黒と白の狭間でみつけたもの (2)
〈 第2章 旅のはじめは3人で 〉
「ねぇねぇ、みんなポケモンを選んだことだし、ポケモン勝負しようよ!」
ミジュマルを抱きしめて、はしゃいでいるベルが言い出した。
確かに早くポケモン勝負やってみたい。
けれど……。
「ベル……、さすがに部屋の中じゃあまずいよ」
下にはお母さんがいるし、うるさくしたり、物を壊しでもしたら、怒られるかもしれない。
「そうだよベル、まだ弱いポケモンとはいえ、家の中でポケモン勝負はダメだよ」
「大丈夫だって!小さいポケモンなら、家の中で戦ってるのをテレビでみたことがあるし、きっと大丈夫。それに、まだこの子たち弱いんでしょ?早く戦わせて育ててあげなきゃ! 勝負よ、トウコ!」
「ミジュー!!」
ベルのミジュマルが、やる気になってツタージャに向かって勢いよくみずでっぽうを当ててきた。
みずびだしになったツタージャは、いらいらしてミジュマルをにらみつける。
「タジャ、タジャ!」
早く指示をくれと、ツタージャはトウコを見てきた。
ツタージャも、ベルもすっかりやる気だ。
こうなったら仕方ない。
「ああ、もう!どうなっても知らない!バトルするなら負けないんだから!」
トウコはベルに向き合うと、ツタージャに言い放つ。
「ツタージャ!たいあたり!」
「タージャ!!」
ツタージャはミジュマルに向かって走り出した!
「あたしだって、負けないよー! ミジュマル、避けてー!」
ミジュマルは、トウコの机に飛び乗った。
ツタージャは、机を蹴り上げて、ミジュマルに向かって飛びかかる!
ゴトン、ゴトン。
ガタン、パリン。
バタバタ、ドカドカ、ガッシャーン!!
逃げ回るミジュマルを追いかけて、最後にツタージャがたいあたりでつっこむと、ミジュマルは目を回して倒れ込んでしまった。
「やった!」
ツタージャは勝って得意顔だ。
「ふぇぇ、降参だよトウコ……。トウコ、はじめてなのにすごいよ。もしかして、すごいトレーナーになれるんじゃない? あたし、そんな気がする」
「え?そうかなぁ」
ベルに褒められて照れているトウコに、チェレンの声が飛んできた。
「ちょっと、2人とも。周りを見れば?」
チェレンに言われて、ハッとした。
そういえば、夢中になっててチェレンがいるのも忘れてた。
周りを見渡すと、トウコの部屋はとんでもない現状になっていた。
机は脚が折れてるし、テレビもタンスも本棚も倒れている。
花瓶なんて割れちゃったし、壁も床も泥だらけだ。
「うわぁ!何コレ?」
「わわわぁ、どうしよ何コレ!」
お母さんに怒られるよね。これ。
「すごーい!ポケモンってこんなに小さいのに!こんな力があるんだねぇ!」
ベルが感心したように言った。
この状況で感心するとは、やっぱりベルってちょっとずれてる。
「確かにすごい…。お母さんと喧嘩したってこんなにならないよ」
青くなっているトウコをみて、ベルが慌てて言った。
「あ…、ごめんねトウコ。私が勝手にポケモン勝負はじめちゃって……」
「いいのいいの、私も勝負に乗っかったわけだし、楽しかったし」
もう一緒に怒られたら、怒られちゃえばいいや。
開き直っている2人にチェレンは呆れながら言った。
「全く、しょうがないな君たちは。ほら、傷ついたポケモンの回復をしてあげないと」
チェレンは持っていたキズぐすりで、ツタージャとミジュマルのキズを回復してくれた。
「あ、ねぇ。チェレンはまだポケモン勝負してないよね。チェレンもポケモン勝負してみたら?」
ベルが言う。
「チェレンなら、ポケモンに詳しいし、あたしみたいにしっちゃかめっちゃかにしないから、部屋もこれ以上汚さないで、上手に戦えるでしょ?」
確かに、チェレンは3人の中で一番、ポケモンにも、トレーナーバトルにも詳しい。
もうこの際、部屋が荒れても関係ないわけだし、チェレンとも戦ってみたい。
トウコとベルがじぃっと見ていると、チェレンは困ったように言った。
「もちろん僕の知識があれば、これ以上部屋を汚さずに戦うこともできるよ。でも、ここはトウコの家なわけだし……」
「もう、頭硬いんだから。この際部屋がどうなったって一緒じゃない。やろうよバトル」
「いいのかい?」
「いいんだってば」
チェレンは少し黙って考えると、やっと決断したようだった。
「そうだね、何より君たちだけでポケモン勝負を楽しむのは、フェアじゃないよな。それじゃあ、遠慮なく相手をしてもらうよ!」
「そうこなくっちゃ」
元気になったツタージャが、チェレン達の前に飛び出した。
チェレンのポカブが、負けまいとツタージャをにらみつけながら、じりじりと近づく。
「初めてのポケモンバトル。僕が君の強さをひきだしてみせるからね!ポカブ!!」
「こっちだって、負けない。もう一勝するわよ!ツタージャ!!」
「タジャー!」
ツタージャがポカブに飛びかかった!
すばやさはこっちの方が勝ってる。
でも、ポカブの方が攻撃力が勝っていた。
「ポカブ、たいあたりだ!」
先制をとったものの、攻撃を避けられたツタージャは、まともにポカブの攻撃をくらった。
「タジャ!」
たいあたりで壁に打ち付けられたツタージャは、もう一度向かってきたポカブの攻撃を慌ててよけた。
もう一発くらったらやばいかもしれない。
「ツタージャ避けて!」
「ポカブ、追いかけろ!」
すばやさだけは、勝るからか、ツタージャは何度も攻撃を避けられた。
でも、これだけじゃあ、らちがあかない。
こうなったら!
「ツタージャ!走って!」
「逃げてるだけじゃあ、何にもならないよ」
そんなのわかってる。
でも、絶対どうにかなるはず!この部屋なら!
ポカブは逃げ回るツタージャにイライラしているようだった。
きっと、そろそろ追いかけるのも限界のはずだ。
無造作に部屋を走りまわっているツタージャが、ポカブの前に直線上になったとき、そのチャンスは訪れた。
「ポカブ、たいあたりだ!」
とどめと思われる最後のその一声を待っていた。
「ツタージャ、ジャンプ!」
「ツタッ!」
声にあわせて、ツタージャがジャンプした!
「しまった!ポカブとまれ!」
後ろから、たいあたりを当てようとしていたポカブが、慌てるがもう遅い。
勢いを殺しきれないポカブは、そのまま壁に向かって頭から突っ込んだ。
「ポカ…」
頭を打ち付けて目を回す。
戦闘不能。
ツタージャの勝ちだ!
「やった!うまくいったわ!」
でも、さすがチェレン、危なかったわ。
「やられた」
チェレンがくやしそうに言った。
でも、笑ってる。
ベルも負けたけど笑ってる。
そうだよね、楽しかったもん。
初めてのポケモン勝負。
「ありがとう、チェレン。楽しかったわ」
「こちらこそ。初めてのバトルで思わぬ不覚を取ったけど、ようやくトレーナーになれたんだな」
「ほんとだねぇ~。これから旅ができるなんて、あたしとっても楽しみなの」
ベルが嬉しそうに微笑むのを見て、トウコも嬉しくなった。
「ねぇねぇ、みんなポケモンを選んだことだし、ポケモン勝負しようよ!」
ミジュマルを抱きしめて、はしゃいでいるベルが言い出した。
確かに早くポケモン勝負やってみたい。
けれど……。
「ベル……、さすがに部屋の中じゃあまずいよ」
下にはお母さんがいるし、うるさくしたり、物を壊しでもしたら、怒られるかもしれない。
「そうだよベル、まだ弱いポケモンとはいえ、家の中でポケモン勝負はダメだよ」
「大丈夫だって!小さいポケモンなら、家の中で戦ってるのをテレビでみたことがあるし、きっと大丈夫。それに、まだこの子たち弱いんでしょ?早く戦わせて育ててあげなきゃ! 勝負よ、トウコ!」
「ミジュー!!」
ベルのミジュマルが、やる気になってツタージャに向かって勢いよくみずでっぽうを当ててきた。
みずびだしになったツタージャは、いらいらしてミジュマルをにらみつける。
「タジャ、タジャ!」
早く指示をくれと、ツタージャはトウコを見てきた。
ツタージャも、ベルもすっかりやる気だ。
こうなったら仕方ない。
「ああ、もう!どうなっても知らない!バトルするなら負けないんだから!」
トウコはベルに向き合うと、ツタージャに言い放つ。
「ツタージャ!たいあたり!」
「タージャ!!」
ツタージャはミジュマルに向かって走り出した!
「あたしだって、負けないよー! ミジュマル、避けてー!」
ミジュマルは、トウコの机に飛び乗った。
ツタージャは、机を蹴り上げて、ミジュマルに向かって飛びかかる!
ゴトン、ゴトン。
ガタン、パリン。
バタバタ、ドカドカ、ガッシャーン!!
逃げ回るミジュマルを追いかけて、最後にツタージャがたいあたりでつっこむと、ミジュマルは目を回して倒れ込んでしまった。
「やった!」
ツタージャは勝って得意顔だ。
「ふぇぇ、降参だよトウコ……。トウコ、はじめてなのにすごいよ。もしかして、すごいトレーナーになれるんじゃない? あたし、そんな気がする」
「え?そうかなぁ」
ベルに褒められて照れているトウコに、チェレンの声が飛んできた。
「ちょっと、2人とも。周りを見れば?」
チェレンに言われて、ハッとした。
そういえば、夢中になっててチェレンがいるのも忘れてた。
周りを見渡すと、トウコの部屋はとんでもない現状になっていた。
机は脚が折れてるし、テレビもタンスも本棚も倒れている。
花瓶なんて割れちゃったし、壁も床も泥だらけだ。
「うわぁ!何コレ?」
「わわわぁ、どうしよ何コレ!」
お母さんに怒られるよね。これ。
「すごーい!ポケモンってこんなに小さいのに!こんな力があるんだねぇ!」
ベルが感心したように言った。
この状況で感心するとは、やっぱりベルってちょっとずれてる。
「確かにすごい…。お母さんと喧嘩したってこんなにならないよ」
青くなっているトウコをみて、ベルが慌てて言った。
「あ…、ごめんねトウコ。私が勝手にポケモン勝負はじめちゃって……」
「いいのいいの、私も勝負に乗っかったわけだし、楽しかったし」
もう一緒に怒られたら、怒られちゃえばいいや。
開き直っている2人にチェレンは呆れながら言った。
「全く、しょうがないな君たちは。ほら、傷ついたポケモンの回復をしてあげないと」
チェレンは持っていたキズぐすりで、ツタージャとミジュマルのキズを回復してくれた。
「あ、ねぇ。チェレンはまだポケモン勝負してないよね。チェレンもポケモン勝負してみたら?」
ベルが言う。
「チェレンなら、ポケモンに詳しいし、あたしみたいにしっちゃかめっちゃかにしないから、部屋もこれ以上汚さないで、上手に戦えるでしょ?」
確かに、チェレンは3人の中で一番、ポケモンにも、トレーナーバトルにも詳しい。
もうこの際、部屋が荒れても関係ないわけだし、チェレンとも戦ってみたい。
トウコとベルがじぃっと見ていると、チェレンは困ったように言った。
「もちろん僕の知識があれば、これ以上部屋を汚さずに戦うこともできるよ。でも、ここはトウコの家なわけだし……」
「もう、頭硬いんだから。この際部屋がどうなったって一緒じゃない。やろうよバトル」
「いいのかい?」
「いいんだってば」
チェレンは少し黙って考えると、やっと決断したようだった。
「そうだね、何より君たちだけでポケモン勝負を楽しむのは、フェアじゃないよな。それじゃあ、遠慮なく相手をしてもらうよ!」
「そうこなくっちゃ」
元気になったツタージャが、チェレン達の前に飛び出した。
チェレンのポカブが、負けまいとツタージャをにらみつけながら、じりじりと近づく。
「初めてのポケモンバトル。僕が君の強さをひきだしてみせるからね!ポカブ!!」
「こっちだって、負けない。もう一勝するわよ!ツタージャ!!」
「タジャー!」
ツタージャがポカブに飛びかかった!
すばやさはこっちの方が勝ってる。
でも、ポカブの方が攻撃力が勝っていた。
「ポカブ、たいあたりだ!」
先制をとったものの、攻撃を避けられたツタージャは、まともにポカブの攻撃をくらった。
「タジャ!」
たいあたりで壁に打ち付けられたツタージャは、もう一度向かってきたポカブの攻撃を慌ててよけた。
もう一発くらったらやばいかもしれない。
「ツタージャ避けて!」
「ポカブ、追いかけろ!」
すばやさだけは、勝るからか、ツタージャは何度も攻撃を避けられた。
でも、これだけじゃあ、らちがあかない。
こうなったら!
「ツタージャ!走って!」
「逃げてるだけじゃあ、何にもならないよ」
そんなのわかってる。
でも、絶対どうにかなるはず!この部屋なら!
ポカブは逃げ回るツタージャにイライラしているようだった。
きっと、そろそろ追いかけるのも限界のはずだ。
無造作に部屋を走りまわっているツタージャが、ポカブの前に直線上になったとき、そのチャンスは訪れた。
「ポカブ、たいあたりだ!」
とどめと思われる最後のその一声を待っていた。
「ツタージャ、ジャンプ!」
「ツタッ!」
声にあわせて、ツタージャがジャンプした!
「しまった!ポカブとまれ!」
後ろから、たいあたりを当てようとしていたポカブが、慌てるがもう遅い。
勢いを殺しきれないポカブは、そのまま壁に向かって頭から突っ込んだ。
「ポカ…」
頭を打ち付けて目を回す。
戦闘不能。
ツタージャの勝ちだ!
「やった!うまくいったわ!」
でも、さすがチェレン、危なかったわ。
「やられた」
チェレンがくやしそうに言った。
でも、笑ってる。
ベルも負けたけど笑ってる。
そうだよね、楽しかったもん。
初めてのポケモン勝負。
「ありがとう、チェレン。楽しかったわ」
「こちらこそ。初めてのバトルで思わぬ不覚を取ったけど、ようやくトレーナーになれたんだな」
「ほんとだねぇ~。これから旅ができるなんて、あたしとっても楽しみなの」
ベルが嬉しそうに微笑むのを見て、トウコも嬉しくなった。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (2) 作家名:アズール湊