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赤い烏を継ぐ男 TARGET Ⅰ

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がラッ、

「にいちゃんっ!」
「てめっ、バカ弟このやろー」

突然勢いよく開いたスライド式の扉から、これまた勢い良く涙で顔をぐしゃぐしゃにした青年が駆け込んできた。

びっくりして、パイプ椅子に座ったまま様子を伺っていると、どうやら来客はロヴィーノさんの弟だとわかる。
一見派手に見えるシャツも、ブランドもののジーンズもモデル顔負けのスタイルをした弟さんは見事に着こなしていた。

「って、あなた!」

・・・間違いない。
APH美術館の3分の位置を占める、と噂される若き天才画家、フェリシアーノ・ヴァルガスだ。


「ヴェっ!?あれー君、書道家の」
「・・・はじめまして、本田菊と申します。」
「あぁ!そっかぁ、うん。はじめましてー。」

差し出された左手を少し強めに握るとそれ以上の力で握り返され、ブンブンと激しく上下される。人懐っこいようだ。

「えへへー、」

ドタドタ、

「こ~ら~、フェリシアーノ!病院内は、走行厳禁だ!」
「てめっ、じゃが芋野郎!ノックしてから入りやがれ畜生!」

新たに病室に入ってきた人物は、凄くガタイの良い金髪碧眼をオールバックにした青年で白衣を着ているところから察するに、医者なのだろう。
医者に、そんな暴言を吐いて大丈夫なのだろうか?

「すまない、」

案外、律儀な性格だったようだ。

「あー、ごほん。そちらは?」
「本田菊といいます。・・・書道家です。」
「あぁ、」

なにか、意味ありげに医師はロヴィーノさんの方を一瞥した。

「な、なんだよ」
「べつに、色紙・・・出さなくていいのか?」
「色紙?」
「~~~っ!いい、」
「ヴェー、兄ちゃん真っ赤!」
「うるせぇ!」
「おい、俺様もいるぜっ!」
「兄さん、病院内では静かに」

不憫な、お兄さんだ。
え、お兄さん?

「似ていませんね」
「いっちゃダメだよ~」
「あ、フェリシアーノっ!丁度いい。」
「ヴェッ!?」
「イル・ソーレ継がなくていいぞ。」
「ど、どうしたのっ?急に」
「ケセセ、フェリちゃんの代わりがたった今決まったんだぜ」
「え、うっそ!?だれ、」
「私、です」
「菊が?」
「はい」
「ふむ、人は見かけに寄らんな」
「あの、そちらのお医者さんのお名前は?」

というか、兄弟とはいえ第三者に聞かれてもいい話なのか?
とか言いたいことはいっぱいありますが、大丈夫なのでしょうね。
空気的に。

「申し遅れたな、ルート・ヴィッヒ・バイルシュミット。そこにいる、ギルベルト兄さんの弟でこの病院に勤めている。」
「よろしくおねがいします。」
「こちらこそ。」
「かたっくるしーなぁ、」
「あなたが、馴れ馴れしいんです。」
「ヒドっ」

ぐすん

「ひとり楽しすギルぜー」
「よし、でかした。本田、」
「はい?」
「兄さんがいると話が進まんからな。」
「えーと、」
「ヴェっ、兄ちゃんがね、何か話したげにしてたんだよ」

そういうことでしたか。

「あー、本田・・・いや、三代目イル・ソーレ」
「はい、」
「突然で悪いんだが、実は・・・」
「なんでしょう?」


10分後


「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
「だ、だから落ち着けって」
「いえ、無茶振りすぎですよ。そんな、急に」
「おまえなら、できる」
「何を根拠に・・・」
「なんか、第六感が“こいつなら、大丈夫だ”って」
「・・・電波さん?」
「ちがっ、」
「あはは!菊っておもしろいね」
「いえ、」

だいたい、無理に決まっているでしょう?
「怪盗を継げ」と、言われた次の日からぶっつけ本番で任務。なんて、

「予告状を出しちまった以上、決行するしかない。・・・、それだけは譲れねぇよ。いいか、3代目よく聞いておけよ?“美学のない怪盗は、只の薄汚いコソ泥と同じ”だ。俺たちは、俺たち怪盗は“美学という誇りを貫き通す生き物”なんだ。」

ロヴィーノさんは真剣な、真っ直ぐな眼をしている。
なぜだろう、胸が熱くなってくるような気がする。
ああ、そうか。
この眼を、私は知っている。

「わかりました。」
「・・・いいのか?一度、任務を行えばお前は本当の怪盗になるんだぜ?」
「かまいません。」

もう、迷いはない。

「よし、わかった。おい、フェリシアーノ!」
「ヴェっ!?なに、兄ちゃん。」
「あの店に、こいつを連れて行け。それと、大至急で衣装を用意しろ。」
「うん!了解であります」
「ケセセ、面白いことになってきたなぁ」
「無理は、するなよ?」
「はい。では、」


突然で申し訳ありませんが先代が名誉の負傷を負ってしまったため、後を継がせていただきました。私、3代目が今宵零時に予告の品を頂きに参ります。                            怪盗 イル・ソーレ3代目


「ちょっと!フランシス、コレどういうことよっ!?」

アリスの甲高い声にフランシスは頭をポリポリと書きながら答える。

「みてのとおりだ。」
「・・・名誉の負傷?代を替えるほど撃ったのか」

アーサーは立派な眉を顰めて訝しげな表情をする。

「違う、ちがうよ。」

フランシスが困ったような、悲しそうな、或いは自嘲的な微笑みを浮かべながら否定する。

「フランシス?」
「先走ったのがいたんだ。俺たちの静止も聞かずに・・・」
「ばかなっ!新聞にはそんなこと・・・」
「上が、揉み消したのね?」
「うん。」
「・・・よし、」
「どこ行くの!?アーサー」
「件の美術館だ。」
「まだ時間は、」
「ばーか、初めて行く場所をぶっつけ本番で走れるか?」
「無理、ね」
「だな」
「ほら、行くぞ」


11時50分

本田菊は少しだけ不安になってきた。
先代や、先々代のようにうまくできるだろうか?
もし、

「考えないようにしましょう。」

こんな時にネガティブな考えなんて不吉すぎる。

懐から出した白地に黒で目元に雛菊と桜が小さくあしらわれたそれは例の仮面職人に作ってもらった仮面(と、いうよりはマスクに近い)だ。
滑らかなそれは、しっかりと顔の輪郭に馴染み職人の腕の良さが伺える。
ちなみに、服装はストレッチ地の黒いスーツだ。
シャツまで黒いが、真紅のネクタイが華を添えている。
帽子はもちろん黒いシルクハットで、銀縁の片眼鏡はイヤーカフスで固定されている。

「なんていうか、黒ずくめですね。」

忍者時代を思い出す。

「さて、そろそろいきますか。」

5分前になった。

菊は、鍵爪の付いたワイヤーロープをスーツのポケットから取り出して足元のでっぱりに引っ掛けて何度か引いて、外れないことを確認してから勢い良く暗闇に身を投げる。
彼が居た場所は、美術館の10メートル先にあるレストランの屋上。そこから、ワイヤーロープを頼りに美術館の庭に侵入しようとしているのだ。
まさに、大胆不敵な【正面突破】。普通ならば、絶対に失敗するだろう愚直な方法だが彼にとっては一番手っ取り早い。

「よし、無事着地です。」

できるだけ音を立てないように着地したはずが聞かれていたようで、警備員らしき男が走り寄ってくる。

「なっ!何者だ!?」

近距離に来たとたん銃を構えられた。
なるほど、この人ですか。