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零崎空識の人間パーティー 1-6話

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<第一話 零崎開催> 

 そこは畳が敷かれ、襖に囲まれた和室であった。
 その部屋で、二人の人間が向かい合うように座っていた。
 一人は、二十歳にも満たない青年で、白のシャツに黒のジャケットをはおり、紺のジーンズを穿いた今時の青年といった感じだが、腰のところに、刀などを納める鞘のような物を差して、足を崩して座っていた。
 もう一人は、二十歳後半ぐらいの女性で、この和室に合わない格好をしている青年とは反対に、この和室に合う桜の染めが施された着物を着て、座り方も青年とは反対に姿勢正しく正座で座っていた。
 この、まず向かい合って座ることがない二人の間には、和やかとは無縁の殺伐とした空気があった。
「まず、あなたにお聞きしたいのは」女が口を開いた。「なぜ、あなたが私の弟を殺したかです」
 女ができるだけ、弟を殺された憤りを面に出さないようにしているのは丁寧な口調と姿勢からわかるが、明らかに隠し切れていなかった。
「なぜって? 聞かれてもなー」そう言われて青年は困ったように頭を掻きながら答えた。「一応零崎(ぜろさき)である俺に人を殺す理由を聞かないで欲しいんだけどなー。零崎が人を殺す理由を持たない『殺人鬼』であることは常識だと思ってたんだけどー……。まぁ、あえて言うなら、俺が零崎であることがアンタの弟を殺した理由かなー?」
「……そうですね、零崎であるあなたに殺した理由を聞くなんて無駄でしたね」
 青年の全く反省も後悔も見えない態度に、女は憤りより呆れを覚え、これ以上話す意味がないと考え、手を少し挙げた。
 すると、襖を開け黒のタキシードを着たがっちりとした体型をした男が入ってきた。
 タキシードの男たちの手には、大口径の拳銃やら大型のナイフやらの人を殺すことだけに特化した凶器が握られていて、そのすべてが青年に向けられていた。
 だが、青年はそれに臆することなく、座ったままで目だけを動かし男たちの人数を数えた。
「九人ねえー」
 青年は自然と笑みをうかべていた。 それは楽しいといった種類の笑みではなく、おかしいといった感じだった。
「……何笑っているんですか?」
 この状況で笑っている青年を女は、奇異なものを見るような眼で見たが、すぐに理解することをあきらめ、周りの男に「殺せ」と短く命令した。
 青年の一番近くにいた男が、拳銃の撃鉄を起こした。 
 その瞬間、その男の両手首のところが切断され、畳の上に落ちた。
 座っている青年の手には、鞘から抜かれた西洋式の刀であるサーベルが握られていて。 その刀身から血が少し垂れていた。
「なっ、なんじゃこりゃあああああ!!」
 手があったところから豪快に真っ赤な血を噴き出しながら、某刑事ドラマの名台詞(せりふ)を叫んでいる男をしり目に、青年はゆっくり立ち上がり、サーベルについた血を一度振って払った。
「うっ……」 
 その姿に男たちはたじろいだ。
「教えといてあげる、俺、零崎空識(そらしき)は一対一より一対多数の方が得意なんだよなー」
 そう言い、青年――零崎空識はサーベルを構えた。
「パーティーに招待されたのは俺の方だけどー、にぎやかにしてあげるー」


「うじゃ、零崎を開催しようー!!」



<第二話 零崎空識>

「けっこう、盛り上がったかなー」
 と、呟いた空識以外に、その部屋で生きているものはすでになかった。
 畳の上には、もう元の姿が想像できないほどに切り刻まれた十人の死体が転がっていて、襖には血飛沫で作られた幻想的なアートがあった。
「もしかして俺には芸術家(アーティスト)の才能があるかも……。――てっ、あほか俺! 一作品作るごとに何人殺さないといけないんだよー!!」
 などと、だれも笑えない一人漫才をした空識の服には返り血一つ付いておらず、サーベルのみに血が付いていた。 
「うぬーー。落ちないなー」
 空識がサーベルに付いた血を落とそうと何度も振ってみたが、あまり落ちないので仕方がなく、なにかで拭おうと辺りを見渡した。
「おっ、ラッキー」
 すると、死体の一つが着ている服に奇跡的に血で汚れていないところがあった。 
 すぐにそれでサーベルに付いた血を拭いだした。空識はそれが、自分に弟を殺され激怒していた女の着物だったなどとは、すこしも覚えていなかった。
「……あれー」サーベルに付いた血を拭い終わった後、空識はなにかに気づいたように血を拭った着物を見た。
「これって、けっこうお高いやつじゃんー! うわーもったいないー。 気づいてたら、血なんて拭わず売ったのにー」
 と、理由は一応わかるが、普通の人に納得することが出来ないことに落ち込んだ空識であったが。
「……まあー、仕方がないー。この家の有り金を全部パックて行くかー!って、これじゃあ俺『殺人鬼』じゃなくて、ただの『泥棒』じゃんー! 泥棒を雇うのはただじゃないと思うけどー!!」
 すぐに元のテンションに戻り、性質が悪いパーティをした後のようなこの部屋を、何の後ろ髪を引かれる気持ちもなく去って行った。
 
 零崎空識。
 彼は、正真正銘、殺人に理由がない、『殺人鬼』『零崎』の一人である。


<第三話 零崎遭遇>


 人には誰しも、二度と会いたくないという人がいるだろう。 もちろん、『殺人鬼』である零崎空識もその例外ではなく、そういう人が何人かいる。
 そして今、その中でも一番会いたくない男が空識の前に立っていた。
 時刻は日が暮れかけている午後五時過ぎ。
 場所は表の道から二本ほどはずれた人気がなく道幅も狭い裏道。 空識が隠れ家の一つに帰ろうとその道を訪れると。
 そこに男は道をふさぐように悠然と立っていた。 日本人離れした背の高さ、しかしかなりの痩せ身で大柄という感じではない。 身長のことを差し引いても尚異常なくらい手足が長い。 背広にネクタイ、オールバック、銀縁の眼鏡、しかしそんな当たり前のファッションが驚くほど似合わない。 見るものになんだか、針金細工みたいだなと、思わせるシルエットであった。
「はあー」空識はため息と共にに悪態をついた。「なんでー、こんなところに双識(そうしき)さんがいるのー? マジで会いたくなかったですがー」
 だが、双識と呼ばれたその男は、空識の悪態など大して気にする様子なく軽く聞き流し。 背広の内側から鋏のような物を取り出し指先で回転させ始めた。
「いや、空識くん。 私だってキミに会いたくはなかったよ」双識は少しめんどくさそうに言った。
「人識の気配だと思って待っていたんだが……。空識くんだったか」  
 空識はその言葉にわが意を得たばかりに言う。
「だったらー、このまま合わなかったってことにしましょうーよ。」
「いやそれはだめだ」だが双識はすぐに首を振り空識の提案を却下した。
「私は『零崎』の長兄として。 家族殺しのキミをこのまま放っておくわけにはいかない」
 そう言い、双識は鋏のような物の回転を止め、刃先を空識に向けた。