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らんぶーたん
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小説Fallout3「じいさんとベルチバード」

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 口汚く罵るわりには、ウイリアムじいさんは旅の話を聞きたがる。じいさんももういい歳だから、自分で旅に出るわけにもいかないのだ。コミュニティとは断絶された場所で暮らしていても、外の世界が気にならないわけではないらしい。
 いや、外の世界が気になるから、というわけではないのかもしれない。
「他人と会話をすること自体が人間にとって娯楽となる。なぜなら人間は社会的生物だから。一人じゃ寂しくて生きていけないのよ」と旅先で知り合った学のある女が言っていたのを思い出し、「その娯楽の大半を自ら奪った当時の人間は、よっぽど戦争が楽しかったんだろうな」と答えたときの彼女の微笑が脳裏をよぎる。
 戦争も会話も、他人がいなけりゃ出来ないところは一緒だな……。
 こんな場所で一人暮らしをする物好きで口汚くて無愛想なじいさんでも、他人と話すのが楽しかったりするのだろうか。グラスを揺らして聞く体勢に入ったウイリアムじいさんを見れば、少なくとも楽しくないということはなさそうだ。
「今回は大変だったよ。西の外れの方まで行ったかな。そうそう、崩れかけのビルの中で何を見たと思う。あれはきっと幽霊ってやつだね」
「幽霊?」
「強い記憶の残留物、残留思念っていうのかな。そういう実験場だったみたいなんだけど」
「……わからん」
「俺も」
 半年ぶりの他愛のない話は深更まで続いた。


<二>


 滞在三日目。
 廃棄部品を集めてきた後、数日は《ベルチバード》の整備を手伝うのが暗黙の了解になっていた。じいさん秘蔵のビールやウイスキーをわけてもらえるのだから文句があるはずもなく、アランは黙々と作業を進める。
「そこを頼む」
「了解」
 口の悪いじいさんが唯一褒めてくれるのが、手先の器用さだった。機械いじりの知識はほとんど無かったアランが簡単な修理程度なら出来るようになったのも、ここで手伝いをさせられたからに他ならない。
 じいさんは昔、整備工をやっていたという話だ。どこで、とは言わなかったが、一人で《ベルチバード》の修理をしているのだから察しはつく。
 エンクレイヴ。
 エデン大統領直属の武力集団、といえばまだ聞こえはいいが、要は組織された強盗と一緒だった。やつらが消した集落の話は一つや二つではない。
 《ベルチバード》もそうだが、エンクレイヴが独占しているらしい軍事技術の噂は、アランからしてみたら空想科学小説に出てくる未来兵器だった。プラズマ兵器やパワーアーマーの類で武装した兵士に襲われたとしたなら、豆鉄砲の弾にも困る一般人が何人集まろうと太刀打ちできるはずもない。
 プラズマ兵器に焼かれ、瓦礫の合間に溜まる灰になりたくないのなら、迷わず逃げるべきだろう。そういう相手だ。
 言いたくないことを無理矢理聞き出そうとは思わないが、アランが察していることをじいさんもまた察しているだろうことは、なんとなく感じていた。否定するでもない態度が、無言の肯定だった。
「そろそろ休憩にしない?」
「……根性なしが。まあいい」
 自分の疲れよりもウイリアムじいさんの身体が心配で、アランは休憩を提案してみた。どことなく顔色が悪いようにも見えていたのだが、やはり調子は良くないようだ。今までなら「勝手に休んでろ」と罵られるところだ。
「調子悪いんじゃないの? 歳なんだから無理しない方がいいって」
「ふん」
 水を一口飲み、煙草に火をつけてから、じいさんは少し遠くを見た。何かを思い出しているような顔だ。
「目処がな、立ったんじゃよ」
「目処?」
「おまえが持ってきた部品に、それなりに役立つものがあってな。あれで《ベルチバード》のコンピュータを再起動できる。今日中には」
 と言ったところで痛みが走ったのか、じいさんが腰を押さえて小さく呻いた。
「ほら……。感謝の言葉が足りないから罰が当たってんだよ」
 その役立った部品がプラス五点の要因になったのを喜ぶべきか、それほど重要な部品を持ってきても合格点をもらえないことを抗議するべきか。そんな廃棄部品収集業者としての迷いは別にして、本調子ではないじいさんを見かねたアランは、提案をもう一つしてみた。
「そんな調子で根を詰めても仕方ないだろ。じいさんの分も俺がやるから横で口だけ出してくれればいいよ」
「ふん、ひよっこが偉そうに」
「身体の悪い年寄りに大事な部品を壊されたら、探してきた俺の苦労が報われないからな。肉体労働は若者に。お年寄りは知識の継承を、ってね。……じいさん、少し休んでなよ」
「……ふん」


 日が暮れ始めていた。
 汚れた大気が景色をくすませるようになったとはいえ、夕日が地平線に沈んでいく姿はこんな世界でも美しかった。もはや汚染する場所さえ残っていないと思えるウェイストランドからそれを眺めていると、核戦争による破壊は、汚染ではなく浄化を残したのではないかとさえ思えてくるから不思議だった。
 だが今日は、その大自然のパノラマ映像を拝むことは出来ない。
 ウイリアムじいさんに代わって、アランは《ベルチバード》の中でひたすら修理作業に追われていた。
「そこの配線、わかるか?」
「ん、ああ、ええっと……」
「その赤いのを根本から切れ。ああ、それでいい」
 座っていればいいものの、横合いからじいさんが身を乗り出して指示を出して来る。休んでいろと言ったにも関わらず、結局のところじいさんの負担を減らせていないのではないかとも思えてくるのだが、じいさんはそのことについて何も言わなかった。
「違う、そこじゃない!」
「でもさっき」
「『でも』ではないわ、まったく」
 言うことは指示とダメ出しばかり。一緒になって飛んできたげんこつが頭を打てば、気分は職人の小間使いだ。
「人使いが荒いなぁ」
「おまえがやると言ったんじゃろうが。文句を言うな」
「はいはい」

 そんなやり取りがさらに小一時間続き、さすがに腹の虫が蠢き始めた頃にようやく作業は終わった。日はすっかり落ちていて、手元を照らすのは頼りなげに揺れる小さな電球だけだった。
「それで最後じゃな」
「……はい、終了!」
 作業を終え、床に開いたメンテナンス用の窓に蓋をする。
 じいさんの方を振り向くと、疲れのにじむ視線が絡み合った。
 言葉はなく、互いに頷くことで労をねぎらう。
「……」
 ここにアランが通うようになる数年前から、じいさんは一人でこの作業を続けていたらしい。数年分の思いと苦労が熱になって感じられ、少し皺が深くなったかとアランが感慨に耽っていると、じいさんは視線を外してコクピットの一角に据え付けられた小型コンテナを開いた。
 中から取り出されたのは、腕に装着するタイプの端末だ。ディスプレイとキーボードが一体化したもので、アランはジャンク屋で同型のものを見たことがあった。ジャンク屋で見たそれは当然動きはしなかったが、こちらはじいさんが手入れをしていたのか、スイッチを入れるとディスプレイに電源が入るのが見えた。わずかな電子音が聞こえてくる。
 じいさんはその端末からケーブルを引き出し、それを《ベルチバード》のコクピットにある端子に接続した。