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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (2)

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〈 第2章 旅のはじめは3人で 〉

「ねぇねぇ、みんなポケモンを選んだことだし、ポケモン勝負しようよ!」

ミジュマルを抱きしめて、はしゃいでいるベルが言い出した。

確かに早くポケモン勝負やってみたい。

けれど……。

「ベル……、さすがに部屋の中じゃあまずいよ」

下にはお母さんがいるし、うるさくしたり、物を壊しでもしたら、怒られるかもしれない。

「そうだよベル、まだ弱いポケモンとはいえ、家の中でポケモン勝負はダメだよ」

「大丈夫だって!小さいポケモンなら、家の中で戦ってるのをテレビでみたことがあるし、きっと大丈夫。それに、まだこの子たち弱いんでしょ?早く戦わせて育ててあげなきゃ! 勝負よ、トウコ!」

「ミジュー!!」

ベルのミジュマルが、やる気になってツタージャに向かって勢いよくみずでっぽうを当ててきた。

みずびだしになったツタージャは、いらいらしてミジュマルをにらみつける。

「タジャ、タジャ!」

早く指示をくれと、ツタージャはトウコを見てきた。

ツタージャも、ベルもすっかりやる気だ。

こうなったら仕方ない。

「ああ、もう!どうなっても知らない!バトルするなら負けないんだから!」

トウコはベルに向き合うと、ツタージャに言い放つ。

「ツタージャ!たいあたり!」

「タージャ!!」

ツタージャはミジュマルに向かって走り出した!

「あたしだって、負けないよー! ミジュマル、避けてー!」

ミジュマルは、トウコの机に飛び乗った。

ツタージャは、机を蹴り上げて、ミジュマルに向かって飛びかかる!

ゴトン、ゴトン。

ガタン、パリン。

バタバタ、ドカドカ、ガッシャーン!!

逃げ回るミジュマルを追いかけて、最後にツタージャがたいあたりでつっこむと、ミジュマルは目を回して倒れ込んでしまった。

「やった!」

ツタージャは勝って得意顔だ。

「ふぇぇ、降参だよトウコ……。トウコ、はじめてなのにすごいよ。もしかして、すごいトレーナーになれるんじゃない? あたし、そんな気がする」

「え?そうかなぁ」

ベルに褒められて照れているトウコに、チェレンの声が飛んできた。

「ちょっと、2人とも。周りを見れば?」

チェレンに言われて、ハッとした。

そういえば、夢中になっててチェレンがいるのも忘れてた。

周りを見渡すと、トウコの部屋はとんでもない現状になっていた。

机は脚が折れてるし、テレビもタンスも本棚も倒れている。

花瓶なんて割れちゃったし、壁も床も泥だらけだ。

「うわぁ!何コレ?」

「わわわぁ、どうしよ何コレ!」

お母さんに怒られるよね。これ。

「すごーい!ポケモンってこんなに小さいのに!こんな力があるんだねぇ!」

ベルが感心したように言った。

この状況で感心するとは、やっぱりベルってちょっとずれてる。

「確かにすごい…。お母さんと喧嘩したってこんなにならないよ」

青くなっているトウコをみて、ベルが慌てて言った。

「あ…、ごめんねトウコ。私が勝手にポケモン勝負はじめちゃって……」

「いいのいいの、私も勝負に乗っかったわけだし、楽しかったし」

もう一緒に怒られたら、怒られちゃえばいいや。

開き直っている2人にチェレンは呆れながら言った。

「全く、しょうがないな君たちは。ほら、傷ついたポケモンの回復をしてあげないと」

チェレンは持っていたキズぐすりで、ツタージャとミジュマルのキズを回復してくれた。

「あ、ねぇ。チェレンはまだポケモン勝負してないよね。チェレンもポケモン勝負してみたら?」

ベルが言う。

「チェレンなら、ポケモンに詳しいし、あたしみたいにしっちゃかめっちゃかにしないから、部屋もこれ以上汚さないで、上手に戦えるでしょ?」

確かに、チェレンは3人の中で一番、ポケモンにも、トレーナーバトルにも詳しい。

もうこの際、部屋が荒れても関係ないわけだし、チェレンとも戦ってみたい。

トウコとベルがじぃっと見ていると、チェレンは困ったように言った。

「もちろん僕の知識があれば、これ以上部屋を汚さずに戦うこともできるよ。でも、ここはトウコの家なわけだし……」

「もう、頭硬いんだから。この際部屋がどうなったって一緒じゃない。やろうよバトル」

「いいのかい?」

「いいんだってば」

チェレンは少し黙って考えると、やっと決断したようだった。

「そうだね、何より君たちだけでポケモン勝負を楽しむのは、フェアじゃないよな。それじゃあ、遠慮なく相手をしてもらうよ!」

「そうこなくっちゃ」

元気になったツタージャが、チェレン達の前に飛び出した。

チェレンのポカブが、負けまいとツタージャをにらみつけながら、じりじりと近づく。

「初めてのポケモンバトル。僕が君の強さをひきだしてみせるからね!ポカブ!!」

「こっちだって、負けない。もう一勝するわよ!ツタージャ!!」

「タジャー!」

ツタージャがポカブに飛びかかった!

すばやさはこっちの方が勝ってる。

でも、ポカブの方が攻撃力が勝っていた。

「ポカブ、たいあたりだ!」

先制をとったものの、攻撃を避けられたツタージャは、まともにポカブの攻撃をくらった。

「タジャ!」

たいあたりで壁に打ち付けられたツタージャは、もう一度向かってきたポカブの攻撃を慌ててよけた。

もう一発くらったらやばいかもしれない。

「ツタージャ避けて!」

「ポカブ、追いかけろ!」

すばやさだけは、勝るからか、ツタージャは何度も攻撃を避けられた。

でも、これだけじゃあ、らちがあかない。

こうなったら!

「ツタージャ!走って!」

「逃げてるだけじゃあ、何にもならないよ」

そんなのわかってる。

でも、絶対どうにかなるはず!この部屋なら!

ポカブは逃げ回るツタージャにイライラしているようだった。

きっと、そろそろ追いかけるのも限界のはずだ。

無造作に部屋を走りまわっているツタージャが、ポカブの前に直線上になったとき、そのチャンスは訪れた。

「ポカブ、たいあたりだ!」

とどめと思われる最後のその一声を待っていた。

「ツタージャ、ジャンプ!」

「ツタッ!」

声にあわせて、ツタージャがジャンプした!

「しまった!ポカブとまれ!」

後ろから、たいあたりを当てようとしていたポカブが、慌てるがもう遅い。

勢いを殺しきれないポカブは、そのまま壁に向かって頭から突っ込んだ。

「ポカ…」

頭を打ち付けて目を回す。

戦闘不能。

ツタージャの勝ちだ!

「やった!うまくいったわ!」

でも、さすがチェレン、危なかったわ。

「やられた」

チェレンがくやしそうに言った。

でも、笑ってる。

ベルも負けたけど笑ってる。

そうだよね、楽しかったもん。

初めてのポケモン勝負。

「ありがとう、チェレン。楽しかったわ」

「こちらこそ。初めてのバトルで思わぬ不覚を取ったけど、ようやくトレーナーになれたんだな」

「ほんとだねぇ~。これから旅ができるなんて、あたしとっても楽しみなの」

ベルが嬉しそうに微笑むのを見て、トウコも嬉しくなった。