こらぼでほすと ニート14
何をしているんだろう、と、リジェネは静かな部屋の隅に座り込む。ティエリアとママとの温かいものに、自分も触れたくて、降りて来たのだが、そういうことをしている暇がない。ティエリアのママの側には、常に人が居て、なかなか二人で話をすることができないし、何を話せば、ティエリアが感じている温かいものに触れられるのかもわからない。
それに、シンや悟空のように上から命令されるのも、カチンとくる。人間としての礼儀なんて、リジェネは知らない。テーブルマナーとか挨拶の仕方なんていう公式の対応は理解しているが、そういうものでもない。
「もう、帰ろうかなあ。・・・でも、ティエリアに頼まれたからなあ。」
せっかく、ティエリアが頼んでくれたのだから、それはやりたい。ママの健康管理なんて簡単なものだと思っていたら、いきなりダウンされる。カルテで調べられれば、どうにかなるかと思っても、カルテは渡してくれない。八方塞がりで、肝心のママは寝ていて相手もしてもらえない。やはり、自分には向けられないものなのだろうか、と、残念な気分になる。
「僕、これでも優秀なイノベイドなんだけど? なんで叱られてばかりなわけ? ほんと、わかんないよ。」
ぶちぶちと文句を吐いていたら、ふぁさりと布団が動く音がした。そちらに顔を向けたら、ニールが、こちらを眺めていた。
「どうしたよ? リジェネ。」
「起こしちゃった? 」
「いや・・・ホームシックか? 」
ベッドの側に寄ったら、ニールは笑っている。薄暗いので、瞳の色までは、はっきりしないが、笑っているのはわかる。
「それはない。ホームシックって、人間がかかるものだ。」
「おまえさんだって、人間と変わらないと、俺は思うけどな。ティエリアも最初は、ヴェーダ、ヴェーダと依存してたけど、今は、そんなことないだろ? 自分で考えて動けるのは人間だと思うぜ。」
「でも、僕らは怖ろしく長生きで、ヴェーダと繋がってる。人類を外宇宙に導くために作られた存在だ。」
「それはそうだろうけどさ。今、『わかんないよ。』と愚痴ってたのは、なかなか人間らしいと思ったんだけどな。」
「・・・だって。いきなり殴られるし叱られるし・・・ママは、いきなりダウンするし・・・キラはカルテを公開してくれないし・・・何をしたらいいのか、わかんなくなったんだ。」
ニールが寝ていた間のことを、グチグチと文句にしたら、ニールがリジェネの腕を掴んで身体を下げさせた。そして、コチンと額に拳を当てる。
「それはシンが正しい。ちゃんと、ありがとうってアスランに言ったか? 」
「うん、言わされた。僕が望んでもいないのに、あっちが勝手にやったことでも、お礼の対象になるなんてわかんないんだけど? ママ。」
「でも、明日の朝、それがなかったら、おまえさん、着替えがないわけだろ? それを用意してくれたんだから、ありがとうだと思うんだけど? 」
「それなら、ママがリクエストしたんだから、僕はママに言うべきじゃないの? 」
「俺が、マンションまで行って用意してきたのなら、俺だけど、俺は頼んだだけだ。実行してくれたのはアスランなんだから、やはりアスランに言うべきだ。まあ、お礼を言ったのなら、それでいいよ。シンは、気が短いから、すぐに手が出るんだ。ごめんな? リジェネ。」
よしよしとリジェネの頭を撫でてくれる。スキンシップというものだとは、リジェネも知っているが、撫でてくれるのは心地良いとは思う。。
「なんで、ママが謝るの? 」
「シンは、俺の弟みたいなもんだから。」
「それがよくわかんない。」
「わからなくていい。そのうち、わかると思う。・・・・カルテは、俺に情報が漏れたらマズイからだろう。そんなに悪いのかな、俺。」
ドクターからの説明や指示は受けているが、ニールも自身のカルテなんて見たこともない。健常だとは思っていないが、何かしらマズイことが書かれているのかもしれない。まあ、どこまで保つかなあーと、ニール自身も思っているのだから、状態はよくないのだろう。刹那たちは無事に乗り切った。生きていてくれるので、ニールとしては、これで終わりでも文句はないのだが、できればもう少し、とは思う。この穏やかなで賑やかな生活に別れを告げるのは寂しいと思うからだ。
「ダメだよっっ、ママ。ママは生きてないといけないんだっっ。ティエリアが怒るし泣くよっっ。」
ぼんやりと考え事に沈んでいたら、リジェネの声で引き戻された。ティエリアの兄だというリジェネは、ティエリアよりも子供みたいだ。そうやって、自分の弟のために、ニールを叱っているのが、人間的だと思う。
「今すぐ、どうということはないさ。それなら、本宅へ連行されてる。・・・でもな、リジェネ。おまえさんのデータに、ここまで生きているヤツはいないんだろ? 」
「・・・そうだけど・・・」
「だから、どれくらい漢方薬で延ばせるかは知らないが、そういうことだ。どちらにせよ、俺はおまえさんたちの寿命には付き合えないんだし、刹那たちの寿命分も無理だと思うから、いつかは消えるんだ。」
にっこりと微笑んで、リジェネの頬を撫でている手は温かい。でも、告げられていることは痛い言葉だ。
「でも、刹那がダブルオーを再生させればっっ。」
「それでも、また少し延びるだけだ。」
「少しじゃない。ラッセ・アイオンは完全に健康な状態に戻ってる。」
「・・・・とは言ってもなあ。俺、相当な無茶をしてるから・・・どこまで治るのかわかんねぇーし。」
「刹那が負のGN粒子の影響を消滅させてくれれば、僕らだって治療方法を探せる。きっと、ティエリアが元に戻してくれるよ? 」
「ありがとさん、リジェネ。今のところは大丈夫だから、ティエリアにダウンしてるとか報告してくれるなよ? あいつ、心配性なんだ。」
「・・・でも・・・・」
「ほら、みんな、今、忙しいからさ。こっちのことで心配させても、よくないだろ? 頼むよ? リジェネ。」
確かに、マイスターたちは忙しい。組織の復興に、MSの再生に、何かと働いている状態だ。とても降りて来るのは無理だ。
「でも、ティエリアは僕の身体を使えば、ここには顔を出せるんだ。この間、それでママの様子を確認していった。」
はあ? と、ニールは驚いて目を大きくしたが、そういや、ちびティエからノーマルティエに身体を乗り換えたのだった、と思い出した。イノベイド同士だと、そういうこともできるらしい。
「そんなご大層なことはしなくていい。その時間があるなら、身体を休めるように言ってくれ。」
「ママの顔を見るほうが休まるんだよ。ティエリアは、そんな感じだった。・・・・身体を貸してあげたから、その気持ちもわかった。」
リジェネの身体を通して、ティエリアがニールの様子を眺めていたから、いつもより心の動きが判った。穏やかな寝息を確認して、ほっと安堵していたのだ。とても深くて溢れるような温かい気持ちだった。心地良い感情で、リジェネ自身も、温かくなったほどだ。
「・・困った心配性だな、あいつ。」
「ひどいね? ママ。ティエリアは嬉しそうだったのに。」
「そうかなあ。俺のことは放置でいいと思うんだが? 」
それに、シンや悟空のように上から命令されるのも、カチンとくる。人間としての礼儀なんて、リジェネは知らない。テーブルマナーとか挨拶の仕方なんていう公式の対応は理解しているが、そういうものでもない。
「もう、帰ろうかなあ。・・・でも、ティエリアに頼まれたからなあ。」
せっかく、ティエリアが頼んでくれたのだから、それはやりたい。ママの健康管理なんて簡単なものだと思っていたら、いきなりダウンされる。カルテで調べられれば、どうにかなるかと思っても、カルテは渡してくれない。八方塞がりで、肝心のママは寝ていて相手もしてもらえない。やはり、自分には向けられないものなのだろうか、と、残念な気分になる。
「僕、これでも優秀なイノベイドなんだけど? なんで叱られてばかりなわけ? ほんと、わかんないよ。」
ぶちぶちと文句を吐いていたら、ふぁさりと布団が動く音がした。そちらに顔を向けたら、ニールが、こちらを眺めていた。
「どうしたよ? リジェネ。」
「起こしちゃった? 」
「いや・・・ホームシックか? 」
ベッドの側に寄ったら、ニールは笑っている。薄暗いので、瞳の色までは、はっきりしないが、笑っているのはわかる。
「それはない。ホームシックって、人間がかかるものだ。」
「おまえさんだって、人間と変わらないと、俺は思うけどな。ティエリアも最初は、ヴェーダ、ヴェーダと依存してたけど、今は、そんなことないだろ? 自分で考えて動けるのは人間だと思うぜ。」
「でも、僕らは怖ろしく長生きで、ヴェーダと繋がってる。人類を外宇宙に導くために作られた存在だ。」
「それはそうだろうけどさ。今、『わかんないよ。』と愚痴ってたのは、なかなか人間らしいと思ったんだけどな。」
「・・・だって。いきなり殴られるし叱られるし・・・ママは、いきなりダウンするし・・・キラはカルテを公開してくれないし・・・何をしたらいいのか、わかんなくなったんだ。」
ニールが寝ていた間のことを、グチグチと文句にしたら、ニールがリジェネの腕を掴んで身体を下げさせた。そして、コチンと額に拳を当てる。
「それはシンが正しい。ちゃんと、ありがとうってアスランに言ったか? 」
「うん、言わされた。僕が望んでもいないのに、あっちが勝手にやったことでも、お礼の対象になるなんてわかんないんだけど? ママ。」
「でも、明日の朝、それがなかったら、おまえさん、着替えがないわけだろ? それを用意してくれたんだから、ありがとうだと思うんだけど? 」
「それなら、ママがリクエストしたんだから、僕はママに言うべきじゃないの? 」
「俺が、マンションまで行って用意してきたのなら、俺だけど、俺は頼んだだけだ。実行してくれたのはアスランなんだから、やはりアスランに言うべきだ。まあ、お礼を言ったのなら、それでいいよ。シンは、気が短いから、すぐに手が出るんだ。ごめんな? リジェネ。」
よしよしとリジェネの頭を撫でてくれる。スキンシップというものだとは、リジェネも知っているが、撫でてくれるのは心地良いとは思う。。
「なんで、ママが謝るの? 」
「シンは、俺の弟みたいなもんだから。」
「それがよくわかんない。」
「わからなくていい。そのうち、わかると思う。・・・・カルテは、俺に情報が漏れたらマズイからだろう。そんなに悪いのかな、俺。」
ドクターからの説明や指示は受けているが、ニールも自身のカルテなんて見たこともない。健常だとは思っていないが、何かしらマズイことが書かれているのかもしれない。まあ、どこまで保つかなあーと、ニール自身も思っているのだから、状態はよくないのだろう。刹那たちは無事に乗り切った。生きていてくれるので、ニールとしては、これで終わりでも文句はないのだが、できればもう少し、とは思う。この穏やかなで賑やかな生活に別れを告げるのは寂しいと思うからだ。
「ダメだよっっ、ママ。ママは生きてないといけないんだっっ。ティエリアが怒るし泣くよっっ。」
ぼんやりと考え事に沈んでいたら、リジェネの声で引き戻された。ティエリアの兄だというリジェネは、ティエリアよりも子供みたいだ。そうやって、自分の弟のために、ニールを叱っているのが、人間的だと思う。
「今すぐ、どうということはないさ。それなら、本宅へ連行されてる。・・・でもな、リジェネ。おまえさんのデータに、ここまで生きているヤツはいないんだろ? 」
「・・・そうだけど・・・」
「だから、どれくらい漢方薬で延ばせるかは知らないが、そういうことだ。どちらにせよ、俺はおまえさんたちの寿命には付き合えないんだし、刹那たちの寿命分も無理だと思うから、いつかは消えるんだ。」
にっこりと微笑んで、リジェネの頬を撫でている手は温かい。でも、告げられていることは痛い言葉だ。
「でも、刹那がダブルオーを再生させればっっ。」
「それでも、また少し延びるだけだ。」
「少しじゃない。ラッセ・アイオンは完全に健康な状態に戻ってる。」
「・・・・とは言ってもなあ。俺、相当な無茶をしてるから・・・どこまで治るのかわかんねぇーし。」
「刹那が負のGN粒子の影響を消滅させてくれれば、僕らだって治療方法を探せる。きっと、ティエリアが元に戻してくれるよ? 」
「ありがとさん、リジェネ。今のところは大丈夫だから、ティエリアにダウンしてるとか報告してくれるなよ? あいつ、心配性なんだ。」
「・・・でも・・・・」
「ほら、みんな、今、忙しいからさ。こっちのことで心配させても、よくないだろ? 頼むよ? リジェネ。」
確かに、マイスターたちは忙しい。組織の復興に、MSの再生に、何かと働いている状態だ。とても降りて来るのは無理だ。
「でも、ティエリアは僕の身体を使えば、ここには顔を出せるんだ。この間、それでママの様子を確認していった。」
はあ? と、ニールは驚いて目を大きくしたが、そういや、ちびティエからノーマルティエに身体を乗り換えたのだった、と思い出した。イノベイド同士だと、そういうこともできるらしい。
「そんなご大層なことはしなくていい。その時間があるなら、身体を休めるように言ってくれ。」
「ママの顔を見るほうが休まるんだよ。ティエリアは、そんな感じだった。・・・・身体を貸してあげたから、その気持ちもわかった。」
リジェネの身体を通して、ティエリアがニールの様子を眺めていたから、いつもより心の動きが判った。穏やかな寝息を確認して、ほっと安堵していたのだ。とても深くて溢れるような温かい気持ちだった。心地良い感情で、リジェネ自身も、温かくなったほどだ。
「・・困った心配性だな、あいつ。」
「ひどいね? ママ。ティエリアは嬉しそうだったのに。」
「そうかなあ。俺のことは放置でいいと思うんだが? 」
作品名:こらぼでほすと ニート14 作家名:篠義