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らんぶーたん
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novelistID. 3694
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小説Fallout3「じいさんとベルチバード」

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 直後、兵士の側頭部に火花が咲き、アランは、目の前の兵士がはじけ飛ぶのと、遠くからやってきた二度目の銃声を聞くこととなった。
 狙撃だ。でもいったい誰が?
 咄嗟に物陰に潜り込みながら、その答えをアランは丘の上に見た。
 数人の人影。一人が持つ長尺の銃が狙撃銃なら、隣に並ぶ三人が持つのは、エンクレイヴ兵と同じミニガンか。それぞれがずんぐりとしたフォルムを逆光に浮かびあがらせているのは、彼らがパワーアーマーを着込んでいる証拠だ。
 丘の上の人影が、散開しながら丘を降りてくる。鉛玉の雨を降らせながら。
 余裕を見せていた将校服の男の表情は反転し、焦燥をにじませながら遮蔽物に隠れた。ミニガンのエンクレイヴ兵も一緒だ。
 よりにもよって、じいさんの《ベルチバード》の機体の影にだ。
 そこを狙って、丘の上から濃密な弾幕が降り注ぐ。
 じいさんの《ベルチバード》の上に無数の閃光が花開き、補修を終えていた装甲がバリバリと削り取られていく。
「やめろ、やめろよ!!」
 アランの叫びは叫びは銃撃音にかき消されていく。
 アランは知っている。じいさんがどんな思いで、どれほどの時間をかけて、その《ベルチバード》を修理していたかを。
 知っているから、アランは叫ばずにはいられなかった。黙って見てはいられなかった。
 腰のホルスターを確かめ、そんなもので何が出来る、と問う冷静な自分を外に置く。
 激情に駆られ、アランは物陰を飛び出そうとした。
 その腕をじいさんが掴まれなければ、銃弾の雨に身をさらしていたかもしれない。
 痛いほどの力で腕を掴むじいさんの方を見遣ると、じいさんは目を震わせながら言った。
「行くな、アラン」
「でも!」
「行くな」
「じいさん……」
 首を振ったじいさんに言葉を封じられ、アランの硬直した身体から力が抜けた。そのまま、銃撃音が途切れるまで遮蔽物の後ろに身を隠すしかなかった。


 戦闘は、数に勝る方が勝った。当たり前の結果だ。
 目の前にはエンクレイヴ兵の死体が転がっている。その隣には、ぼろぼろになったじいさんの《ベルチバード》があった。
 エンクレイヴ兵を倒した連中は、ブラザーフッド・オブ・スティール、BOSという傭兵集団の兵士らしい。エンクレイヴと敵対している傭兵集団の話は聞いていたが、彼らに助けられる日が来るとは思っていなかった。
「お前たちは何者だ。エンクレイヴとの関係は」
 銃口を突き付けられたままの説明が要を得ていたかはわからないが、とにかく、アランたちに向けられていた銃口はすぐに下ろされた。
「わかった」
 じいさんも自分も、とにかく助かった。
 そのことには安堵しつつも、《ベルチバード》の様子を見れば胸をなで下ろす気分にはなれない。じいさんの十年分の苦労が水の泡だ。どう声を掛けていいのかもわからない。「もう一度やり直せばいいさ」と言うのに、じいさんは年を取りすぎているのだから。
 そんなことを考えていたアランの不意をつくように、BOS兵の一人が言った。
「だがこの《ベルチバード》は我々が接収する」
「そんな!」
「持っていても使い道がないだろう。それにまたエンクレイブがやってこないともかぎらん」
「……持って行け」
 助かった喜びも、《ベルチバード》を破壊された怒りも見せず、だからと言って諦念でもない。穏やかな声でじいさんは言った。
「じいさん……」
「いいんじゃよ」
 じいさんがそう言うなら、アランにはもう言葉はなかった。


 BOSの兵士たちは、《ベルチバード》を一旦そのままにして引き上げていった。後で仲間と重機を連れて戻ってくるらしい。
「良かったのかよ、じいさん」
「ああ、あれでいい」
 ふと浮かんだ笑みにどう答えていいかわからず、アランが戸惑っているうちにじいさんは家に帰って行く。
「出発に邪魔が入ったな」
「えっ、ああ」
「昼飯、食っていけ」
 中点を越えて傾き始めた太陽を指さし、じいさんは背中越しにそう言った。
 何かを背負い続けた背中が妙に軽くなったように見えて、アランは「じいさんのおごり?」とふざけて答えてみる。
「ふん、まあいいじゃろ」
 出発はまた今度でいいか……。
 ウイリアムじいさんの背中を追いかけ、アランもまた、ゆっくりと家へと帰る。二人が家に帰る横で、じいさんの《ベルチバード》が、ただ静かに眠っていた。


<完>