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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (2)

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「さてと、じゃあ、部屋のことを君のママに謝らないといけないね」

「あーそうだった、すっかり忘れてたけど……」

改めてみるとヒドイ部屋だ。

まぁ、でもいっか。

チェレンは持っていたキズぐすりで、ポカブとツタージャのキズを回復させると、お母さんがいる1階へと階段を降りていった。トウコもツタージャを抱えてその後について行く。

「あー待って!わたしもいく!」

ベルが慌てて2人を追いかけた。

1階につくと、チェレンはもうお母さんに声を掛けていた。

「騒がしくて、本当にすみませんでした」

「すみませんでした」

トウコは少し硬くなって、チェレンの後ろに隠れた。

追いついたベルは、チェレンの横に立って、慌てて謝った。

「すみませんでした。あたしがね、ポケモン勝負に誘っちゃったから。あのう…お片付け……」

「ああ、片付け?いいの、いいの!そんなのは私がやっておくから」

お母さんの意外な答えに、トウコは目を丸くした。

いつもなら、私がちょっと部屋を汚しただけでも怒るくせに。

「全然、気にしなくて良いのよ。それにしても、ずいぶんにぎやかだったわね」

お母さんはなんだか嬉しそうだった。

きっと騒がしかったはずなのに。

こんなお母さん、初めて見るかも知れない。

「思い出しちゃうわねぇ。お母さんが昔、初めてポケモンをもらったときのことを。懐かしいわ。あの時はほんとに楽しくて、旅先でパパに出会って……。ってそんな話してる場合じゃなかったわ。あなた達、アララギ博士にポケモンをもらったお礼を言いに行ってきたら?」

そうだ、博士にお礼言わなきゃ。

「そうします。ベル、トウコ、僕は先に行ってるね」

チェレンはそう言って出ていった。

「じゃあ私も、いったん家にもどるから後でね!」

ベルもそう言って駆けだしていった。

当然、リビングに1人残される。

「さて、トウコ」

お母さんが真剣な表情でトウコに向き合った。

「はい!」

ビクリと身体が震えた。

もしかして、怒られる?

「トウコは、ツタージャを選んだのね。大事なパートナーよ。ちゃんと信頼関係をつくってね!こんな娘だけど、よろしくたのむわね」

お母さんはそう言って、ツタージャの頭をなでた。

ツタージャは、安心してと言いたいのか、コクコクと頷いた。

「早いものだわ。あなたがトレーナーなんて。旅の間、怪我にも病気にも気をつけるのよ。ほら、これを持って行きなさい。たまには連絡してね」

渡されたのはライブキャスターだった。

ずっと欲しかったやつだ。

「ありがとう、お母さん」

「ほら、トウコもアララギ博士のところに行ってきたら?友達も待ってるでしょ?」

「うん、そうだね、行ってくるよ」

昨日まとめた荷物。

お母さんが忘れないようにって、ずいぶん前から用意してくれたっけ。

買ったばかりのバックを肩に掛けると、トウコは外へ飛び出した。

隣町へつづく道の手前。

そこにアララギ博士の研究所はある。

研究所の前には、すでにチェレンが待っていた。

「ごめん、待った?」

「いいや、今僕も来た所なんだ」

チェレンも真新しい鞄を肩に提げていた。

「ベルは?」

「まだだよ……」

「まだかぁ」

そう言って顔を見合わせて、沈黙が続いた。

考えていたことは、きっと一緒だっただろう。

先に切り出したのはチェレンだった。

「トウコ、ちょっと見てきてあげてくれないか?」

「そうだね。私、行ってくるね」

トウコはツタージャを抱えて、ベルの家へと走った。

ベルのパパは、最後までベルがトレーナーになることに反対していた。

一人っ子のベルは、大事に大事に育てられたらしい。特に、パパに。

2人で遊ぶときにもなぜか、ベルのパパまでついてきたりすることもあったっけ。

心配なのはわかるけれど、ベルのパパは、ちょっと過保護なんじゃないかなぁなんて思ってた。

まさか、トレーナーになりたいときに、それが一番の弊害になるなんて思いもしなかったけれど。

3人が10歳の誕生日を迎えた時、思い切って3人で、トレーナーになりたいことを伝えたときも、ベルのパパが一番反対していた。

トレーナーになるのが遅くなったのも、ベルのママがパパをなだめるのに時間がかかったってことが、一番の原因だと思う。

3人で一緒に旅をはじめようって約束だったから、チェレンと話して待とうって決めたんだもの。

そして今日を迎えたわけだけれど。

そういえば、つい先週まで、ベルはパパとは口をきいていないとか言っていた。

もしかすると、まだパパともめてるのかも知れない。

ベルの家の前に着き、インターフォンを鳴らしたときだった。

「ダメダメダメーーー!!!」

ベルのパパの怒鳴り声だ。

声を聞いて、トウコは大きくため息をついた。

「ツター?」

ツタージャは、わけがわからないといったかんじで、目をパチパチさせている。

玄関の戸をゆっくりあけると、ベルとベルのパパが言い合ってるのが見えた。

「絶対ダメだからね!」

「パパのわからず屋!」

「旅がどんなに危険かって、ベルはわかってないんだ」

「あたしだって……もうポケモンもらったの。ちゃんとトレーナーになったんなんだもん!大丈夫だよ!!冒険だってちゃんとできるんだから!」

ベルはそう怒鳴って、パパの制止を振り切ると、家から飛び出すように外に出てきた。

慌てて、勢いよく開いたドアをトウコがよけると、その拍子にベルと目があった。

「あ……トウコ」

うう……気まずい。

「……迎えにきちゃった」

「ああ……、ごめん。また待たせちゃったし、嫌なところ見せちゃったね」

ベルの目は涙目だった。

「ベル……」

「あ、大丈夫だよ、大丈夫……」

「……」

「いいの、もういいの。それにね、きっとパパだっていつかはわかってくれるって思うから」

そう言って、ベルは浮かんでいた涙を袖で拭った。

「行こう、トウコ!チェレンが待ってるよ」

いつもどおり、明るく笑ってみせるベル。

「うん」

走り出したベルを、トウコは何も言わずに追いかけた。

こういうとき、どう声をかけていいのかわからない。

もっと、何か言ってあげるべきだったのかな……。

研究所の前では、チェレンが待っていてくれた。

「ごめーん!おまたせチェレン!」

明るく振る舞うベルを見て、チェレンも何も突っ込まなかった。

「さぁ、みんな揃ったし行こうか」

チェレンが研究所のドアを開け、ベルとトウコもあとに続いた。

中にはいると、アララギ博士が待っていた。

小さい頃からよく遊んでくれた優しいお姉さん。

昔はえらい博士だなんて知らなかったけれど。

確か、ポケモンがいつ誕生したのかの起源を中心に調べている博士だ。

いつから博士なのかを考えると、いつまでも若い気がしてちょっと年齢不詳だ。

「ハーイ!待ってたわ。みんな遅かったわね。さては、ポケモン勝負でもしていたの?」

博士の言葉に、ギクリとして3人は顔を見合わせた。

「いいのよ。何事も経験が大事よ!それで、あなた達はどの子を選んだのかしら?みせてちょうだい!」