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IS  バニシングトルーパー 003-004

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 重い一撃を食らったセシリアは、衝撃の慣性で地面へ衝突した。そしてセシリアが落ちていくのを見て、クリスもセシリアを追って地面に降りた。

 「くっ……」
 ISの操縦者保護機能のお陰で、地面に衝突したセシリアは怪我一つも負っていない。衝撃のせいで一瞬気絶しそうになったが、何とか意識を保たれた。
 「あっ」
 だが、顔をあげて目の前にあるのは、突きつけられているブレードだった。

 「どうする?」
 ブレードを持ち主から問いが来た。
 武装の大半が奪われ、切り札のミサイルビットも既に晒してしまった。一方、自分は相手にろくなダメージも与えていない。
 セシリア本体のダメージはそれほど酷くないが、攻撃力が殆ど奪われた今、これ以上戦うなら、一方的に嬲り倒される結果しか見えてこない。
 完全に追い詰められた。名門出身で、イギリス代表者である誇り高き自分が、専用機を使ってるにも関わらず、量産機にブレード一本で負かされた。

 「これはあくまで練習試合だ。勝負に拘らることはない。ここでお互い手を引こう」
 視線の向こうにある夕日のせいか、目の前に立っているクリスの顔がよく見えない。だが、クリスが発した声には抗えない迫力が篭っていた。
 生まれてから、男に負けないように教育されてきた。そしてこれまでの人生もその教えを守ってきた。父を顎で使っていた母のように、セシリアは男を下等な存在だと考えてきた。
 だが、自分は目の前にいるこの男を抗えない。
 この時、セシリアがはっきり意識した。
 そうか。自分より、この男の方が遥かに強いのだ、と。
 「はっ、はい」
 混乱の中、セシリアが辛うじて口から出た、クリスへの返事の言葉だった。
 「それでいい。チッ……三分三十六秒か」
 打鉄を跪けて、クリスは装着を解除して、地面に降りた。
 「一夏、降りて来い!練習の再開だ」

 「きゃ~~~~~~~~~!!!!」
 観客席の女子達が一斉の歓声を上げて立ち上がった。
 「クリスくん~素敵!!」
 「私も教えてほしい!!」
 「写真データを寄越しなさい! 今すぐ部室にいくわよ!」
 生徒達が騒ぎ始めた光景を見て、千冬も席から立った。
 「ふん…帰るぞ。山田くん」
 「あっ、待ってくださいよ~織斑先生~」
 出口へ向う千冬の後を、真耶もすぐ慌てて追った。

 「いや感動したよ。クリスお前って本当に凄いな!俺は打鉄で頑張るよ!」
 「驚いたな、本当に勝ってしまうなんて」
 箒と一緒に観客席から降りてきた一夏は、キラキラした目でハイテンションになっていた。普段は自分からあまり話かけてこない箒も、クリスの戦いに感動していた。
 「うん、そうしてくれ。時間がもう残り少ない、さっき教えたことを練習しておけ」
 跪いてる打鉄を指して、クリスは一夏に練習を指示した。
 「クリスは?」
 打鉄の装着位置に登りながら、一夏がクリスに問う。
 「俺はコイツを送っておく。時間が遅いならそのまま部屋に戻るから、お前の時間を見て引き上げろ」
 既にISの装着を解除して、何か言いたそうな表情で少し離れた所にクリスを見ている金髪お嬢様――セシリアに見て、クリスが一夏に答えた。
 「わかったよ」
 「じゃな。篠ノ之、一夏のことを見てやれ」
 「ああ、分かった」
 一夏を箒に頼み、クリスはセシリアの方に近づいた。
 「わ、私は……」
 何かを言いかけたセシリアに、クリスは手勢でその言葉を遮った。
 「とりあえずアリーナから出よう。ここに居ては練習の邪魔だ」
 「あっ、はい」
 クリスの言葉に、セシリアが素直に頷いた。

 制服に着替えた二人が合流した後、丁度夕食の時間だったということで、クリスの提案で、二人は食堂のテーブルについた。
 「ク、クレマンさんは食欲旺盛ですわね」
 「まあな。一週間で和食メニューを制覇するつもりだ」
 「そ、そうですか……」
 テーブルに並ぶ料理の数々を頬張っているクリスの野望(?)を聞いて、セシリアが顔を引き攣った。
 「んで、何か話があるのか?」
 「あっ、いえ……」
 ナイフとフォークを置いて、セシリアはティッシュで口元を拭いた。
 「話したいことが一杯ありますのに、結局今は何を言えばいいのか、分かりませんわ」
顔を俯せて、セシリアの言葉が一旦途絶えた。
 
 「……父が母の顔色を見て生きるのは、ISが現れる前からでしたわ」
 暫く沈黙した後、再び口を開けたセシリアは、いきなり自分の親の話を始めた。
 「……」
 そして料理を貪りながらも、視線をセシリアに向けたまま、クリスは彼女の話を聞いていた。
 「母の言うことに、婿入りの父は何一つ逆らえませんでした。そしてそんな母が私に、男には負けないように教わり、私もそうして来た。なのに…」
 ここまで話して、セシリアが顔を上げて、まっすぐにクリスを見据えた。
 「あなたは今までどの男性達とも違います。わたくしを圧倒できる強さと、私に気を遣う寛容さがありますわ。そんなあなたのことを……」
 「オルコットさん」
 「は、はい!?」
 ずっと黙って聞いていたクリスが、口を開けた。
 「生身でISに勝てる人間が居るって、信じる?」
 「えっ、そんな、有り得ませんわ!」
 「だが、事実には居たよ。接近戦でISを装着した俺を負かした生身の男は」
 「クレマンさんを?そんな……」
 信じられないって顔をしているセシリアを見て、クリスが苦笑した。
 「知ることだよ、オルコットさん。強さに性別も国籍も、そしてISを使えるかどうかも関係ないことを」
 「……覚えておきますわ」
 「それでいい」
 そう言って、クリスが席から立った。
 「じゃ、俺はこれで」
 「えっ!?」
 テーブルを見ると、クリスの料理は既に全部綺麗に片付けられたが、セシリアの料理はまだ殆ど食べてない。
 「まだ明日な」
 「えっ、ちょっ」
 止める間もなく、クリスは大量の食器を持って席から去って行った。
 そしてクリスが食堂から出て行く後姿を見て、セシリアが自分にしか聞こえない声で呟いた。
 「……でもやっぱり、私が一番知りたいのは、貴方のことですわよ」

~翌日~
 「織斑、お前には学園側から専用機を用意するそうだ」
 「断る! 俺は量産機で戦うぜ!」
 「いや、くれるなら貰っとけよ、一夏」
 という会話が、朝のホームルームにあった。