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IS  バニシングトルーパー 003-004

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 <グラビコンシステム、最適化終了。システムレベル3に固定、稼動率45%>
 外見に変化はないが、それは凶鳥シリーズの最大特徴である、重力を制御するシステムの最適化の完了を意味するメッセージだった。
 「……そういうのに頼るのは気が進まんが、一応試しておくか!」
 体勢を調整しつづ、クリスはテスラドライブの翼を変形させて、進行方向を変更した。
 「今だ!」
 セシリアの攻撃の間隔を狙って、爆発的に加速した。


 「もう突撃かしら?なら、好都合ですわ!」
 指示を送り、セシリアはビットを自分の四方に配置して、同時にライフルを構えた。
 「集中砲火を浴びなさいませ!」
 ビット四枚とライフル一丁からのビームが嵐のように、一直線で突っ込んでくるクリスへ降り注ぐ。

 「くっ!」
 回転して出来るだけのビームを避けつづも、エクスバインの加速の勢いが緩まない。エネルギーシールドのゲージが凄い速度で減って行くが、今は其れを気にすることなく、ただセシリアとの間合いを詰めるクリスに、ビットとライフルの一斉砲火を咆哮させているセシリアは、後退を選らばなかった。
 「ここからは、俺の間合いだ!」
 エネルギーシールドが残量1/3の所に、クリスは加速を止め、ファングスラッシャーを展開して手に握った。
 しかし、セシリアも慌てることなく、スカートアーマーを跳ね上らせた。
 「この武器をお忘れですか!」
 実弾タイプのビットから、ミサイルが飛び出す。
 「今だ!」
 この一瞬を狙って、クリスはグラビコンシステムを作動させた。
 だが、既に目の前に迫ったミサイルは外れることなく標的であるクリスに直撃して、爆発を起こした。
 「ふ、ふふ。素敵なディナー、頂きましたわよ!」
 残り少ないエクスバインのエネルギーシールドがミサイル二枚の直撃を食らっては、ただでは済まない。巻き起こる爆炎を見て、セシリアは勝利を確信した。

 だが、セシリアが勝利の喜びに浸す時間は、一瞬で終わった。
 「切り裂け!ファングスラッシャー!!」
 「きゃっ!!」
 突然に、煙の中から十字型のブーメラン飛び出して、セシリアのレーザーライフルに直撃して両断して、すぐに煙の中に戻った。
 「ま、まさか」
 両断されたライフルを捨て、セシリアがショートブレードを呼び出して構える。
 煙が晴れていく、そこに見えたのは、まだ健在のクリスと彼の蒼い鎧、エクスバインだった。
 「……まさか消耗がこうも激しいとは」
 視界にある、シールドゲージとは別の、赤く点滅しているゲージを見て、クリスの顔に苦笑が浮かべた。

 「織斑先生、今のは!!」
 「ああ、映像を巻き戻してくれ」
 「はい!」
 モニター室で観戦していた先生ふたりは、クリスとエクスバインの健在に驚くより、さっきの一瞬で感じた違和感が気になった。
 真耶は手早くキーボードを叩いて、さっきの一連をスロー再生する。
 「これは……!」
 「うむ……なるほど」
 画像にもう一度スロー再生して、真耶と千冬はようやくその理由を確認できた。
 ミサイルがエクスバインの直撃する直前に、エクスバインの前にある“見えない何か”にあったて、爆発した。
 「何らかのバリアでしょか?」
 結果から見れば、それはエクスバインの何らか防御手段と考えた真耶は、千冬の意見を聞く。
 「……あれは恐らく、エクスバインが作り出した重力の壁、グラビトン・ウオールだ。クレマンはミサイルの直撃の直前に展開して、被弾を避けたのだろう。まったく、ハースタル機関の技術力には恐れ入る」
 千冬は資料から一枚を取り出して机に置いて、真耶に見せる。
 「重力の壁……それではオルコットさんの攻撃はほぼ通用しないではありませんか!」
 資料に書かれている技術データを読んだ真耶は、驚嘆な声を上げた。
 「それはそうだが、どうやらこの絶対防御は大量のエネルギーを使うらしいから、発生装置の内蔵エネルギーでは、一回に数秒しか発動できないし、再発動にはかなりのチャージが必要らしい。」
 「数秒でも十分凄いですよ!」
 「……そうだな」
 後輩の言葉を聞き流しながら、資料を机に置いた千冬は、腕を組んで視線をモニターに戻した。
画面に映っているクリスは既に反撃を始めた。


 本命のライフルを失って、距離をとってビットで囲むだけでは致命的ダメージを与え難い。幸い相手のシールドゲージ残量はもうかなり厳しい筈。どうやって先の直撃から免れたのかは分からないが、もう一度至近距離に誘い込んで打撃を加えれば勝利を収められる。
 そう思って、セシリアはあえて距離を取らずに、ショートブレードを握り締めた。

 だが、その考えは既にクリスに読まれていた。
 「まずはこっちに来い!」
 右腕に取り付いた長方形ケースの後端にある蓋が開き、クリスが腕を大きく振った。
 「いけぇ!!」
 中から飛び出したのは、有線式のチャクラムだった。
 「チャクラムなんて、早々当るものではありませんわよ!」
 セシリアは横へ移動して、簡単な動きで回避しようとするが、この一瞬で、セシリアの回避動作でビットの攻撃を止んた。
 だがそれを見て、クリスの口元に勝利を確信したような自信の笑みが浮かべた。
 「それはどうかな!」
 「なっ!」
 クリスの腕が動き一つしなかったが、セシリアが避けたはずだったチャクラムは、途中からあり得ない方向へ進路を曲がり、セシリアを捉えた。
 「なんなですの?これは!」
 「考える余裕はあるのか!」
 チャクラムについてるワイヤーが、セシリアに巻き付けて、彼女の上半身を縛った。セシリアが身動きを取れないと確信したクリスは、右腕に力を篭めて、彼女を自分へ引き寄せる。
 「きゃ……!」
 ワイヤーに拘束され、自由に動けないセシリアはバランスを崩され、そのまま引き寄せられていく。そしてこれを機に一気に距離を詰めたクリスは、武装メニューから取って置きのものを呼び出した。
 エクスバインの左腕の外側に光の粒子が集い、約1.5メートル長さの大型ライフルが現れた。
 グラビトンライフル――エクスバインのグラビコンシステムと連動して重力子を収束し、射線上に放出して、命中した対象に異常重力による加圧を加えて破壊するという、現時点でエクスバインの最も強力な武器である。取り回しの悪さと発射の遅さからして少々癖があるが、その威力はまさに切り札と呼ぶに相応しい。
 クリスの腕力に引っ張られて身動き取れないセシリアに照準を合わせと、銃身が低く唸り始めた。
 「これで一気に逆転させてもらう!  デッド・エンド・シュートだ!!」
 クリスの叫びに応じたように、瞬間、グラビトンライフルの銃口から黒いエネルギーが膨れあがった。
 「きゃぁぁぁぁ――」
 重力の砲撃が、射線上のセシリアに直撃して、彼女のエネルギーシールドゲージが一瞬で空になった。

 「試合終了、勝者、クリストフ・クレマンくんです!」
 第一試合の結果を告げる声が、アリーナに響き渡った。