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なのはもまた、芳佳を見ながら呟き、かつて自分も期待を寄せて同じように育て、今はStriker(ストライカー)とまで呼ばれるようになった少年少女達を思い浮かべていた。
　
「あぁ。さて、始めるぞ！」
なのはに短く返すと、美緒は再び声を張り上げて訓練を再開する。
　
やがて訓練が終了し、四人は宿舎まで戻ってくる。なのはとは、途中で別れた。
　
「つ、疲れたー…」
「そうだね…」
「もうヘトヘトですわ…。早くシャワーを浴びたいですわね」
余程気合いを入れられたのか、ぐったりしながら三人は宿舎の中を歩く。
　
「少佐、ちょっと良いかしら？」
と、四人の背後から声がかかる。
「ん、ミーナか。どうした？」
美緒は振り向き用件を訊く。

「これから例の会議なんだけど…あなたも一緒に来てもらえないかしら？」
「なるほど…わかった」
小声で話すミーナに、美緒もまた小声で返す。
芳佳から「坂本さん？」と訊かれると、美緒は「私は用が出来た。だから先に行っていいぞ」と三人に言って、詳しい話を聞くためミーナと共に一度部屋へと向かうことにした。
　
　
話を聞き終えた美緒と話を終えたミーナは、専用のヘリで時空管理局の地上本部へと向かう。
そこで通された会議室には、クロノ・ハラオウンや八神はやてを始め、管理局の上層部の人間が集っていた。
美緒とミーナは、その向かいの席に腰を降ろす。
　
「では、これより会議を執り行います。本日の主な議題は知っての通り、先日突如現れたネウロイと呼ばれるアンノウンについてです」
司会進行役の局員が議事を執る。
　
「双方に訊きたいことが多々あるかとは思いますが、まずはお互いの紹介をお願いします」進行役の局員がそう言うと、管理局側の上層部の人間が順々に挨拶をしていく。
　
「次は八神二佐、お願いします」
進行役の局員に指名されると、茶髪の少女とも見て取れそうな年若い女性が立ち上がる。
　
「八神はやてです。階級は二佐。時空管理局で主に古代の遺失物…ロストロギアって言われてる物品の調査をしてます。よろしくお願いします」
流暢な関西訛りで彼女は自身の自己紹介をする。やがて紹介を終えると一礼して席に就く。
　
「最後はハラオウン提督、お願いします」
進行役の局員が恐らくこの中で一番上の階級の人間を指名する。
　
「クロノ・ハラオウンです。階級は提督。時空管理局の本局に勤めています。よろしくお願いします」
指名された男性は立ち上がり、短い自己紹介のあと一礼する。
　
「ハラオウン…というと、もしかしてハラオウン執務官の…？」
ミーナが聞き覚えのあるラストネームのため質問する。
　
「妹をご存知でしたか。そういえば、昨日の戦いにも参加していたんでしたね」
訊かれたクロノはそう答える。が、今は会議中のためプライベートなことは語ろうとせず、ミーナもまた今はそれ以上突っ込みはしなかった。
　
「では続いて、第501統合戦闘航空団の代表の方にお願いしたいと思います」
進行役の局員が二人を指すと、ミーナと美緒はそれぞれ自己紹介をする。

「では、お互いの紹介が済んだところで本題に入ります」
進行役の局員が議事を進めていく。
　
　
一方その頃、旧・六課の隊舎前に六課所属だったティアナ・ランスターは到着した。
　
『ここに来るのも、久しぶりね…』
送ってもらった車から降りた彼女は、在りし日を思い出しながら隊舎の前に立つ。
　
『でも、八神二佐はどうして急に招集を…？』
感傷に浸りながらも自分をこの場へと呼び出した元・部隊長のことを考える。
　
「ティ〜〜アっ♪」
「!?」
考え事をしていたティアナは、背後から突然胸を揉まれ顔を真っ赤にして驚くも声を上げることが出来ず、また犯人が誰なのか一瞬で理解し、その名を叫ぶ。　
　
「―――スバルッ!!!」
名を呼ばれた本人はと言えば、揉むのを止めずあまつさえ「2年経っても、あんま成長してないね」と言って少しがっかり気味に手を離した。
　
「いきなり出てきて何言ってんのよ」
まだ顔の赤いティアナは成長してないと言われ少しムッとしながらそう言い、「ところで、どうしてアンタもいるの？」と疑問を口にする。
　
「え？だって、私も八神二佐に呼ばれたんだよ」
さも当然のようにスバルは言う。それだけでなく、「他にエリオやキャロ達にも声がかかってるみたいだよ」とも言う。
　
「スバル達も？一体、どうして…」
ティアナは考える。自分達、元・機動六課のメンバーが招集されつつある意味を。いや、恐らく彼女がここに来る時点で推察していたことが、あるいは正しいのかも知れない。
　
　
「―――…それは本当か？」
数時間前。会議へ出向く前、美緒はミーナからこの会議がどんなものかを聞かされていた。
　
「えぇ、本当よ」
美緒の言葉に対して事実だけを告げたミーナは短く肯定した。
　
「あちらの精鋭を集めた対ネウロイ用の部隊、ということか」
「えぇ。今回の会議は、それを正式に結成するためのものといったところね」
「それなら、私達が参戦しない理由はないな」
「そうね。ネウロイのことを少なからずでも分かっているのは私達の方なのだから」
この世界が自らの力を用いてネウロイと戦おうとしている。統合戦闘航空団は、そこへ力を貸すことにしたのだ。
　
そして、時は現在に至る。

「では、以上を持ちまして本日の会議を…」
進行役の局員が言いかけたその時、通信が入る。
　
〔こちらは時空管理局・自然保護部隊所属のエリオ・モンディアル二等陸士とキャロ・ル・ルシエ二等陸士です。誰でも構いません、聞こえていたら応答願います！〕
声の主は以前、機動六課に所属していた赤髪の少年だった。そしてその声色からは若干の焦りが感じ取れた。
　
「エリオか。どないしたんや？」
これに応じたのは、彼の元上官である八神はやて。大方の予想はつけつつも、彼等に向けて彼女は問う。
　
〔例の雲から敵が出現しました。数は…ざっと見ただけでも数十はいます。私達だけでは、とても…〕
今度は桃色の髪をした小柄な少女の方が質問に答えた。
　
「ほんなら、今から援軍を向かわせる。その間、二人は何とかその場で持ちこたえててほしいんやけど…」
〔了解しました。何とか、やってみせます〕
「頼んだで！」
二人との通信を一時終了すると、はやては即座に指揮を執り始める。
　
「501統合戦闘航空団の皆さんは、すぐに出撃準備を。私達の方は高町一尉とハラオウン執務官、それとシグナム達に緊急出動の要請を」
はやての指示を受け、局員達はすぐさま行動に移る。
　
「ミーナ、私達も行こう」
「えぇ、そうね」
統合戦闘航空団の二人も、送迎のヘリへと向かう。
　
　
「こんなこともあろうかと持ってきておいて正解だったな」
ヘリへと戻った美緒は、自分の愛機である紫電改を見ながら言う。
　
「私は一足先に現場へ向かう。ミーナは皆に通信を繋いで出撃するよう伝えてくれ」
「わかったわ。気を付けて」
ミーナの言葉を聞くと美緒はストライカーユニットを装着、すでに飛び立っているヘリの後部ハッチを開けてもらい、発艦準備に移る。
　
「坂本美緒、出る！」