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らんぶーたん
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小説Fallout3「じいさんとベルチバード」

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<一>


 麻袋いっぱいの廃棄部品といくつかのセンサーモジュール。
 武器に弾薬、水とわずかばかりの食料はいつも持ち歩いているものだったが、この麻袋と干したバラモンの肉はウイリアムじいさんへの土産だ。
「ちょっと欲張りすぎたかな」
 肩に食い込む荷物を担ぎ直し、アランは朽ち果てかけたアスファルトの道を歩いていた。
 この舗装されていた道を自動車が行き交っていたのは、アランが生まれる遙か前の話だ。今はその自動車たちも、荒野に散在するオブジェの一つでしかない。
 核戦争から二百年。
 栄華を誇った人類の文明とやらも、こうなってはおしまいだ。
 そんなオブジェに無造作に腰掛け、アランは一つ休憩を入れた。変わらない灰色の空がどんよりとのし掛かってくる中、肩の麻袋を下ろして中身を確認してみる。
 廃墟となったビルや工場からかき集めてきた廃棄部品。ウイリアムじいさんに頼まれて、というか言われて集めさせられているそれがびっしりと詰まっている。使い物になりそうなものとそうでないものを見分ける目はアランにはなく、手当たり次第に集めてきてはじいさんに罵られるのだった。
「ガラクタばかり集めおって。おまえの目は節穴か!」
 こっちは善意で持っていってやっているというのに、ひどい言われ様だ。そんな理不尽さと、無茶を言われるのも信頼されているからかと肯定する思いを一口の水と一緒に飲み下し、アランは麻袋を再び担いだ。
「さっさと行くか。半年ぶりだからな。あまり遅いとまたどやされる」
 

 カン、カン、と規則正しい金属音が聞こえてくる。
 いつもと変わらぬ音にウイリアムじいさんの健在を確かめ、アランは「まだ生きてやがったか」と嘆息混じりに笑った。
 崩れた高架を横目に進み、何かのビルが崖の上に見え始めたら東に曲がる。ゆったりと上った丘を越えた先、クレーター状のへこみの中にウイリアムじいさんの家はある。家というよりは小屋と言った方がしっくりくるそれ自体は特別印象に残るものでもないが、その向こう側にあるものを見たときは最初は驚いたものだった。
 小屋と同じくらいの大きさはあるであろう鋼鉄の塊。エンクレイヴが独占している軍事用輸送機《ベルチバード》の残骸だ。
 垂直離着陸を可能にした可動式のプロペラが両翼に収まってはいるが、片方がひしゃげたまま空をむいている。機体の傷は前に来たときよりも補修が進んでいるが、プロペラは変わらずだった。
 カン、カン、と響く音はまだ続いている。
 アランは小屋を通り越して《ベルチバード》に近づいた。開け放たれた後部の搬入口にたどりつくと、壁面をノックして相変わらずなじいさんの背中に話しかけた。
「いい歳なんだから、多少は弱ってみせたらどうです?」
「ふん、おまえか」
 作業の手を止めるでもなく、ウイリアムじいさんはそう言って返す。
 これまた相変わらずの無愛想な返答に肩をすくめながら、変わっていないことに安堵しつつ、アランは肩に掛けた麻袋を下ろして音を立ててみせた。
「この量を運んでくるの、けっこう大変だったんですよ」
 麻袋の中の廃棄部品ががちゃりと鳴り、それを聞いて手を止めたじいさんがこちらを振り返る。油まみれの手をさっとタオルで拭いながら、じいさんは重そうに腰を上げてこちらにやってきた。腰の調子は前に来たときよりも悪化しているようだ。
「またガラクタばかり集めてきおったのだろう。見る目を養わんからそうなる」
「俺は廃棄部品を集める業者じゃないですからね。そんなものを養う必要はないんです」
「……ふん、まあいい、見せてみろ」
 しゃがみ込むと、じいさんはこちらを意識の外へ置いて麻袋の中身を物色し始めた。こうなると、じいさんの意識はしばらく帰ってこない。何度か経験しているからこそ怒りも呆れもしないが、初対面の相手にもこう無愛想だから困る。
 あれはじいさんのところに廃棄部品を持ってくるようになって三度目の時だったか。じいさんの作業が終わるまでは話も聞いちゃくれないというのがわかっていたので、その作業をぼんやりと眺めていたときだった。「おい!」と男の声が弾けたので振り返ると、そちらには拳銃を持ったモヒカンで半裸の男が立っていた。男はじいさんにいきなりその銃を突き付けてこう言った。
「食料と水、酒と武器もあるだけ出せ」
 強盗をするならいきなりズドンとやればいいものの……。律儀なやつだと呆れながらもそいつの手が震えているのを見て取り、腰の銃に手を伸ばしたときだった。
 振り返って反応したのも一瞬、「ふん」と鼻息一つを吐き出すと、じいさんはそいつを無視して作業を続けだした。当然相手は怒り出す。「おい、ふざけるなよ!」と罵る声と同時に拳銃を両手で保持するのを確認したとき、俺は条件反射の速度で構えた拳銃を相手の左腕に据えて、撃ち抜いた。
「ひ、ひいいい」
 レイダ—になって初めての強盗、といったところか。一発撃たれると男は悲鳴を上げてあっさりと逃げ出した。追おうとした俺をじいさんが止め、黙って作業を再開する。
「無愛想もほどほどにしないと、命を落とすよ、じいさん」
「ふん、あの程度の小僧にやられるか」
「やられるかって……あんた、今危なかっただろう?」
「危なかろうが危なくなかろうが、今こうして生きておるじゃろ。問題ない」
 少しだけでもびびって見せてやれば、あの手の輩は油断してくれる。じいさんの態度は挑発にしかならない。俺がいなかったらどうなっていた? そう叱ってやりたくもなったが、生死を語るときのじいさんの達観した目を見てしまうと、何も言えなくて困るのだった。
「四十五点じゃな」
 前回より五点アップ。及第点まではまだ遠いようだ。


「おまえがこうやって無事に帰ってこられるくらいだ。ウェイストランドも多少は平和になったか」
「こう見えても、それなりに腕は立つ方なんですけどね、俺」
「ふん、多少腕が立とうが関係ない。死ぬやつは死ぬ。それがウェイストランドだ」
「今も昔も、ね」
 干したバラモンの肉を適当に切り、じいさんの出した二つのグラスにビールを注ぐ。憎まれ口で互いの無事を祝しながら、二人はささやかな晩餐を始めた。
「じいさんの腰痛に」
「成長せぬ廃棄部品収集業者に」
 風でガタガタとうるさい小屋に、グラスの触れる澄んだ音が響く。
 小汚いテーブルの上に並ぶのは、汚れた食器に盛られた肉とぬるいビールの入ったグラス。どれも微量ながら放射能汚染されているのは、言うまでもなくこの世界で生きながらえている者の常識だ。多少の放射能汚染を気にしていては、飢えて、干からびて、のたれ死ぬ。
 世界を崩壊に導いた核戦争が残したものは、瓦礫と死体と汚染された食べ物ぐらいなものだ。そんな世界で生き延びていけるのも人間なら、そんな世界を作り上げたのも人間なのだから、業が深いと言わざるをえない。
 毒を喰らってでも生きていく。文明の大半を失った人間には、今更きれい事を並べる余裕なんてないのだから。
「……で、今回はずいぶん時間がかかったじゃないか。どこへ行った」