任務に出ている。
ジェイドがいてもいなくてもユーマはいつも仕事に追われていた。
ジェイドのいない間の仕事は彼女が受け持つ。
副師団長すら、ジェイドと一緒に任務に出ていた。
今も早く片付けないといけないものが自分の机にどっさり。
なのに、この自由奔放なピオニーは呼び出すなり、任務だという。
任務は仕方ない。
だが、任務の内容が内容なのだ。
「失礼ですが陛下。私が大佐の部下だからと言って良い様に使ってませんか?」
「失敬な。融通が効くから使ってるんだ」
それは意味は一緒なのではないのだろうか。
「しかし、私も仕事が・・・」
「ほう。俺の命令にそむくんだな?」
「・・・御意・・・」
「じゃ、これがリストな」
紙を渡されるとそこには無数の武器の名前。
ユーマはいわば、おつかいを頼まれた。
遠い道のりになるお使い。
武器の収集がピオニーの趣味。
ほしい武器がキムラスカにあるのだとか。
今、ジェイドがキムラスカへと向かっている。
ついでに頼めばいい話なのだろうか、ジェイドのことだから断るに決まっている。
しかも各地を回らなければならない。
私用の任務だ。
マルクトの軍服では警戒される。
そのため私服へと着替えて、ユーマはグランコクマを旅立った。